[6日 ロイター] - 米食品医薬品局(FDA)は今月、妊娠中絶に使用される経口薬「ミフェプリストン」の薬局での販売を許可すると発表した。全米中の薬局が販売するかどうか、選択を迫られている。

米最高裁が中絶を合法化した「ロー対ウェイド判決」を覆して以降、半数近い州が人工妊娠中絶を禁止したり、制限を設けていることを踏まえると、こうした薬局の決定を左右するのは主に所在地といえる。ただ、ロイターが取材した薬剤師たちは、中絶に対する地域の文化や姿勢、自身の信条が選択の指針になっていると明かした。

今回のFDAの規則緩和を受け、米国での中絶処置の半数以上を占める経口中絶薬へのアクセスは、中絶が合法とされている州では容易になるだろう。一方で、中絶を禁止している州の薬局にもたらす影響はまだ分かっていない。

フロリダ州マリアナで「ケア・ライト・ファーマシー」を5年間経営してきたビル・パテルさんは、自身が中絶反対派であるという理由から、ミフェプリストンの販売に必要な認定を申請する予定はないと話す。同薬局は、中絶が厳しく制限されているジョージア・アラバマ両州とフロリダ州の州境近くに位置している。

パテルさんは当局から依頼があった場合にのみ、販売を行うだろうと述べた。

「正直なところ、私は反対している。中絶反対派だ」

フロリダ州は現在、15週以降の中絶を禁止しているほか、複数の制約をもうけている。

米ドラッグストア大手ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスやCVSヘルスは、認可されている州でのみミフェプリストンを提供する予定だと発表。食品スーパーのウィン・ディキシー・ストアーズを傘下に持つサウスイースタン・グローサーズをはじめとする全米規模や地方のチェーン店は、提供の是非や販売する店舗を協議中だとしている。

米国内でミフェプリストンの製造を行っている2社のうちの1社、ジェンバイオプロの広報担当者は、すでに認定に向けた申請受付を開始しているとしつつ、詳細は明かしていない。

サウスカロライナ州ラマーに「ラマー・ファミリー・ファーマシー」を構えるミシェル・バルガスさんは、販売を行う予定はないと話す。

「私たちはとても小さな田舎で営業している。中絶処置を行うクリニックが近くにあるわけでも、そうしたことが多く起こる大都市にいるわけでもない」

バルガスさんはこう続けた。

「(中絶は)ここであまり起きることではない」

FDAに認可されている薬が、国内の一部の州法では違法とされる可能性についても、法的な議論が巻き起こっている。

FDAで30年間勤務し、現在は米国薬剤師会の臨時CEOを務めるイリナ・バーンスタイン氏によれば、こうした問題が未解決であることから、中絶を制限している州内の薬局は法的リスクに直面する可能性が高く、州法に違反してミフェプリストンを販売するという選択した場合、免許を取り上げられる結果になりかねないという。

バーンスタイン氏は、薬剤師や薬局の安全などといった他の懸念事項も指摘する。

中絶が合法のニューヨーク州プラッツバーグで「コンド・ファーマシー」を経営する薬剤師スティーブ・ムーアさんは、販売を検討している。

「薬剤師である限り、安全かつ効果的な投薬で人々を助けることが役割だと感じている。薬へのアクセスを制限する立場ではない」とムーアさんは話す。

「アフターピルや避妊用ピルの調剤について、複数の患者から苦言を呈されたことはある。確かに言う権利はあるだろう。ただ、それを懸念しているならば、ここはそうした人への薬局ではない。これらの薬の提供をやめることはないのだから」

(Ahmed Aboulenein記者、Gabriella Borter記者、Michael Erman記者)

(Reporting by Yuka Osawa)