(ブルームバーグ): ドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲン(VW)は、ヘルベルト・ディース最高経営責任者(CEO)の退任を22日に発表したが、支配権を握るポルシェ家とピエヒ家の後ろ盾が崩れ始めた1週間前に、解任に向けた動きは始まっていた。

両家の揺るぎない支持でディース氏は従業員の代表との度重なる衝突を乗り越えてきた。ただ、重要なプロジェクトの失敗や従業員の不満を受け、過半数を握る両家はトップを入れ替える必要があるとの結論に達したという。

協議に詳しい複数の関係者によれば、決定的となったのは7月20日だった。VW監査役会で、両家の代表やニーダーザクセン州当局者、労働組合指導者から成る委員会がディース氏を解任すべきだと判断した。ディース氏がそれを知ったのは翌日の昼食ごろだった。米テネシー州チャタヌーガのスポーツタイプ多目的車(SUV)工場の訪問から戻り、時差ぼけに悩まされていた時だった。

 ディース氏の解任劇は、巨大企業の指導者らがデジタル時代への対応で直面する課題の厳しさを浮き彫りにした。VWの監査役会では従業員代表が議席の半分を握っており、ドイツの基準からしても労組の影響力が強い。労組の指導者や州政府は雇用を損ないかねない大きな変化を急激に進めることに抵抗している。

2015年にBWVから移籍したディース氏は賛同者を十分に集められず、孤立化を深めていた。コスト削減の方針に対する反発や次世代自動車向けのソフトウエア開発に遅れが生じたことが最終的に致命的となった。

VWの広報は、ディース氏の解任につながったイベントについてコメントを控えた。

ディース氏の契約は2025年10月までとなっており、それまでは報酬を全額受け取れる公算が大きい。VWの業績や株価次第では3000万ユーロ(約41億7000万円)を超える可能性がある。

原題:

VW’s Billionaire Clan Plotted CEO Ouster While He Was on US Trip(抜粋)

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