2022/9/9

【9/17開催】大宮エリーと絵を描こう!子どもワークショップ

NewsPicksが、今年8月に新しく立ち上げた子ども向け新聞「NewsPicks for Kids」。
このたび、アーティストの大宮エリーさんを講師に迎え、子ども向けのワークショップを開催します。
定員に達したため募集は締め切りました
昨年より、子どもたちのためのクリエイティブの学校「こどもエリー学園」を開校している大宮エリーさん。
変化の激しい時代に、子どもたちにはどのような力を身につけてほしいと考えているのか、現在の活動に込める想いを聞きました。
(↑動画版インタビューはこちら)
(アーティスト写真撮影:諸井純二)
INDEX
  • 今、子どもに伝授したいこと
  • すべての子どもに、才能がある
  • 多様性に触れることの大切さ
  • 出張版「こどもエリー学園」、開催

今、子どもに伝授したいこと

──NewsPicksが、子ども向けの新聞を創刊したんです。
エリー すごくカラフルですね。日本のものじゃないみたい。あまり子どもっぽく作っていないんですね。
──半分は、アメリカの子ども向け新聞「New York Times For Kids」からの翻訳記事で、大人顔負けの話題も扱っています。残り半分が、NewsPicksからのオリジナル記事になっています。
なるほど、だからグローバルな感じなんですね。
──「知識をインプットするため」というよりも、子どもたちが家族で対話したり、自分の考えをアウトプットしたりするきっかけになればいいなと思っていまして。エリーさんは、子ども向けに「こどもエリー学園」を開校していますね。
もともとは2020年4月に大人のためのクリエイティブの学校、「エリー学園」を始めたのがきっかけです。
世の中が早いスピードで変わっていくなかで、一番大切なのは「クリエイティブ力」ではないかと思っていて。
例えばA方向に行ったけれどもダメになり、B方向もうまく行かなかったら、「もうダメだ」とパニックになってしまいますよね。
でもクリエイティブの体幹があれば、「Cでもいいし、Fでもいいんじゃない?」と、状況に応じて身のこなしを軽く、楽しく生きていくことができるはず。
そこで、私がこれまでに取り組んできた脚本や作詞、ドラマやCMの演出などをテーマに授業を始めたのですが、「子どもにこそ、こういう授業をやってください」と言われて、2021年から「こどもエリー学園」をスタートしました。
成毛眞さんとの対談でも、こどもエリー学園について語っていました(クリックで動画を再生します)

すべての子どもに、才能がある

──子ども向けには、どのようなテーマで授業をしているのでしょうか?
「ことば」と「アート」に特化し、普段はオンラインで、ときどきリアルでもやっています。
例えば「ことば」では、2人1組になってインタビューをやってみようという授業があります。
意外と難しくて、「好きな食べ物は何ですか?」「ハンバーグです。」「好きな数字は?」というように、最初は1問1答になってしまうんですね。
子どもたちに「どうだった?」と聞いてみると、「つまらない」という感想が返ってきます。
「どうしてつまらなかったんだろう」と振り返るなかで、「相づちがなかった」「どんなハンバーグが好きなのかを、もっと聞いてほしかった」と気づく。
そこから「人の話を聞くのって難しいね」ということを、私が教えるのではなくて、子どもたち同士で学んでいきます。
これは想像力であり、クリエイティブ力なんです。
「アート」の授業でも、自分で作品を発表するだけではなく、「発表したものを聞いて、どう思ったか」も必ず聞いています。
今はSNSで自分から発信することが盛んですが、それだけではなくて、相手のことをどう思うか、どういうふうに言ってあげるのがいいか、を大切にしているんです。
「太郎くんの発表、どうだった?」「こういうところがすごく面白かったです」「それはなぜ?」「普通に描かないで、斜めから見ていたのが面白かったから」と。
それによって聞く力が育つのはもちろん、発表した本人の自己肯定感にもつながります。
私がほめるよりも、友達から「こういうところは考えつかなかった」「すごいと思った」と言われることで、子どもはどんどん嬉しくなる。
アートの授業では、「名刺をつくろう」というものも印象的でしたね。
「名刺って知ってる?」って聞いたら、「知ってる。お父さんの、四角くてちっちゃい紙のやつ」って言うから「それは、つまんない名刺だから」って言って。
私の授業では「石ころに書いても、カップラーメンの空き箱に書いてもいい。何でもいいけれど、『こういう自分を表現している』という理由を考えて、一点ものの名刺をつくってね」と伝えたら、大きなカンパチをアルミホイルでつくってきた子がいました。
理由は「釣りが大好きで、将来は海洋博士になりたいから」だそうです。インパクトがありましたね。
──とはいえ、いきなり自由にのびのび発表できる子ばかりではないのではないでしょうか?
そうですね。例えば「自分のワクワクを写真で撮ろう」では、石の写真を撮ってきた子がいました。
引っ込み思案な子で、「この石に、なぜワクワクするの?」と訊ねても、じっと黙っている。「どうして? 教えて」と辛抱強く聞いていたら、「これはアリから見た石。アリから見たら、石が山に見える」と言うんです。
アリの目線から、石を這いつくばって撮った写真だったんですね。それで皆、「すごい」ってなって。
コミュニケーションが上手な子ばかりではなく、おとなしくて自分が思っていることを伝えるのが苦手な子もいるのですが、そういう子にこそ、すごい才能があったりします。
親御さんが「うちの子は普通」と思っていても、それぞれに才能があって、画一的じゃないんですよね。
義務教育の場合、一定の物差しでしか子どもの才能は測れません。それはそれでいいのですが、私の授業には物差しがないから、答えは1個じゃないと伝えています。
「これも正解、あれも正解」と選択肢をたくさん増やすことで、生き抜く力ができるんです。
また、「友達がつくってきた作品も正解だから、すごいアイデアだと思ったら、自分のものにしないといけないよ」とも、よく言っています。
それによって他人の価値観を受け入れられるようになる。私自身が成長していく過程で必要だったことを、子どもたちにも伝授したいのです。

多様性に触れることの大切さ

──エリーさん自身も、最初から今のように多方面で活躍していたわけではなかったのですよね。
そうですね。私はいじめられっ子だったので、自己肯定感がすごく低かった。でも、いろいろな仕事や出会いに恵まれるなかで、よく“無茶振り”をされてきたんですね。
やったこともないのに「今度、脚本をやってみて。絶対できるよ、エリーの作品が見たい」と言われたりして。戸惑いつつも「じゃあ、頑張ります」と荒療治のように乗り越えてきたのですが、結果として、それが今に繋がった。
子どもたちが今、さまざまな環境で自信を失ってしまっていたとしても、私がそうだったように、「アートとことばの自由」を通して、自信を持ってもらえるようにしたいと思っています。
──エリーさんが出会ってきた「面白い大人」を子どもたちに紹介する授業もありますね。
はい。自分が人との出会いで成長してきたこともあって、子どもたちにも、いろいろなジャンルの方に出会わせてあげたいんです。
例えば、漆芸家で人間国宝の室瀬和美さん、レゲエ世界王者のMighty Crownさん、音楽プロデューサーの亀田誠治さん、震災後「みんなの家」というプロジェクトで、いち早く東北に集会所をつくった建築家の伊東豊雄さんなど。
今は、将来の夢を聞かれて「YouTuberや漫画家になりたい」と話す子も多いですが、世の中にはもっといろいろな職業があるし、今時点では存在しない、新しい仕事をつくり出す子も出てくるかもしれません。
だから、できるだけ多様性に触れることで、柔軟になっておいたほうがいい。
「エリー学園」は普段はオンラインで、函館から奄美大島、海外からも参加しているので、その面でも、多様性が刺激になっているようです。
「自分の半径数メートルにある花を描こう」という授業をしたら、奄美の子が「これ、バナナの花です」って発表をして。「えっ、バナナって花が咲くの?」と盛り上がるから、面白いですよね。
──エリーさんから伝えることだけではなく、子どもたち同士で刺激し合っている部分も大きいのですね。
自分にこんな才能があるんだと気づくとともに、他者を知り、相手のことも認めるのが、これからのリーダーシップにおいても大事になっていくはずです。
あとは、ささやかながら、親御さんのサポートにもなればいいなと。
習い事の場合は送り迎えがあるけれど、オンラインならその必要がないから、子どもが私の授業を受けている間は、親御さんの自由時間になる。そういう、小さなおせっかいができたらと思っているんです。
私自身、作家活動も続けながら、未来の人たちに橋渡ししていく責任と使命があると考えているので、こうした草の根運動が、何かにつながったらと期待しています。

出張版「こどもエリー学園」、開催

──今回、そんなエリーさんと「NewsPicks for Kids」がコラボして、ここNewsPicksのイベントスペースで「こどもエリー学園」の出張授業をやっていただきます。
どういう授業が盛り上がるかな。今、決めてしまう?
──ぜひ、お願いします。
(しばし考える)こどもエリー学園でも反響が大きかった「赤をきわめる」っていうのを、やってみましょうか。
海を、青じゃなくて赤1色で描いてもらいます。
最初「えっ、そんなのできないよ」と子どもたちは言うのですが、「海と言っても、北と南の海は全然違う。北海道なら流氷が浮かんでいたり、沖縄ならクジラがいるかもしれない」という話をすると、創造力が爆発するんです。
──ありがとうございます。
私の授業はお父さんお母さんも楽しめるから、スマホを眺めて待っていなくても大丈夫。一緒に参加してもらえる、楽しい時間になると思います。
きっと、自分の子どもさんの才能に驚くのではないでしょうか。
「じゃあ、こんなこともやらせてあげたらいいのかな」という発見や、あるいは「ああいうことをしてきたから、こういう作品ができたのかな」という答え合わせの時間にもなるかもしれません。
どういうふうに子どもたちに教えていくかは、来てくださってからのお楽しみということで。私自身、すごくワクワクしています。
大宮エリー学長の特別授業!
「赤をきわめる」


赤しかないなかで、青いものを描く。その制限によって、固定概念が外れる面白さや、「24色、36色のペンを持っている人がすごいんじゃない。クリエイティブ力がある人がすごいんだ」ということが感じられるはずです。──大宮エリー