[上海 30日 ロイター] - 中国人民元相場はマクロ経済リスクの高まりを受けて振れ幅が歴史的な水準となっており、市場関係者は元/ドル取引の価格変動幅が拡大される可能性があるとの見方を強めている。

元の1日当たりの変動幅は、中国人民銀行(中央銀行)が設定する対ドル基準値の上下2%に制限されている。

スタンダード・チャータード銀行の中国マクロ戦略部門の責任者ベッキー・リュー氏は「ボラティリティー増大に対する許容度が高まっていることを踏まえると、元の対ドル取引の制限幅を2023年に2%から3%に拡大する可能性があるとみている」と述べた。

人民銀が元の変動幅を拡大すれば、1%から2%に変更した2014年以来となる。

政策当局筋はこれまでにロイターに対し、長期的な市場改革への取り組みを示すため、過去数年にわたり変動幅の拡大を検討してきたと明らかにしている。

コメルツ銀行の中国担当シニアエコノミスト、トミー・ウー氏は「人民銀が変動幅拡大を望むなら23年の後半になる公算が大きい。経済が目に見えて回復し、米国との金利差も大幅に縮小し始めて元に追い風となるからだ」と語った。

ただ元の変動幅を拡大する必要があると考えるアナリストも、大半が直ちに実施されるとはみていない。

RBCキャピタル・マーケッツのアジア通貨部門責任者アルビン・タン氏は「米ドルの上昇トレンドがピークに達したことが明らかになるまで変動幅を拡大しないとみられる」と予想。「そうした動きを市場は元の一段の切り下げのシグナルと解釈しかねないからだ」と指摘した。

「米連邦準備理事会(FRB)の利上げ局面が確実に終了したことを人民銀は確認する必要があるだろう」と述べた。