2022/9/1

【最高峰の挑戦の場】各業界のトッププレーヤーがM&A業界に転職する理由

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日本の産業を支えてきた中小企業が、後継者不在によって危機に瀕している。国としても積極的にM&Aを促すなど、経営の引継ぎを急ぐ。
そこで引く手あまたなのが、M&Aを仲介するアドバイザー。経営者たちと直接向き合う日々は、ビジネスパーソンとしての成長に直結する。
そんな真剣勝負を求める若手が、経験を問わず多く集うのが、M&A総合研究所だ。創業からわずか3年9ヶ月で業界最速かつ、この地合いの悪い相場でも初値465億円と大型の上場を果たし、業界上位に躍進している。M&A業界を改めて解説するとともに、急成長ベンチャーの強さに迫る。

伸び続けるM&Aのニーズ

M&A業界を取り巻く環境として抑えておくべきポイントは、現在の日本は経営者の平均年齢が高く、後継者が不足していることだ。東京商工リサーチおよび帝国データバンクの調べによると、2011年以降10年にわたって、企業の後継者不在率は60%を突破。事業承継による次代への経営の引継ぎが求められている。
 そこで活況を呈しているのが、M&A市場だ。
 M&Aとは「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」の略称であり、日本においては広く、会社法の定める組織再編(合併や会社分割)に加え、株式譲渡や事業譲渡を含む、各種手法による事業の引継ぎ(譲り渡し・譲り受け)のことを指す。
 高齢化に伴う後継者不在問題を背景に、中小企業の統合・再編促進が必然となり、M&Aはさらに活発化する見通し。後継者不在企業127万社のうち、62万社が黒字倒産する危機を迎えており圧倒的な成長余力を持つ有望マーケットである。

優秀人材がM&A業界に殺到する理由

M&A業界には現在、他業界からの転職者が殺到している。
 その理由は、「社会貢献性の高さ」「自己成長」「実力主義の高い給与水準」という3つに集約される。
 そもそも優秀な営業が転職を考え始める理由は以下のようなものが考えられる。
 M&A業界はこういった課題をすべて解決できるため、さらに上で述べたように市場が伸びていることも相まって、転職者が殺到している。
 M&A総合研究所は創業からわずか3年9ヶ月で業界最速となる上場を果たし、2022年9月現在、時価総額は1000億円を超え(2022年9月1日時点)、業界3位となっている。

創業4年弱でも急成長成長の理由

M&A専門業者として仲介事業を行う法人は、現在2000社以上が中小企業庁に登録しているが、M&A総合研究所は売上高、M&A支援業務専従者数ともに上場M&A仲介企業の中で第4位に位置しており、さらに上位をうかがっている。
 その原動力について佐上峻作代表取締役社長は次のように説明する。
「私がM&A総合研究所を立ち上げたのは、料金体系の不透明さと作業の非効率さに疑問を抱き、業界の常識を変えたいと考えたからです。
M&A総合研究所 佐上峻作 代表取締役社長
1991年生まれ。2015年創業のメディコマを1年でベクトル(東証一部)に株式譲渡。その後、複数回の起業、事業買収、売却を実施。自らのM&A経験を活かし、M&A総合研究所を創業。「M&A Tech」で日本の課題である事業承継問題の解決を目指す。
 だからこそ、顧客に対しては『新たな料金体系』と『成約速度』という価値を届け、従業員に対して『効率的な職場環境』を構築することに拘りました。これが競合優位性になっています」
 料金体系とは、譲渡企業に対しての完全成功報酬。上場しているM&A仲介事業者の中では唯一だ。普通の感覚なら、「料金体系が良いところを選びたい」と思うのは当然だろう。顧客起点というM&A総研の大事にしているポリシーがここでも活きている。
 この料金体系は営業上の武器にもなり、アドバイザーにとっても営業をしやすいというメリットにもつながっている。
 佐上氏が2点目に挙げた成約期間とは、M&Aのアドバイザリー契約を結び、最終的にクロージングして決済が終わるタイミングまでを指している。
 一般的には1年かかることも珍しくないが、M&A総研の現在の平均は6.2ヶ月(2021年9月期実績)。短時間でM&Aを成立させているため顧客からは評価され、アドバイザーの生産性が上がるので同社の急成長にもつながっているのだ。
 短期間での成約を可能にしているのは、DXやAIの力によるところが大きい。M&A仲介の実務は、大きく「ソーシング」「マッチング」「エグゼキューション」の3フェーズからなるが、ソーシングに関してはDX化、マッチングに関してはAI化によって、非常に多くの時間を浮かせることができている。
 M&A総合研究所では、例えば営業で手紙を発送するなどのアナログ業務を徹底的にデジタル化。数百万社のデータベースから送りたい企業を選んでワンクリックで手紙が送られる仕組みだ。
「弊社の独自システムで、ソーシングリストに対象企業を追加すると手紙を自動で送れるようにしています。こうした細かな作業を弊社は徹底的に自動化しています」と明かすのは、矢吹明大 取締役営業本部長だ。
M&A総合研究所 矢吹明大 取締役営業本部長
1986年生まれ。明治大学卒業後、2010年にキーエンスに入社。製造業向けのコンサルティングセールスに従事。2015年、日本M&Aセンターに入社。製造業を中心に多くの案件を成約に導く。2019年、M&A総合研究所に移籍。営業部門を統括する。2020年に取締役営業本部長就任。
 マッチングについても、AIを使うので異常なほど高速だ。人手だと時間がかかることも多いが、同社では数秒でリストアップし、そこから人が精査していく。
 こうしたDXとAIのシステムは、一朝一夕で作れるものではない。従業員の声を反映して6000回もの改修を行い、最適化。同業他社からの転職者にアンケートを取ったところ、3割弱の業務時間を削減できているという。
 結果としてリードタイムが短縮され、顧客対応に注力できる時間が多くなるので、早く成約させることができるというわけだ。
 ここまで紹介したようにM&A総研は、完全成功報酬なので営業で有利な上、成約までの期間が高速だ。
「それだけに1人が携わる案件も多くなります。同時に、OJTを中心とした教育体制による即戦力化によって、入社して1年以内に成約させられる確率は、未経験者で77%(*)と非常に高くなっています」(佐上氏)
*2020年9月期と2021年9月期に入社した社員の実績
 また、DX・AIによる効率化の結果、雑務やコストが少なく、M&Aアドバイザーが営業活動に集中できる環境を提供してきた。その結果、労働時間が短いながらも成長速度が速く、しかも高い報酬を得られる。
 こうした背景から、同社は3年で社員数を10人から100人まで拡大でき、業界上位への躍進を果たしたのだと佐上氏は話す。

経営のプロたちとの真剣勝負で身につくもの

M&A業界は成長著しい有望市場だが、ビジネスパーソンのキャリア形成という観点ではどうだろうか。M&A仲介業界に身を置くことで、どのようなキャリアを積むことができるのか。
 M&A総研では、若手でも活躍できる営業環境を整えたことで年齢層は徐々に下がり、現在では平均29歳となっているという。事業承継を望む経営者から見れば親子ほどの年齢差がありながらも信頼を得て結果を出し、さらに自身の成長も実現しているのだと佐上氏は話す。
「譲渡企業のオーナー様は経営のプロであり、会社への思い入れも強い。譲受企業様は企業のハイレベルな担当者。両者と対等に向き合い、間に立って調整していく過程で、ビジネスパーソンとしての圧倒的な成長につながります。
 財務や法務の知識も身につきますし、自分の腕一本で何億円もの取引を成立させるのは相当難易度が高いことなので、交渉力も上がります。かなりハイレベルなビジネスパーソンになれると思っています」と強調する。
 とはいえ、経験がなければ務まらない職種のようにも思える。だが、営業部門における出身企業はさまざまだ。同業界からの転職者がもっとも多く、銀行や証券といった金融業界が続く。
 他の業界から入って通用するものなのか。オンボーディングや育成の仕組みについて、キーエンス出身の矢吹氏が説明する。
「育成に関しては、現場で学んでいただくことを優先しています。異業種からM&Aの世界に入った一人として感じるのは、座学で学ぶことはあまり意味がなく、現場で経験をたくさん積むことこそが、早い成長につながります。
 弊社が作りあげている効率化の仕組みは、お客さまに対する時間をたくさん作るためであって、それが成長を促しているのです。M&Aはまったく同じケースが2つあるわけではないので、パターン化して学べることは少ない。現場でお客さまと真剣に向き合うことでしか、学ぶことができないと思っています」
 もちろんいきなり現場に放り出すわけではなく、初めは先輩について学ぶことになる。だが、かなり早い段階から現場へ出る機会を用意しており、巣離れは早い。
「未経験だったとしても、先ほど話した私たちの強みであるテクノロジー基盤や業務推進のためのツールや仕組みが成長を後押ししています。M&A仲介に携わる意思があるのなら、誰でも成長できる仕組みを作っているわけです」と佐上氏は胸を張る。
 退職率は2021年9月実績で10%と低水準であることからも、仕事の進め方や社風に馴染めない人が少ないことがうかがえる。
 一方でM&A仲介というと業界的には忙しいイメージがあり、ライフワークバランスの観点で無理が生じているのではないかと疑念を抱く。
 この点について佐上氏は、「高すぎる目標を設定してもあまり意味がなく、現実的に達成できるラインをしっかり考えた上で目標設定しています。ゴムを伸ばしきった状態が続くと、いつか限界を迎え、ちぎれてしまう。そうならずに従業員には長く働いてほしいと考えています」と話す。
 社会環境の変化による旺盛な需要があるM&A業界。その中で、既存の商慣習にとらわれずに、テクノロジーを駆使して風穴を開けたM&A総研。
 佐上氏はM&A業界で働く魅力を改めてこう語る。
「経営者の思いと真剣に向き合い、企業の買収、統合という企業経営にとってさまざまな知識が必要で、あらゆる経験ができるM&A業務は、ビジネスパーソンとしての総合的な力を養うことができると思っています。
 たとえ、M&A業界を卒業したとしてもビジネスの最前線で活躍できる素地を得られる。未経験者でも育て上げられる人材とインフラとカルチャーがM&A総研にはあるので、ビジネスパーソンとして最速で成長してもたいたいと思う人はぜひチャレンジしてもらいたいと思います」