日本の1人当たりGDPを大きく下げた「真犯人」
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「日銀法改正という脅しをちらつかされて、認めざるを得なかった」とありますが、当時、いわゆるリフレ派に影響された政府、メディア、国民の多くは①日本が成長しないのはデフレのせい②インフレ・デフレは貨幣的現象だからベースマネーを増やせばインフレが起きる③それをしない日銀は怪しからん、という論法で日銀を攻め立てました。2%というインフレ目標はいわゆる期待に働きかける政策で、期待というあやふやなものに立脚するだけに、極めて危うい政策でもあるのです。どんな言葉か正確には忘れましたが、白川前総裁が任期を待たず辞任されるとき、期待に依存する政策は危ういという趣旨の言葉を残されたと記憶しています。
2年と期限を切って始めた極端なリフレ策が所期の効果を発揮せず、株式・不動産の購入、はては市場で決まるべき長期金利を中央銀行が管理するYCCと世界の中銀が忌避する禁じ手まで繰り出してなお目標達成できず、遂には政府が財政赤字を垂れ流す道具になりました。現に、元々財政基盤が強固なドイツを除く主要各国がコロナショック直後の2020年から2021年にかけて政府の借金を抑える方向に動く中、我が国は低利を利してGDP対比の借金を膨らませています。
日本の停滞の真因は労働力と設備と技術からなる潜在成長力の低下にあって、設備と技術が日本で伸びない原因は、DXの時代に馴染まない解雇規制と雇用保障の仕組み、箸の上げ下ろしまで事前に管理して変化を許さない規制とその背景にある既得権益と官僚主義、複雑な税制、農業を守って他を犠牲にし続けた貿易協定の在り方等々、日本の企業立地競争力の低下にあるのです。こうした問題の解決は日銀には出来ません。それを無視して、日銀が2%のインフレ目標を達成すれば全てが解決するかのような錯覚を世間に広めれば、肝心要の問題に世間も政治家も無関心になってしまいます。期待に依存する政策、中央銀行が万能であるかの如き錯覚が招く危うさです。
政府の低利の借金が膨大に膨らみ、日銀自身が巨額の低利国債を抱えるに至ったいま、量的緩和を止めて金利を上げることはほとんど不可能な状態です。とはいえ、実体経済が弱い時にマネタリーベースを増やしても無駄な準備預金が積み上がるだけ。日銀は万能でなく、実体経済を強くすることこそが肝要という黒田総裁以前の日銀の一部にあった主張を、改めて思い起こす必要がありそうに思います。端的に真犯人は、銀行の自己査定(不良債権についての厳しい評価)をハードランディングさせたことです。それがなければ、山一も長銀も飛んでない。正しさの普及は、慎重かつソフトな政策的配慮が不可欠。