(ブルームバーグ): 経営破綻した暗号資産(仮想通貨)交換業者FTXが、米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手やプロテニスの大坂なおみ選手らセレブを「広告塔」に起用し、「経験の浅い投資家」を標的にして欺いたとして、同社と共同創業者のサム・バンクマンフリード前最高経営責任者(CEO)らに損害賠償を求め、米オクラホマ州在住の投資家1人が提訴した。

マイアミのフロリダ州南部地区の米連邦地裁に15日提出された訴状には、大谷選手らのほか、米ナショナル・フットボールリーグ(NFL)でスーパーボウル7回制覇に貢献したトム・ブレイディ選手や米プロバスケットボールNBAのステフィン・カリー選手、NBAのレジェンド、シャキール・オニール氏、スーパーモデルのジゼル・ブンチェン氏など、多くの著名人が被告として名を連ねている。

大谷選手とFTXとの長期パートナーシップ契約と「グローバルアンバサダー」就任は、昨年11月に発表された。大谷選手は全ての報酬をエクイティーと暗号資産で受け取る予定で、FTXと暗号資産業界への強い信認を示すと同社は発表資料で説明していた。

今年3月にはグローバルアンバサダーになる大坂選手が、FTXトレーディングのエクイティーを得て、暗号資産で報酬を受け取ると公表された。

FTXが11日に米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した後、バンクマンフリード前CEOとグループ会社を相手取り訴訟が提起されるのは初めて。賠償請求額は明らかでない。裁判所に提出された資料によれば、グループ会社を含めた債権者の数は100万を超える可能性があり、会社更生手続きの下で資金回収を目指す投資家の動きが制限される恐れもある。

原告のエドウィン・ギャリソン氏は、FTXがセレブらを起用することで、連邦法とフロリダ州法に違反する未登録証券を売り込み、スマホアプリを利用する投資家を出資金詐欺に誘い込んだと主張。FTXの暗号資産口座に登録された全米の投資家を代表する集団訴訟の認定を求めた。

ギャリソン氏は「FTXの詐欺的なスキームで米国の消費者が被った損害額は合計110億ドル(約1兆5300億円)に上る」と訴えた。同氏の訴訟チームは「(被告にとって)不利な証拠となるFTXの多くの電子メールやテキスト」を入手したとしているが、内容は明らかにしていない。

FTXの代理人の弁護士のほか、ブレイディ氏とブンチェン氏の代理人にも電子メールで訴訟に関するコメントを求めたが、これまでのところ返答はない。

原題:FTX, Star Backers Tom Brady and Steph Curry Sued by Investor (3)(抜粋)

(大坂選手とFTXとの契約に関する情報などを追加して更新します)

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