あの雑誌にはコクがある_tarzan

ターザンは、”洗脳度の高い”ライフスタイル誌

国際競争を勝ち抜くカラダを。ターザンの願い

2014/12/26
第1回:「筋肉と景気は連動する」Tarzan編集長に聞く
第2回:「体は張って当然」Tarzan編集部の姿

「日本で働いている人が元気になり、体力を上げてほしい」——健康的なライフスタイルを提案する雑誌「Tarzan」には、そんな思いが込められている。「スポーツやフィットネスのあるライフスタイルが欧米など先進国で当たり前になる中、Tarzanは、日本におけるそれは何かを考えていく」と、編集長の大田原透氏は話す。

経済のグローバル化が進み、日本のビジネスマンも国境を越えて戦っている現代。「欧米のビジネスマンは相当肉体作りをしているし、スピリッツも強い。日本人が体力で負けるのは良くないのではないか」

読者層は30代半ば〜40代で、男性が7割強。「普段はスーツ、着替えたらスポーツウェア」なビジネスパーソンが中心だ。勝負にこだわるプロのアスリートや、肉体美を追求するボディビルダーは読者としてはメインターゲットではない。「鏡を見てうっとりするだけのような誌面は作りたくない。『鍛えたカラダで何をする?』を読者と共有したい」
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あくまで「ライフスタイル誌」

Tarzanはあくまでライフスタイル誌だという。スポーツや健康の情報を中心にしながらも、ファッションやアウトドア、自動車などの情報も紹介。コラムのコーナーでは政治経済について議論することもある。「専門誌ではない。Tarzanのライフスタイルに合った人が読む情報ならば、テーマは何でもいい」

ただ「ライフスタイル誌としては“洗脳度”が高い」と笑う。ほかの雑誌のように、掲載された洋服や車などを購入するだけでは、Tarzanが提唱する健康的なライフスタイルは実現できない。食事に気を付け、適度な運動をするなど「生活を変えないと、Tarzanにはなかなか行き着けない」のだ。

「楽しさ」や「面白さ」も重視している。「人生で一番大事なのは楽しく生きること」と大田原氏は断言。体作りやスポーツを、人生を楽しむための手段と位置づけ、「一生スポーツできるカラダがあり、仕事とは違うコミュニティを持っているのは豊かなこと」と話す。

モデルが白人なのは…

Tarzanの誌面に写真で登場するモデルは、ほとんどが白人だ。理由は「モデルを記号化したい」から。「日本人モデルだと、この人は誰? と気になってしまい、“腹筋”など伝えたいテーマが伝わりづらくなる。生々しくないよう、意味を持たせないように、外国人を採用している」

筋肉の付き方や体作りの考え方は、文化や人種によって異なる。筋肉ムキムキのアメリカ人の友人に同誌を見せると、「ガリガリな奴ばかりが載ってる。もっとムキムキな人を載せるべきだ」などと言われるそうだが、一般的な日本のビジネスパーソンには、あまりにムキムキな肉体は好まれない。

鍛えた筋肉を読者に披露してもらい、同誌のカメラマンが写真を撮るという読者参加型の企画も展開しているが、こうした企画も近年になってやっと取り組まれるようになってきたという。イギリスなどの健康雑誌では定番の企画というが、日本人は自分をひけらかすのが苦手な人が多いようだ。

運動が好きでない人が増える?

日本のビジネスパーソンの体力作りを応援する同誌だが、今後の日本には「運動があまり好きでない人が増えるだろう」と大田原氏は推測している。

中学や高校で体育会系部活に入る人が減っており、スポーツの楽しさを知らない人が増えている。「運動経験のない人には、スポーツは辛いものというイメージがある。今後、スポーツが好きでない人が増えるのは仕方ない。日本でもアメリカのように健康格差が広がり、太っている人と節制している人に二極化していくだろう」

そんな未来を予見しながらも同誌は、周囲の人に憧れられるような、肉体の「良いモデル」を作っていきたいという。「運動に興味がない人でも、電車でいいカラダの人を見かけたら、自分ももっと筋肉を付けたいと思うかもしれない。“肥満は伝染する”とも言われるが、読者がカラダを作ってくれれば、周囲に影響するだろう」