(ブルームバーグ): 三菱UFJフィナンシャル・グループの市場事業本部長を務める関浩之執行役常務は、日本銀行が続けてきた大規模な金融緩和政策について、条件が整えば来年度上期中にも出口戦略を進める可能性があるとの見方を示した。

関氏はインタビューで、条件は物価の上昇基調が継続し、春闘をはじめ賃金上昇のモメンタムが顕在化するなど「日銀が安定的な物価目標の達成を展望できる手応えを感じること」と指摘。その上で、新執行部の下、欧米の景気動向も注視しながら「早ければ2023年度の上期中にも出口戦略を進めることもあり得る」と語った。

昨年12月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年同月比4.0%上昇と、日銀が物価安定目標に掲げる2%を9カ月連続で上回り、41年ぶりに4%台に達した。24日に公表された基調物価指標の上昇率も過去最高を更新するなど、物価指標は上昇傾向を強めつつある。

具体的な出口戦略として関氏は、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の許容変動幅上限0.50%の0.75%への拡大や、場合によっては短期(政策)金利のマイナス金利解除・正常化もあり得ると予測。当面は「0からプラス0.1%を目指し、中長期的にもプラス0.2%程度を上限に推移する」と見込んでいる。

新たな懸念材料-共担オペ

一方、日銀が金融調節の一手段として1月の政策決定会合で拡充を決めた共通担保資金供給オペ(公開市場操作)については、「一段の副作用の顕在化に対するモニターをしっかりと行っていただきたい」と述べた。国債市場にとどまらず、金利スワップ市場などにも日銀政策の影響が広がることを懸念している。

共通担保オペは、国債などを担保に日銀が金融機関に資金を供給する仕組みで、拡充により貸付金利を実勢に近づけることで、スワップ取引などを通じた金利の低下効果が見込まれている。関氏は「実質的にはスワップ版の指し値オペとも言える」として円金利市場全体への波及に警戒感を示した。

円金利上昇リスクに関心

日銀の出口戦略が注目される中、円金利の上昇リスクに対する顧客の関心も高まっているという。関氏は低インフレ、低金利、低ボラティリティー、過剰流動性の逆回転が22年度に始まり、23年度も荒い展開が続くと予測。その中で、為替や海外金利ビジネスの活発化に加え、「いよいよ円金利ビジネスが注目される」と見込む。

デリバティブ(金融派生商品)を活用した運用商品に興味を持つ顧客が多く、「長年続いたマイナス金利環境からのパラダイムシフトが起こる可能性に備える動き」に対応する必要があるという。顧客ニーズに即した市場性商品やサービスを提供するため、市場事業本部のベテラン10人程度を支援要員として増員する。

ポートフォリオに耐性

MUFGでは日銀のYCC見直しや今後の政策変更が収益に与える影響を想定。円金利上昇(債券価格などの下落)に伴う評価損益の悪化に備え、昨年12月までに保有する円建て債券の一部を「その他有価証券」から、時価評価の対象とならない「満期保有目的債券」に振り替えたという。

また、国内債券のベア型ファンド購入のほか、スワップ取引によるリスクヘッジなども進めたとしている。関氏は「すでに円金利の上昇に対する耐性を高めたポートフォリオ運営を実施している」と説明した。

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