[19日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は19日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、米経済活動はここ数週間、緩やかに拡大しているが、一部の地域では横ばい、他の地域では減速しているとの認識を示した。また、企業が見通しに対してより悲観的になっているとした。ただ、インフレ圧力がやや緩和しているとの見方も示された。

FRBはベージュブックで「国内の経済活動は前回の報告から正味で緩やかに拡大したが、状況は産業や地区によって異なっている」と指摘。「需要の減退に対する懸念が強まる中、先行きはより悲観的になっている」とした。

同時に、インフレ圧力がやや緩和し、今後も継続すると予想されるとも指摘。「一部では過去6週間にわたり価格決定力は堅調だったと指摘された。他方、顧客の反発によりコスト転嫁が難しくなっているとの指摘もあった」とし、「今後については、物価上昇はおおむね緩やかになると予想される」とした。

夏の終わりに公表された前回の地区連銀報告では「少なくとも年末までは物価上昇圧力が続く」と予想。今回の報告では対照的な見方が示された。

今回の報告書は、ダラス地区連銀が10月7日までに入手した情報に基づき作成した。

複数の地区で価格上昇圧力の多少の緩和が見られたものの、依然として高止まりしている。労働条件はいくらか緩んできているとの指摘もあった。

クリーブランド地区連銀は物価と金利の上昇で、住宅だけでなく自動車に対する需要も制約を受けていると指摘。「自動車ディーラーは売上高が横ばいか減少していると報告し、金利の上昇と自動車価格の上昇を受け、消費者が支払額の増加を警戒するようになった」と報告した。

実際に今回の報告で、住宅・商業用不動産のほか建設部門を中心とした需要に影響を及ぼす要因として、20項目以上で金利上昇に関する言及があった。

労働市場については、以前ほど厳しくはないものの、総じてタイトな状態が続いていると指摘。雇用凍結やレイオフも散見され、雇用主が経済活動の後退に備える初期の兆候が出ているとした。

フィラデルフィア地区連銀は「景気後退の観測が高まっていると報告された」とし、「企業は景気後退への備えを強化しており、複数の企業が雇用を凍結したと報告したほか、他の企業は業況が改善しない場合の解雇を計画し始めたと報告した。ある企業は広範な解雇にすでに着手したと明らかにした」とした。

FRBは過去40年間で最も積極的な金融引き締めを進めてきたものの、注目している物価指標はFRB目標の2%の3倍超で推移している。

今回の報告は、11月1─2日に開かれる連邦公開市場委員会(FOMC)で4回連続となる75ベーシスポイント(bp)の利上げが決定されるとの見方を弱めることにはならないとみられる。

政策担当者らは借り入れコストの上昇が経済成長率の鈍化、労働市場の軟化、失業率の上昇につながる可能性が高いことを認めながらも、インフレが抑制されるまで利上げを続ける意向を示している。

米国の雇用は力強く推移し、9月の失業率は3.5%に改善した。供給網の回復に伴い、モノの価格圧力は緩和されたが、サービスの価格圧力は急速に上昇を続けている。

FRBは基準となるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を引き上げて現在3.00─3.25%としているが、政策担当者の大部分はインフレ抑制のためには4.50─5.00%の範囲に近づけることが必要と考えている。政策担当者と外部アナリストらは、金融引き締めが効果を発揮し始めた証拠を見極めようとしている。

そのような兆しがあれば、FRBのパウエル議長が「いずれかの時点で」としている利上げペースの減速に踏み切る可能性がある。ただ、これまでのところ住宅関連が急激に減速している以外、幅広い経済指標の大部分でそのような兆候を見いだすことは難しい。