FOCUS:前代未聞のカルテルで電力3社に株主代表訴訟リスク 谷道健太 | 週刊エコノミスト Online
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Japan's "Enron moment"?「組織的な関与の度合いなどはまだ明らかでないが、株主からコンプライアンス(法令順守)体制を巡って経営陣の責任が問われうる。金融庁などに『コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)』の策定を働きかけた米国弁護士のニコラス・ベネシュ氏(公益社団法人「会社役員育成機構」代表理事)は『株主や世間はカルテル防止体制を整備するため、内部調査を求めるだろう。その過程で証拠となる事実関係が明らかになる可能性がある』と指摘する。」
一般論として、役員が違反行為に関与して会社に損害を与えた、カルテル防止体制の整備義務を怠った、又は社内調査を行うべき義務などを懈怠したという証拠を株主が入手することが難しく、それが課題となる。と言っても、今回は取締役会の議事録又は今後の調査などにそのような証拠の糸口はあるかもしれない。不作為でも善管注意義務違反になり得る。各社の役員会は当然、大口契約の順位や金額について報告を受け、討議しただろう。それなら、中国電力の役員は『なぜ自由化後でも当社には関西や九州の過去の大口企業顧客がないに等しくて増えないのか」と気づいたはずだ。電力各社が今後、第三者委員会を設置して真相究明に乗り出せばそのような事実を把握できる可能性がある。今後のカルテル防止体制の整備をするために何らかの調査が必要だろうし、株主や世間はそれを求めるだろう。そこで証拠となる事実関係がより明らかになる可能性がある。役員が裁判で負ければ、今まで日本ではなかった規模の巨額の支払いを迫られ、自己破産することになるだろう。
米国ではエネルギー大手のエンロンが01年に経営破たんした後、経営トップらが起訴され、執行猶予なしで10年間以上収監された。その反省からSOX法の成立によって企業統治や内部統制が大きく前進。役員は個人責任を問われるリスクを自覚して研修を受けるべきだという意識が一気に高まった。今回の事件は日本でそんな変化を及ぼす転機になるのではないか。もしかして日本の『エンロン・モメント』かもしれない。
そうなれば、事件はとても残念だが、私が率いる公益社団法人会社役員育成機(BDTI)の役員研修コースに対する需要が増えるきっかけになるだろう。