2022/12/2

【必修】スキルなし、センスなしでも「デザイン」ができる衝撃サービス

NewsPicks Brand Design Editor

SNS時代のデザイン難民を救済する「Adobe Express」

今年、アドビが開催したクリエイティブの祭典「Adobe MAX 2022」で唯一Twitterのトレンド入りを果たしたプロダクトがある。
「Adobe Express」という名で発表されたそのプロダクトは、プロ向けツールの印象が強いIllustrator・Photoshop・Premiere Proなどのツールに対して、「知識やスキルがない人でも気軽にデザインできる」というのがウリだ。
多くの人が「デザインをできない」のには、大きく4つの理由がある。それは「ツールがない」「センスがない」「技術がない」「時間がない」だ。
それらを一挙に解消してしまうのが、このサービスの衝撃なのである。
アドビ マーケティングマネージャー 轟啓介氏は同プロダクトがリリースされた背景を次のように話す。
「今、世の中ではInstagramやTwitterなどのSNSが浸透しています。
 最近では個人商店のようなスモールビジネスを展開する事業者からも、SNSの投稿を少しリッチにしたいという声を聞きます。
 しかし、そういった事業者がデザイナーを雇用したり、外注することは簡単ではありません。
 また大企業にも、予算をつけて外注、社内のデザイナーをアサインすることのできない、細かなクリエイティブのニーズが多く埋もれています。
 営業部の方が資料を少しだけきれいにデザインしたい。マーケティング部の方が小さなプロモーションを試すためにちょっとしたデザインが欲しい、など。
 そういったニーズにも応えられるように、アドビのプロダクトの裾野を広げていきたい。そのためのツールとしてAdobe Expressを位置づけています」(轟)
 アドビのミッション「Creativity for All」の中核として2021年にリリースされたAdobe Express。SNS投稿、チラシ、ロゴ、バナー、動画、資料など、幅広いクリエイティブをクリックとドラッグ&ドロップの簡単な操作で実現するという。
 これが誇大広告でなければ、スキルなし・予算なしの多くのデザイン難民が救済されることになる。
 本記事では、実際に担当編集がNewsPicksのイベントの告知ビジュアルを想定してAdobe Expressを試した。
 多くの人が「デザインをできない」4つの理由、「ツールがない」「センスがない」「技術がない」「時間がない」
 まずは「ツールがない」だ。
 ひと昔前は高額だったIllustratorやPhotoshopなどのクリエイティブツールも、近年はサブスクリプション型になり、比較的導入のハードルが下がっている。
 それでも、非デザイナーのPCにはデザインするためのツールが入っていないことがほとんどだ。
 しかしAdobe Expressは、PCならばWebブラウザからワンクリック、モバイルならばアプリをダウンロードするだけで、無料で誰でも使用することができる。
 その先にあるのは徹底的に使いやすさを追求したクリエイティブツールと自由に使用することのできる豊富な素材だ。
「Adobe ExpressではIllustrator・ Photoshop・Premier Pro・Acrobatなどのアドビが長年培ってきた資産を単機能で切り出して使うことができます。
 他方ではデザイン入門者が直感的に操作できるようにレイヤー構造を視覚的にわかりやすくしたりなど、IllustratorやPhotoshopなどとは一線を画す機能もあります。
 またAdobe Fontsの約2万種類のフォント、Adobe Stockの約1億6000万点以上のロイヤリティフリー画像を利用できるのも特長(一部有料プランのみ使用可能な素材あり)です。
 アクセントになるような写真やイラストを入れるのに、商用利用できるものを探すのは意外と手間です。Adobe Expressであれば、デザインするのと同じ画面でこれらの素材にアクセスすることができます」(轟)
 デザインのプロセスを「アウトプットをイメージする」「イメージを形にする」の2つに分けると、まずはどんなデザインにするかを決めなくてはならない。
 しかし、これがデザイナーではないビジネスパーソンには難しい。
 この最初のハードルを解決するため、Adobe Expressでは「テンプレートをベースにカスタマイズする」ことをコンセプトにしている。
「実はAdobe Expressには描画ツールがないんです。
 デザインの知識がない方々がメインターゲットなので、真っ白なキャンバスを用意して『さあ、どうぞ』と言ってもなかなかできるものではありません。
 そのためAdobe Expressでは既存のテンプレートを加工することを想定した設計になっています。
 Instagramのストーリー、Facebook投稿、ポスター、飲食店のメニューなど、アドビのデザイナーが作成した豊富なテンプレートをカテゴリ別に用意しています」(轟)
 ベースにするテンプレートが決まったら、次はそのテンプレートを目的に応じてAdobe Express上のツールでカスタマイズすることになる。
 あけすけに言ってしまえば有料・無料にかかわらずデザインのテンプレートを提供するサイトはAdobe Expressに限らず存在する。つまり、ここからが非デザイナーにとっての最大の難関であり、Adobe Expressの価値が問われるところだ。
「やりたいことはあるけれど、デザインツールをうまく使えない」
「イメージ通り作ったはずなのに、なぜか不格好になってしまう」
 そんな非デザイナーにありがちな悩みに対するアドビの解は、テンプレートだけでなく、フォント、カラー、レイアウトに至るまで、とことん「選べる」ようにすること。
 そのエンジンになるのがAdobe Sensei、つまりAIだ。
「Illustratorでもフォントを選択することはできますが、結局選択してみないとわからない。それにどのフォントが良いかを判断するのはなかなかに難しいことです。
 Adobe Expressではテンプレートの雰囲気に合わせてAdobe Senseiがおすすめのフォントを提案してくれて、デザインにあてはめた状態で表示してくれます。
 また色の組み合わせもおすすめのカラーパレットをAdobe Senseiが提案してくれるから、ブランドやテーマのイメージに合ったものを選択するだけ。
 お抱えのデザイナーが横に座っていて『ビビッドな感じで』と伝えると『こんな感じでどうですか?』と瞬時に見せてくれるようなイメージですね」(轟)
 納得のいくデザインができあがったら、データはダウンロードできるほか、そのままSNSへ投稿することもできる。
 SNSアカウントを運用している企業で、何か1つのSNSしか利用しないというのは、むしろ少数派だろう。
 例えば何かイベントやキャンペーンを告知するためにクリエイティブを作成したとして、Instagram、Twitter、Facebookなど複数のSNS向けにデータをリサイズして、それぞれの運用計画に合わせて投稿をするという作業が発生する。
 Adobe Expressであれば、これらの作業もAdobe Senseiの力を借りながらシームレスに行うことができる。
「下北沢でお店を経営している方々にワークショップをしたことがあったのですが、スケジュール機能はかなり好評でした。みなさん『うれしい、そんな機能があるのか』とおっしゃっていましたね。
 お店で働いてらっしゃる方は毎日決まった時間にデザインを作って投稿するということはなかなか難しい。できるときにまとめて作ってしまいたいけど、連続で投稿するとエンゲージメントが下がってしまいます。
 予約投稿機能への反響は非常に大きかったです」(轟)

クリエイティブが民主化される時代がやってくる

 コンテンツの流通量は年々増加していき、コミュニケーションの主役はより短い時間で端的にメッセージを伝えるビジュアルコミュニケーションへと移り変わっている。
 そして、今、世の中のクリエイティブへの需要はプロデザイナーによる供給量を超えつつある。これからのクリエイティブはプロが作成するものと、日常的にすべての人が作成するものに、すみ分けされていくのかもしれない。
「デザインをする機会は、実はほぼすべての人にあると思うんです。でも、多くの人はチャレンジせずにあきらめてしまっている。
 実際、Adobe Expressに触ってみるとわかるのは、テンプレートの文字を打ち替えるだけでも、デザインって自分ごとになるんですよね。さらには自分の好きな写真を置いてみたりして、それが妙にかっこ良くできたりすると、自信につながる。
 そうやってどんどん次につながっていくわけです。
 クリエイティブのピラミッドがあった場合、IllustratorやPhotoshopは頂点側の尖った部分をカバーしています。Adobe Expressはそこと交わるところはありつつも、ピラミッドの土台の部分を担う存在。
まさに『Creativity for All』を体現して、クリエイティブの民主化を担うツールなのです」(轟)