(ブルームバーグ): 富士通の時田隆仁社長は非中核事業と位置付け、持ち株の売却を検討している空調機メーカーの富士通ゼネラルについて、富士通が保有する全株式を早期に売却したい考えを強調した。

時田社長は昨年12月26日のインタビューで、売却の「クライテリア(基準)はいくつか設けているが、100%がもちろん目指すところ。中途半端なことはしない」と言明。具体的な交渉状況に関する言及は控えたが、「興味を持ってくれる方がいることはハッピー」と述べた。

富士通ゼネ株は11日の取引で、一時前日比8.1%高の3325円を付け、2022年10月28日以来の日中上昇率となった。富士通株も2.3%高の1万8055円と続伸した。

富士通ゼネと同様、非中核事業と位置付ける半導体パッケージメーカーの新光電気工業の持ち株売却については「経済安全保障のディスカッションが活発になった」ことも影響し、国を含めたステークホルダーとの「コミュニケーションの密度が上がった」と説明。経済合理性だけではなく、経済安保の観点からもより深い議論が必要になったとの認識を示した。

富士通は10月に発表した7-9月期(第2四半期)決算資料で、富士通ゼネと新光電工、電池メーカーのFDKなど非中核の関連企業について、保有株売却の検討を行っていると説明。ブルームバーグのデータによると、9月末時点の富士通ゼネ株の保有比率は42.2%、新光電工株は50%、FDK株は58.8%となっている。

富士通は経営資源をデジタルトランスフォーメーション(DX)関連など中核事業に集中させる一方、相乗効果の薄い事業を切り出す事業ポートフォリオ改革を推進中。今期(2023年3月期)の営業利益は前期比83%増の4000億円となる見通しだ。

「一斉に」はそぐわない

日本でも歴史的な物価高が進む中、基本給を一律で底上げするベースアップや一時金の支給を検討する企業が増えている。時田社長は、富士通では職務を明確にするジョブ型雇用を導入しており、「ネガティブなインパクト解消のためにみんな一斉に上げるというのは当社としてはそぐわない」とみる。

その代わり、毎月の給与に比べ賞与の比重が高い日本企業型のバランスを見直すことは「検討すべき」だとも述べた。

また、米国との対立激化や新型コロナウイルスの感染拡大など中国リスクを注視する必要性が増している中、時田社長は台湾有事への備えが重要だと指摘。半導体を含め、台湾への依存度が高いことから、社内でサプライチェーン(供給網)や拠点の在り方などについてシナリオ作りを始めたという。

(株価を追加して記事を更新します)

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