[シドニー 7日 ロイター] - 中国企業がオーストラリアの農業などの企業買収に向け、対象企業の物色に再び関心を示している。オーストラリア側では、両国の外交関係悪化が雪解けに向かうことで来年は案件が増えていくとの期待が高い。一部銀行などはここ数週間、オーストラリア企業を物色したい中国企業から仕事の委託を受けているほか、買収を考え資金を用意している中国企業から問い合わせが来るようになっているという。

もっともこうした兆候はまだ芽生えたばかりだ。そもそもオーストラリアの現在の投資規制は通信や防衛、一部鉱物など国家安全保障上、重要と見なされるセクターでは中国による買収を門前払いする可能性が高い。

半年前に発足したアルバニージー政権は中国との関係修復に積極的に動いている。さらに中国のリチウム製品大手、天斉リ業は6日、オーストラリアへの投資機会を模索していると表明した。それまでの数年は貿易摩擦が深刻化。中国が南太平洋で影響力拡大に動いていることや、新型コロナウイルスの起源究明の動きも外交関係を悪化させていた。

法律事務所ベーカー・マッケンジーのパートナー、ローレンス・メンデス氏によると、同氏の事務所はオーストラリア外国投資審査委員会が買収を承認しそうな条件や日程についての中国企業からの問い合わせを既にさばいている。ただ、実際に中国企業からの投資意欲が再び高まるかどうかは同委員会の姿勢次第の面があるという。

ブルース・ミラー同委員長は先月の会合では、中国の投資許可申請は過去3、4年で枯渇していたものの、持ち直しに向かうだろうと表明している。

モーニングスターのオーストラリア・ニュージーランド株式調査ディレクター、マシュー・ホッジ氏は、国家安全保障や戦略には関わらない農業分野などの資本集約的な大規模プロジェクトを中国勢が注目すると予想する。2020年に約50年ぶりに実施した外国投資法改正では、安全保障に関わる分野の買収提案は規模の大小にかかわらず厳しい審査が義務付けられたからだ。

中国によるオーストラリア企業へのM&A(合併・買収)は13年に103億米ドルに達していたた。酪農関係から商業不動産、映画館チェーンなどさまざまなオーストラリア企業が買収の対象に上がっていた。

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