2022/10/18

【解説】持続可能なファッションを目指す「規制」が続々登場

INDEX
  • 改革の担い手は「行政」へ
  • ① 労働者の権利向上を目指す
  • ② 企業の社会責任を問う
  • ③リサイクルの枠組みを確立
  • ④ グリーンウォッシングを禁止

改革の担い手は「行政」へ

リサイクル素材やオーガニック繊維の使用、労働者への公正な賃金など、ファッションの世界はサステナビリティにまつわる様々な宣伝文句であふれている。
だが歴史的に見ると、企業の約束とはたいてい自主的に行われるものであり、その進捗も自己申告だ。言い換えれば、確認されることはほとんどなく、目標に到達しなくても、ペナルティを受ける可能性は低い。
だが変化は起きている。各国の政府や議会は、改革のスピードと規模を企業にゆだねたままでは、気候変動と満足に戦うことはできないという事実に目覚めたようだ。
その結果、アメリカとEUでは今年、繊維・ファッション業界における持続可能性の推進を目的とした多数の規制案が新たに発表された。
これらの法案の多くが成立すれば、消費者が目にする衣料品のラベルはもちろん、店頭に並ぶ商品そのものも様変わりする可能性がある。
また、この動きは「賢く買い、少なく買う責任」は消費者の側にあるという発想からの方向転換を意味するものだ。ストックホルムにある「サステナブル・ファッション・アカデミー」の創設者マイケル・シュラッガーは次のように語る。
「消費者は業界を完全に変える原動力にはならないし、なれません。少なくとも、ファッションが安く、手軽に入手できるかぎり、サステナビリティの優先順位は常に下位になるからです」
(Witthaya Prasongsin/Getty Images)
エコロジーを重視してファッションを選択する消費者が増えているにもかかわらず、衣料品の購入量は1980年以来、5倍に増えており、平均的な衣服は7回しか着用されずに廃棄される
シュラッガーによれば、その一因は、企業の社会的責任の目標達成を法律で義務づけていないことにある。
「企業にしてみれば、環境に優しい選択肢は、それを求める顧客に対してのみ提供すればいい状態です」と、シュラッガーは指摘する。
「規制を強化しないかぎり、ブランドや小売業者はビジネスモデルを根本的に変えるほどの圧力やインセンティブを感じることはありません」
規制がもたらす変化は業界全体に波及し、欧米だけでなく、ファッション生産の世界的拠点であるアジアにも影響を及ぼすだろう。
本記事では、アメリカとヨーロッパで今年、提案された主要な法案のいくつかを紹介しよう。
(ondacaracola photography/Getty Images)