(ブルームバーグ): 国内3メガ銀行グループのESG(環境・社会・企業統治)関連施策の担当者に今後の戦略などを聞くインタビューシリーズ企画。第2回は三井住友フィナンシャルグループ(FG)の高梨雅之サステナビリティ企画部長が、脱炭素投資の狙いについて語る。

三井住友FGは気候変動や社会課題への対応を強化するため、4月に組織改編を実施。併せて、サステナブル社会の実現に向けて先進的な技術を持つ企業との関係強化を目的とした200億円の投資枠を新たに設けた。

サステナビリティ企画部はグループ全体の戦略統括や中長期的な視点での事業開発を担うとともに、投資枠も管理する。

高梨氏は「技術革新などはエクイティーの機能がないと達成できないと思っている。この機能があることは非常に重要だ」と述べ、機動的に投資枠を活用する考えを示した。脱炭素を後押しするには新たな技術の創出が必要だが、不確実性の高い案件は融資では資金を付けにくい側面がある。

投資枠を使った1号案件は、温室効果ガスの削減効果の排出権を企業間で取引できるようにする「カーボンクレジット」の決済プラットフォームへの参画で、5月に公表している。

2号案件は検討中だが、高梨氏は「早々に着地させたいと思っている」とし、近く公表する可能性を示唆した。

三井住友FGは他社との連携についても注力する考えだ。「銀行ができることは、はっきり言って限られている」と話す高梨氏は、第三者が持つ脱炭素のソリューションを別の顧客に提供する橋渡しの重要性を説く。

8月には、温室効果ガス排出量の算定・分析を手掛ける米パーセフォニと、日本IBMとの協業を発表し、グローバルにビジネス展開する大企業を対象とした排出量の可視化サービスに乗り出した。

成長と環境保全の両立

かつては、企業の成長と環境保全が必ずしも相いれない時代があった。戦後の高度経済成長期では、日本経済が発展する傍らで公害問題が深刻化したように、両者は二律背反の関係にあったとも言える。

だが、脱炭素は今や、各国政府や民間企業を巻き込んだ世界的な潮流となった。高梨氏は、むしろ脱炭素の取り組みなくしては、競争力の低下を招く時代になったと分析する。

「脱炭素を進めていかないと経済成長はない。銀行にとっても同じで、脱炭素を進められるようなソリューションを顧客に提供できなければ銀行の成長もない」と話した。

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--取材協力:伊藤小巻.

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