(ブルームバーグ): アップルやゼネラル・モーターズ(GM)、ゴールドマン・サックス・グループといった企業は従業員をなんとかしてオフィスに呼び戻そうと策を練っている。しかし二輪車米大手、ハーレーダビッドソンの方針は異なる。同社は在宅勤務を認めている。

創業119年のハーレーは、2020年3月に一時閉鎖した米ウィスコンシン州ミルウォーキーの本社をまだ全面再開していない。同社のヨッヘン・ツァイツ最高経営責任者(CEO)は年内に、50万平方フィート(約4万6500平方メートル)の本社施設を別の用途で再利用することすら計画している。これはハーレーがリモートワークへのコミットメントにいかに真剣であるかを物語っている。

2020年にCEOに就任したツァイツ氏は、2人の幼い子供の父親で、ミルウォーキーの自宅とニューメキシコ州サンタフェ近くに所有する牧場とを行き来して暮らしている。新型コロナウイルス禍中には父親であることも相まって、「包容性で劣る」物理的なオフィス空間よりもバーチャル会合の柔軟性の方がはるかに好ましいことが分かったと、同氏はいう。

「相手がどこに座っていようと、ボタンを押すだけでその相手とオンラインでやり取りできる、あるいは会議を開くことができるというのは、どのフロアに座っているとか、角部屋の重役室にいる人といったことで定義されない」とツァイツ氏はブルームバーグ・ニューヨーク本社でのインタビューで発言。「働き方の民主化につながり、最高の人材を会社に呼び込むことが可能になる。彼らがどこに座っていようと関係ない」と語った。

ツァイツ氏のこうした姿勢は利他主義というだけではない。先月にはハーレーの電気バイク事業を逆さ合併を通じでスピンオフ(分離・独立)し、合併後会社のライブワイヤ・グループが「初のバーチャルな電気バイク会社になった」と宣言した。世界的に自動車業界で電気化が進む中、同氏は優秀なエンジニアを巡る激しい人材獲得合戦のさなかにあり、電気自動車メーカーのリビアン・オートモーティブやテスラなどから引き抜いてきた。

ライブワイヤはシリコンバレーに研究・開発ラボを置き、ミルウォーキーにもエンジニアリングと商品開発の拠点を有している。オートバイはペンシルベニア州ヨークにあるハーレーの工場で組み立てられる。ハーレーはミルウォーキーの本社について、同社の米国での足がかりとして「欠かせない存在」であり続けるとしており、ツァイツ氏は本社施設の用途をどのように変える計画なのか具体的には述べなかった。

ツァイツ氏はリモートワークの価値を大いに認めているが、明確な目的がある限りは対面での会合も有益だとなお考えている。

「オンライン会議でできるような議題とまったく同じような会合はお断りだ」と話した。

原題:Harley to Repurpose Headquarters as CEO Rejects Return to Office(抜粋)

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