[北京 16日 ロイター] - 中国国家統計局が16日発表した8月の経済指標は、鉱工業生産や小売売上高の伸びが加速するなど、厳格な新型コロナウイルス関連規制の影響下で予想外の強さを示した。ただ、先に発表されている貿易や与信のデータは弱く、好調は続かないとみられている。

鉱工業生産は前年比4.2%増加し、伸び率は7月の3.8%から加速した。ロイター調査のアナリスト予想である3.8%増も上回った。

小売売上高は5.4%増加。こちらも伸び率が7月の2.7%と予想の3.5%を上回り2月以来の高水準となった。

自動車産業は工業生産と小売売上高の双方をけん引。新エネルギー車の生産は政府の販売奨励策に支えられ、117%急増した。

キャピタル・エコノミクスの中国エコノミスト、ジュリアン・エバンズプリチャード氏は「ベース効果で強めの数字が出た」と述べ、昨年8月は新型コロナのデルタ株が猛威を振るい経済活動が停滞したと指摘した。また輸出が大幅に減速し、銀行の新規融資も期待ほど持ち直していないことから、好調さは9月まで持続しないとの見方を示した。

1─8月の固定資産投資は前年同期比5.8%増加。予想は5.5%増、1─7月は5.7%増だった。

<不動産セクターは低迷>

国家統計局の報道官は8月の統計について、政策支援が奏功し回復したと述べたが、回復は脆弱で外部環境は引き続き複雑だと指摘。世界的な景気後退のリスクと中国のコロナ抑制を巡る課題を挙げた。

債務問題を抱える不動産セクターは低迷が続く。1─8月の不動産投資は前年比7.4%減少し、1─7月の6.4%減から減少ペースが加速。8月の新築住宅価格は前月比0.3%下落で21年11月以来の大幅な下落。前年比でも15年8月以来最大となる1.3%下落となった。

ロイターの算出によると、8月単月の不動産投資は13.8%減で、21年12月以降で最も大きい減少率となった。

消費者の信頼感や業況が低迷する中、企業は人員増強に慎重になっている。8月の調査に基づく全国の失業率は5.3%で7月の5.4%からわずかに低下。若年層の失業率は18.7%で過去最高だった7月の19.9%は下回ったものの、なお高止まりしている。

当局は5月下旬以降、50を超える経済支援策を発表。10月に共産党大会を控え、今四半期が政策対応の正念場と強調している。

ジョーンズ・ラング・ラサールのチーフエコノミスト、ブルース・パン氏は、中国人民銀行(中央銀行)が短期的に金利を引き下げるとは予想していない。流動性措置や製造業・グリーン投資への支援を通じた政策緩和の可能性はある。

「預金準備率の引き下げなど、他の政策オプションも引き続き机上にある」と語った。

成長を促進するため、当局は大型公共事業の資金調達のために債券を発行するという昔ながらの方法を取っている。16日に発表されたデータによると、1─8月のインフラ投資は前年同期比8.3%増で、1─7月の7.4%増から加速した。