[東京 12日 ロイター] - 鈴木俊一財務相と来日中のイエレン米財務長官は12日午後、財務省内で会談し、ロシアによるウクライナ侵略が為替相場の変動を高めているとの認識を共有、為替を巡って緊密に協議することを再確認した。日米財務相による会談は4月以来。

会談後に発出した共同声明では、為替について「ロシアの侵略による経済的な影響が為替相場の変動を高めている」とし、「経済と金融の安定に対して悪影響を与え得る」と明記した。

主要7カ国(G7)や20カ国・地域(G20)による為替合意に沿って「引き続き、為替市場に関して緊密に協議し、為替の問題について適切に協力する」ことも確認した。鈴木財務相は為替について「日本の立場を説明し、それを(イエレン財務長官に)聞いていただいた」と、省内で記者団に述べた。

イエレン財務長官がこれにどう応じたかは言及しなかった。

市場では「声明を見る限りは従来通りの見解を繰り返している。(ロシアの記述は)現状と従来の認識を明確化しただけで、これで為替介入がやりやすくなったいう話でもない」(三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジスト)との見方が出ている。

共同声明では、国際社会を巡る情勢が歴史上、重要な転換局面にあるとの認識も示し「日本と米国は世界の2大民主経済大国として、力強く、強靭で、持続可能な経済成長の促進と、ルールに基づく世界経済秩序を強化していくことを決意する」とした。

2国間の結束をさらに強化することに合意し、声明では「国際社会が直面する困難な課題への対応において、両国が果たす極めて重要な役割を再確認した」と明記。食料やエネルギー、コモディティー価格の上昇に加え、食料不安を含め「世界・国内経済が直面する課題に対処する」とした。日米がウクライナの将来の復興を支援することにコミットする考えも共有した。

エネルギー市場へのアクセス維持を確保するため、適切な場合にはプライスキャップの実現可能性を含め、「エネルギー価格の上昇を抑制する方策を引き続き探求するG7の取り組みを歓迎する」ことも、声明に盛りこんだ。

中国、その他のパリクラブ(主要債権国会議)以外の債権者に対しては、債務危機に直面している低所得国の債務処理への「建設的」な協力を求めた。スリランカなどの脆弱な中所得国の債権者が公正に負担を分担するための調整が必要と強調した。

鈴木財務相はイエレン長官との会談に先立ち、「国際社会では困難な課題がたくさんある。日米が連携を密にしてそうした課題解決のため、中心的な役割を果たすことが重要」としていた。日米財務相が網羅的な共同文書を発出するのは珍しい。

米財務省によると、イエレン財務長官は12日に日銀の黒田東彦総裁とも会談した。