[トロント 28日 ロイター] - ロシアがウクライナでの戦闘継続に向け予備役を対象とした部分動員を開始したことについて、専門家は「政治的ゲームチェンジャー」としながらも、短期的にはロシア軍の攻勢にはつながらないとの見方を示している。

トロント大学のムンク国際問題・公共政策研究所が27日主催したオンラインイベントで、元英空軍パイロットで英国の防衛駐在官として2016年までロシアに駐在したカール・スコット氏は、動員可能性のある人員は「追加的な30万人の『人質』に過ぎず、軍隊ではない」と指摘。ミシガン大学アナーバー校のユーリー・ジューコフ准教授(政治学)は、こうした人員は「戦線を維持するための防衛ラインに投入されるにとどまる」とし、「冬前までにロシア軍の攻勢につながるとは考えていない」と述べた。

スコット氏は「専門的な訓練を受けた兵士ではないため脅威にはなり得ないと考えるのは簡単だ」としながらも、ロシアの作戦が失敗した場合、「武装した30万人の怒れる男」は極めて危険な存在になると指摘。支配地域で実施されたロシアへの編入の是非を問う「住民投票」に触れ、「ウクライナ軍が(この地域で)多くのロシア兵を殺さざるを得ない事態になれば、(地域的な紛争から)全面的な戦争に発展する」と危機感を示した。

ジューコフ氏は「ロシアが制圧したザポロジエとヘルソンの一部地域で、ウクライナ人を兵士として動員しているとの報告を受けている」とし、こうした兵士はロシアのプロパガンダに利用されると予想。「ロシアが解放したウクライナ人が今はロシア軍の兵士として戦っている、『ナチ化』したウクライナ政府が自国民を銃撃している、といったプロパガンダを掲げることは十分想定される」と述べた。