英年金基金のデリバティブ評価損、最大25兆円-JPモルガン試算
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確定給付年金で将来給付すべき債務が増えるとそれに見合う資産を積み立てる必要が出て来ます。年金債務のキャッシュフローに年金資産の運用から生まれるキャッシュフローをマッチングさせる、つまり運用利回りを高めることで年金資産を積む負担を減らそうとする動きが欧州で多く見られ、中でも年金資産の積み立てに厳格な英国でその傾向が強いことはつとに指摘されていたところです。
https://www.nensoken.or.jp/wp-content/uploads/H_29_01.pdf
世界的な量的緩和の浸透で運用する債権の金利が極めて低くなる中で年金給付に見合うキャッシュフローを確保すため、英国の年金基金は低い変動金利を払い高い固定金利を受け取る金利スワップを多用して来たと報じられています。「英政府が先月、財源の裏付けのない大型減税案を発表したのをきっかけに相場は急落」つまり基金が支払うべき変動金利が急騰して損失が膨らみ、追加担保の差し入れを迫られて国債を投げ売りして更に傷口を広げた形でしょう。
デリバティブはリスクのヘッジに使うことが原則で、投機的な利益を上げるためのものではありません。金利スワップが確実にウィンウィンの関係になるのは、当事者が異なるマーケットで異なる信用力を持っていて、例えばドルの市場に強いA社がドルで資金を調達してドル債務を必要とするB社に渡し、ポンドの世界で信用の厚いB社がポンドで調達してポンド債務を必要とするA社に渡すといった場合に限ります、たぶん。そうした本源的な利益を内包しない長短金利スワップは、ゼロサムゲームの投機です。如何に確実に稼げそうに見えようと、ゼロサムゲームの投機で勝ち続けることはできません。
堅実を旨とすべき年金基金が英国でこうした取引にのめり込んでいたことに、驚きを禁じ得ない気持ちです。(・・;英年金基金の多くは年金債務に連動させたポートフォリオ、要するに英国長期債をデリバティブを使って保有しています。年金債務は債券利回りで割り引くので、金利が低下すれば債務は増加し、金利が上昇すれば債務は減少します。今回は金利上昇しているので、デリバティブの評価損が出ているとのことですが、反面年金債務も同額減少しているのではと思います。なので、インパクトはネットでゼロではないでしょうか?間違っていたら教えて下さい。