[シンガポール 25日 ロイター] - 国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は25日、世界的な液化天然ガス(LNG)市場の逼迫と主要産油国の供給削減により、歴史上初めて「真の世界エネルギー危機」が進行しているとの見解を示した。

ロシアのウクライナ侵攻が続く中で欧州のLNG輸入が増加し、中国のLNG需要も回復する可能性があるが、来年は新たなLNG供給能力のうち200億立方メートルしか市場に出てこないため、市場が引き締まるだろうと予想した。シンガポール国際エネルギー週間で語った。

同時に、石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」が最近決めた日量200万バレルの減産は、世界の石油需要が今年、日量200万バレル近く増える見込みの中、「高リスク」な決定だったと指摘した。

「世界の複数の国がリセッション(景気後退)の瀬戸際にある中で、この決定は特にリスクが高い」とした。

石油については、2023年に消費量が日量170万バレル増加すると予想されており、需要を満たすにはロシアの石油が依然として必要だと述べた。

主要7カ国(G7)はロシアの収入を抑えるため、新興国がロシア産の石油を低価格で購入できるようにする仕組みを提案。ビロル氏によれば、この計画はまだ多くの詳細を詰める必要があり、主要な石油輸入国の賛同が必要になる。

米財務省高官は先週、ロイターに対し、ロシアが価格上限を無視しようとした場合、ロシア産石油の最大80─90%がこのメカニズム外で流通し続けると考えるのはもっともだと語った。

ビロル氏は「世界は今のところロシアの石油をなお必要としているため、これは良いことだと思う。80─90%というのは需要を満たすのに良い水準であり、励みになる」と述べた。

また、戦略石油備蓄は依然として大量にあるものの、新たな放出は現在のところ予定されていないとした。

一方、現在のエネルギー危機はクリーンなエネルギー源の使用加速や持続可能で安全なエネルギーシステムを形成するための転換点となり得るとも述べた。

「エネルギー安全保障は(エネルギー転換の)第一の原動力だ」と強調した。