[ロンドン 29日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)のチーフエコノミスト、ヒュー・ピル氏は29日、中銀が前日に開始した時限的な長期債買い入れについて、市場の機能不全への対応を目的としており、利回りに上限を設けたり、政府や金融機関に安価な信用を提供したりするものではないと述べた。

中銀が10月14日まで毎日最大50億ポンド(55億3000万ドル)相当の長期債を買い入れる計画について、銀行の取り付け騒ぎを阻止する措置のようなもので、英国債価格が市場で再決定されるのを止めることにはならないとの認識を示した。英国経営者協会での講演原稿で語った。

ピル氏は買い入れについて「金融政策操作ではない」とし、「長期金利に上限を設けたり、関係機関や政府に対し市場より有利な資金調達条件を提供することを意図したものではない」と述べた。

トラス英首相は市場の混乱は英政府の大型減税を柱とする財政計画よりも海外要因を反映しているとの見方を示しているが、ピル氏は英国固有の要素があることは「疑いようがない」と指摘。

「財政政策の中期的見通し変更のような新たな情報が公表された場合、関連資産、つまり今回は国債価格が再決定されると想定できる」とした。

中銀の国債市場介入前にポンドは対ドルで過去最安値を更新し、30年物国債利回りは20年ぶりの高水準を付けた。中銀の措置を受けてポンドと国債価格は多少持ち直したが、クワーテング財務相が減税策を発表する前の水準は下回っている。

ピル氏は11月の中銀会合について、政府の財政計画や最近の市場動向を徹底的に精査するが、大幅な利上げを実施する可能性が高いとの見通しを改めて表明。今回の財政出動が「11月に大幅かつ必然的な金融政策対応を促すという結論を出さざるを得ない」とした。

また、債券価格の激しい変動への金融機関の耐性を高める規制強化を検討する必要があると語った。