[ニューヨーク 29日 ロイター] - 米国で商品ボイコット(不買運動)が大きなうねりとなっている。オンライン融資市場を運営するレンディング・ツリーの最近の調査では、米消費者の4分の1が、過去に買ったことのある商品やその企業をボイコット中だ。

理由は政治信条の違いや社会問題に対する企業の姿勢、環境への影響を巡る懸念などさまざま。人々は声を上げるだけでなく、消費行動で抗議の姿勢を表明するようになった。

レンディング・ツリーの首席クレジットアナリスト、マット・シュルツ氏は「人々はここ数年、政治姿勢を行動に移すことに前向きになったため、ボイコットを行う人の数は多い。意見を聞き入れてもらうための有効な方法の1つがボイコットだ」と語った。

ボイコットは目新しい話ではない。実際、黒人男性ジョージ・フロイドさんが警官に殺害された後、2020年夏にレンディング・ツリーが実施した調査では、ボイコットを行っている人の割合が今よりさらに大きかった。

今年4月に2100人以上を対象に実施した最新調査では、何らかの商品あるいは企業をボイコットしている割合が最も高いのは年収が6桁台の消費者で、この層の37%がボイコット中だった。続いて10代後半から20代前半のZ世代(32%)、20代後半から40歳ぐらいまでのミレニアル世代(28%)の順となった。

これらの層は31%が民主党支持者で、24%が共和党支持者だ。

ボイコットは旅行先にも及んでいる。調査では、法的・政治的相違を理由に特定の州や国を旅行先から外している、と答えた割合が24%に達した。

非営利組織向けのブランディング代理店、ロージーの創業者であるエイドリアン・ライト最高経営責任者(CEO)は「これらの数字に意外性はない。人々は、どこでお金を使うべきで、どこで使うべきでないかを、より強く意識するようになっているからだ」と述べた。

「集会や行進も良いが、集会では望む結果は得られない。世界を前に進めるためには、いかに効果的にトラブルを起こすか、いかに創造的に戦術を進めるか考えなければならない」という。

例えば、トランプ前政権時には「グラッブ・ユア・ウォレット(財布をつかめ)」と銘打った活動組織が、ボイコットすべきトランプ氏関連の企業を一覧表にまとめた。「トランプ政権が女性、移民、非白人コミュニティを次々と標的にしたことへの抗議」が目的だった。

政治的に反対側の動きとして、ウォルト・ディズニーは最近、フロリダ州のいわゆる「ゲイと言ってはいけない」法案に反対したことでボイコットの呼びかけに遭った。

ウクライナに侵攻したロシアに関しては今、米イエール経営大学院のジェフリー・ソネンフェルド教授が、ロシアで操業を続けている米国内外の企業をリスト化している。

レンディング・ツリーの調査によると、ボイコットの理由としては当該企業の政治献金を挙げた人の割合が39%と最も大きく、次いで従業員の扱い(34%)、社会問題への姿勢(33%)、政治的立場(30%)の順となった。

<どこまでボイコットすべきか>

消費者にとっての難題は、買い物の際に政治・社会問題をどこまで判断材料とするかだ。1つの企業について賛成できない点が数多く存在する可能性もあるため、ショッピングモールやスーパーに行っても買える商品がなくて途方に暮れる、といった状況が容易に想定できる。

現実的には、日々関わるすべての企業の問題に常時目を光らせるには、ばく大な時間と努力を要する。何百種類もの商品を生産している多国籍企業をボイコットするのも、非常に難しい。

企業側は、八方ふさがりのように感じているかもしれない。政治的な態度を表明すれば一部の消費者は喜ぶが、別の消費者の怒りを買うかもしれない。態度を表明しない場合でも、全く同じ事が起こる可能性はある。

企業にとってさらにやっかいなのは、高収入層が最もボイコットを行う確率が高いことだ。レンディング・ツリーの調査によると、年収6桁台の消費者の77%が、自分と同じ政治的もしくは社会的信条を持つ企業の商品を買う確率が高いと答えている。

「これは大きい。企業は最も多く支出してくれる人々の声を聞く傾向があるからだ」とレンディング・ツリーのシュルツ氏は語った。

消費者は有効なボイコットを選ぶことが重要になる。ロージーのライトCEOは「われわれは皆、日々持ち上がるさまざまな問題に疲れ、圧倒されている。従って自分の心に響く身近な問題を1つか2つ選ぶよう勧めたい」と言う。

「全部を一度に行うことはできない。あなたの心を痛める問題は何なのか。それを考えた後に、日々接する商品とサービスを点検し、それらと問題との関係を見つめてみよう」とライト氏は話した。

(Chris Taylor記者)