(ブルームバーグ): シンガポール通貨庁(MAS、中央銀行に相当)は、暗号資産(仮想通貨)取引における個人投資家のレバレッジとクレジットファシリティーの利用を制限することを検討している。各国で規制当局が暗号資産の管理を強化していることに足並みをそろえる。

MASのメノン長官は29日の講演で、取引に伴うリスクについて多くの人が「非合理なほど無頓着」にみえるとし、新規制では顧客の適合性を判断するテストが含まれる可能性があると述べた。同氏によると、MASは10月までに規制案についてパブリックコメントを募集する予定。

メノン氏は50人超の業界関係者が集まったセミナーで、「個人投資家に仮想通貨へのアクセスを禁止してもおそらくうまくいかないだろう。仮想通貨の世界には国境がない」と指摘。「各国当局の間では規制を強化する潮流がより強い。MASもそうだ」と述べた。

MASは10月までに、ステーブルコインの規制についても業界関係者に相談する考え。ステーブルコインを巡ってはテラUSDの崩壊で400億ドル(約5兆5400億円)相当のトークンが実質的に無価値になり、仮想通貨市場全体に衝撃を与えたことで課題があぶり出された。メノン氏によると、安定した準備金による裏付けや額面でのタイムリーな償還といった要件を課すことなどが各国で検討されている。

有名企業の一連の破綻が市場崩壊を増幅させたことから、規制に関する国際協調の欠如が過去数カ月で焦点として急浮上してきた。破綻したヘッジファンド、スリー・アローズ・キャピタルや、仮想通貨の貸し付け業務を手掛けるボールドなどの拠点であるシンガポールの管理体制にはとりわけ関心が集まっている。

メノン氏は、暗号資産のボラティリティーの高さは通貨としての利用に向かず、個人投資家にとって「非常に有害」だとする立場を改めて示した。一方で、トークン化や、ブロックチェーン技術を利用して暗号資産の保有者や取引を記録する分散型台帳には経済的なポテンシャルがあるとも同氏は述べた。

原題:

Singapore Mulls Making It Harder for People to Trade Crypto (2)(抜粋)

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