2022/11/29
【公開ブレスト】もしも、東京で「超都市型フェス」を開くなら?
CHANGE to HOPE | 三菱地所
ビジネス、テクノロジー、カルチャー、アカデミック――さまざまな分野の「知」が交差する巨大都市・東京。
では、この街で、近い未来に「超都市型フェス」を開くとしたら?
本記事では、NewsPicksが丸の内エリアで開催した大型ビジネスフェス「CHANGE to HOPE 2022」より、各分野のプロによる「公開ブレスト」セッションをレポート。
次々と飛び出したユニークなアイデアを、ダイジェスト版でお届けする。
INDEX
- 都市フェスの究極は「テーマパーク」?
- 「UFOに吸われたい」令和ギャル🌈💫
- 「分散した興味」を集約する機能=フェス
- 丸の内に「光のトンネル」を作る?
都市フェスの究極は「テーマパーク」?
―― 本日のテーマは、「もしも、東京で『超都市型フェス』を開くなら」です。早速ですが、お一人ずつ、アイデアをお聞かせください。
堀義人(以下、堀) 今日は音楽フェス「LuckyFes」の総合プロデューサーとしてやって来ました、堀です。
普段はグロービスで大学院やVC(ベンチャー・キャピタル)を経営したり、日本を良くするプラットフォーム「G1」の主催をしたりしています。
アイデアを話す前に、そもそもなぜ僕が音楽フェスを?と疑問に思われる方もいらっしゃると思いますので、まずはそこからお話しさせてください。
僕は茨城県の水戸市出身なのですが、高校を卒業して以来、30年以上地元にはほぼ帰っていませんでした。
で、2015年に久しぶりに水戸に帰ったとき、街の変わりように愕然として。歩けど歩けど、空き地とシャッター街、僕が知っている街の活気は消えていました。
そこで「何とかしなくては!」と一念発起。
経営破綻したBリーグチーム「茨城ロボッツ」を再生する、地元ラジオ局のオーナーになるなど、茨城の活性化に注力してきました。
茨城の誇りの一つといえば、夏フェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL(ロックインジャパンフェスティバル)」。
ですが、これが2年間コロナの影響で開催できなかった。そして、今年こそ開催できると思ったら、なんと千葉に移転するとのこと。
今年も、茨城はフェスのない夏を過ごすのか――いや、それは絶対に避けたい。
そこで、移転発表の2時間後に、すぐさま音楽と食とアートの祭典「LuckyFes」の開催を宣言し、半年という急ピッチでの準備を経て、7月に無事実施に至りました。
と、前置きが長くなりましたが、僕も半年前までは音楽業界もフェスもまったくの素人。
そこからフェスを立ち上げた経験を経て、もし僕が東京で「都市型フェス」をやるとしたら、いっそのこと「テーマパーク」にすると思います。
―― テーマパーク、ですか?
そうです。僕が考えるフェスビジネスのポイントは大きく3つあります。
まずは、①高投資型。規模が規模だけに相応のコストはかかりますが、来場者数は2万だろうが、5万人だろうが、実はそこまで変わらない。
だから、まずは初期投資をして、クオリティを高めきる。そこで話題を作り、集客につなげられるかが、次年度以降の成否をわけます。
次に、②コンテンツ。どんなコンセプトで、どんなアーティストを呼ぶかですね。中身自体に求心力がなければ、当然お客さんは来てくれません。
最後に、③ブランド化。一回きりではなく、お客さんにまた来たいと思ってもらえる、そしてアーティストにも、来年も出たいと思ってもらえるようにする。
それくらいの体験価値を作れないと、継続的な運営は難しいです。
では、どうすればこの3要素を満たせるか。至った結論が、テーマパークです。
しっかり初期投資してコンテンツを用意し、ブランド化を図る。単発ではなくしっかり長い期間かけて実践していくことが重要です。
そこで肝になるのが「期間」。アメリカ最大規模の音楽フェス「コーチェラ」も、イギリスの「グラストンベリー」も、5日間とか10日間とか、ある程度長期間実施しています。
だから、僕はもっと長期間・大規模にやるという意味で、テーマパーク型のフェスを提案したい。せっかくやるなら、世界一を目指したいですからね。
「UFOに吸われたい」令和ギャル🌈💫
――ビジネスのプロならではのアイデアをありがとうございます。続いて、バブリーさんはいかがでしょう?
バブリー💋 はじめまして!令和ギャルのバブリー💋です。
主に日系の大企業さん向けに、「ギャルマインド」を取り入れた発想法を提案したり、実際に会議にギャルとして参加させていただいたりする「ギャル式ブレスト」の事業を展開しています。
私たちが大事にしているギャルマインドは、①自分軸、 ②直感性、③ポジティブ思考の3つ。
端的に言うと、「忖度せず、自分らしくちゃんと意見言ってこ!」って感じです。
今回まず考えたのは、「そもそもフェスの価値って何だっけ」ということ。
で、私は「もう一人の自分になること」なんじゃないかな、と思いました。
そういう意味では、今この場所も、実は私にとっては「フェス」で。
こう見えても私は普段は会社員で、スーツを着ることも多いんですが、今日はバブリー💋として話をしに来ている。
だから、朝からメイクどうしようとか、服は何着ようかなと、とってもワクワクしていました。
なので、そういう非日常というか、都会にいながらでも「もう一人の自分」になれる空間をフェスで演出するのがいいんじゃないかなって。
―― 非日常な空間。具体的にはどんなイメージでしょうか?
うーん……。いろんな可能性がありますけど、たとえば丸の内だったら、もっともっとカラフルなビルがあっても楽しいかも!とか。
もちろん、ビルを建て替えるんじゃなくて、一時的にでも装飾してみる。そうしたら、非日常でテンションが上がる気がしませんか?
あ、でも普段は渋谷にいることが多くて丸の内は詳しくないので、見当違いだったら、ごめんなさい!
ちなみに、他のギャルメンバーにも今日のお題について聞いてみたんだけど、「ビルからバンジージャンプしたい」とか「UFOに吸われたい」とか、マジで非日常でした(笑)。
今まではギャルの聖地といわれた街も、どんどん綺麗になっていて、ちょっと居づらくなってきている。最近は、渋谷に行かない子も増えているって聞く。
だからこそ、ギャルたちも、「もう一人の自分」になって、欲望を解放できる場所を求めているのかも?と、思います。
「分散した興味」を集約する機能=フェス
―― なかなか斬新なアイデアが飛び出しました。では、続いて横澤さん。
横澤大輔(以下、横澤)ドワンゴの横澤です。初期からニコニコ動画の責任者をやっていて、今年で16年目になります。
2012年からは、リアルでもユーザーの居場所を作れないかと「ニコニコ超会議」というイベントを企画し、おかげさまでコロナ前の2019年には会場来場で16万人、ネット来場で700万人にお越しいただくまでに成長しました。
普段イベントを考える上で意識しているのは、「分散化した『好き』を一つの場所に集める」こと。
ニコニコ超会議はリアル来場が2日間で16万人と、「マスイベント」と捉えられる場合もありますが、実はそうではなくて。
どちらかというと、「ニッチかも知れないけど熱量の高いコンテンツをたくさん集めている」感じなんですね。
昨今は、ユーザーの興味がどんどん分散化してきていると言われますから、今後はこうしたイベントの作り方がさらに増えていくのではないかな、と。
―― 分散化した興味を一つにまとめる。もし、東京で何か催しをするとしたら、どんなイメージでしょうか?
そうですね。まず、サブカルチャーの街といえば豊島区が代表例だと僕は思っています。
中華料理をはじめ、多様なジャンルの飲食店があったり、西口に東京芸術劇場、東口にはアニメショップが立ち並んだりと、さまざまなカルチャーが独立して存在している。
ならば、これを一つにまとめて、豊島区の「カルチャー文化祭」を開けないか。そう考えて企画したのが、「池袋ハロウィンコスプレフェス」、通称「池ハロ」です。
池ハロは、ユーザーの多様な「好き」や興味を表現できる場として運営していますが、もう一つ、「都市型フェス」として意識しているポイントがあります。
それは、行政機関や民間企業と組んで、街ぐるみでフェスをつくること。
たとえば、歩行者天国を用意したり、普段はコスプレしては入れないレストランやお店に入れるようご協力いただいたりと、街とフェスを融合するような仕掛けを意識しています。
公共の場所を使わせていただくぶん、ステークホルダーとの丁寧なコミュニケーションがマストですが、今後もこうした街ぐるみの催しを横展開していきたいです。
丸の内に「光のトンネル」を作る?
―― 具体的な事例もご共有いただき、ありがとうございます。では最後に、長嶋さん。
長嶋彩加(以下、長嶋) 「Medicha(メディーチャ)」という「メディテーション」を軸にしたプロジェクトを展開しています、長嶋です。
耳なじみのない方も多いかも知れませんが、メディテーションはいわゆる瞑想、頭を休めるメソッドです。
Medichaでは、アートやライティングを用いて没入できる空間を作り、お茶やお花といった日本の伝統文化を交えた体験をご提供しています。
今回、フェスの価値としてまず頭に浮かんだのが、皆さんがおっしゃったように、「『らしさ』を脱いで、自分自身を自由に素直に表現する」こと。
そして、それってかなり東京や、日本と相性がいいんじゃないかな、と考えています。
Medichaには、海外のお客様も多くいらっしゃるのですが、その方々が時たま口にするのが「東京でRediscover Myselfできた」と。
というのも、東京滞在中に伝統文化からサブカルチャーまで、さまざまな文化に触れられるので、自分自身を再発見できるんだそうです。
これまでの経験を踏まえて、もし私が東京でフェスを開くとしたら、3つ意識したいことがあります。
1つは、「日本らしい」場所の活用。
新たに会場を作るというよりは、日本にもともとある重要文化財や、日本庭園・日本家屋のような、伝統文化が残る場所で何か催しができると、今まで見えていなかった魅力の再発見になり、日本らしいフェス表現にもつながるかな、と。
次に、エリアごとの魅力を引き出す。
ディズニーランドにテーマごとのエリアがあるように、渋谷だったらEDMのような「気分があがる」体験、浅草だったら陰影礼賛の美のなかで「アンビエントミュージックを味わう」体験と、街の特徴を立たせた企画が同時多発的に起こるイメージです。
渋谷帰り、浅草帰り、コスプレ帰りとさまざまな場所から来た方が、横断して話せるような場が丸の内にあっても面白いかもしれません。
丸の内って、一見お堅く見えますが、大企業からスタートアップ、それからアーティストの方々まで、本当に多様な方がいる、懐が深い街なんです。
最後は、公共空間を含めた空間づくり。
横澤さんがおっしゃったように、都市フェスだからこそ、街ぐるみで催しをできたら素敵だなと思っていて。道や公園など、公共の場も活用していきたいですね。
フェスの会場から、すぐに現実世界に戻ってしまったら気持ちが冷めてしまう気がするので、そこも工夫したいです。
たとえば丸の内仲通りだったら、ライトやミストを使って「光のトンネル」を作ってみたい。
そこを歩いていると次の会場に向かう準備とか、家に帰る心の準備ができるみたいな、そういう体験設計ができるといいなと思います。実現性はさておき、ですが(笑)。
いろんな仕掛けを用いて、国籍も性別も全部関係なく誰もが楽しめる、それでいて日本らしさを世界に発信しうるフェスにしたいな、と思います。
四者四様、さまざまな意見が飛び出した公開ブレスト。
その後も、「もしも、東京で『超都市型フェス』を開くなら?」をテーマに、さまざまな意見が出ました。
続きは、アーカイブ動画でお楽しみください。
本記事は2022年10月24日に開催されたイベント「CHANGE to HOPE 2022」でのセッションをもとに構成しました。
撮影:森カズシゲ、小島マサヒロ
デザイン:田中貴美恵
編集:高橋智香
デザイン:田中貴美恵
編集:高橋智香
CHANGE to HOPE | 三菱地所