[キーウ(キエフ) 10日 ロイター] - ロシアのショイグ国防相は9日、ウクライナ南部の戦略的要衝・ヘルソン市に近いドニエプル川西岸からの撤退を軍に命じた。ロシアにとって大きな後退で、戦況の転換点になる可能性がある。

一方、ウクライナはロシア軍の一部がまだ、ヘルソンにとどまっているほか、追加要員が派遣されているとして慎重な見方を示した。

ウクライナ大統領府のアレストビッチ顧問は「ロシア軍は移動しているが、完全撤退や再編成の場合ほどではない」と指摘。

また、ロシア軍がヘルソンを去る際に橋を破壊し、道路に地雷を仕掛けているとした上で「われわれと戦ってヘルソン市を保持しようとするのか、現時点で意図は分からない。動きは非常に遅い」と述べた。

ヘルソン市は、ロシアが今年2月の侵攻開始後に占領した唯一の州都。ロシアが任命した当局者らは、ここ数週間で現地の住民の避難を進めていた。

ウクライナでの軍事作戦を指揮するロシアのスロビキン総司令官は、ヘルソン市への補給はもはや不可能になったとショイグ氏に報告し、ドニエプル川東岸に防衛線を設けるよう提案。

これに対し、ショイグ氏は「ロシア軍兵士の命は、常に優先されなくてはならない。民間人への脅威も考慮しなければならない」と述べ、提案に同意すると表明。軍の撤退を進めるよう命じた。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、軍が南部で「一歩一歩」態勢を強化していると述べた。

「きょうは情報面で多くの喜びがあるが、敵はわれわれに贈り物はしないだろう」と慎重な姿勢も示した。

バイデン米大統領は、ロシアの撤退命令について「ロシア軍に真に問題がある証拠だ」と指摘。また、米中間選挙後もロシアのウクライナ侵攻を巡り、与野党が超党派の取り組みを継続できることを望むと述べた。

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は、ヘルソン撤退のニュースを歓迎しつつも慎重な姿勢を崩さなかった。

スカイニュースとのインタビューで「ロシアを過小評価すべきでない」とし、これまでの無人機やミサイルの攻撃は、ロシアがまだ甚大な被害を及ぼすことができるということを示していると述べた。

こうした中、ウクライナ南部ヘルソン州の「副知事」を名乗る親ロシア派のキリル・ストレモウソフ氏が9日、ヘルソン州で車に乗って移動中、交通事故死した。

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