(ブルームバーグ): 中国政府系の研究グループに所属するチーフエコノミストは、米国が対ロシア並みの制裁を中国に科すなら、半導体受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)を手中に収めるよう中国当局に提言した。

中国の経済政策全般の立案を担う国家発展改革委員会(発改委)が所管する中国国際経済交流センターの陳文玲チーフエコノミストは、「米国や西側が対ロシア制裁のように中国に対して破壊的制裁を発動するなら、われわれは台湾を取り戻さなければならない」と主張した。

陳氏は中国人民大学重陽金融研究院が主催した先月の講演で、「特に産業チェーンやサプライチェーンの再構築でわれわれはTSMCを手中に収めなければならない」と言明。TSMCについて「米国で6カ所の工場を建設するため現地への移転を加速させている」とし、「われわれはこうした移転の全目標を達成させてはならない」と続けた。

国家主義的傾向が強いニュースウェブサイト「観察者網」が7日に同氏の講演内容を掲載した。

今回のコメントは米中対立が激しくなる中で台湾の半導体産業が鍵を握る戦略的資産として中国にどう捉えられているかを示すもので、これまでで最も目立つ発言の1つだ。TSMCの顧客には米アップルなどが名を連ねる。

TSMCの担当者は陳氏の発言に関してコメントを控えた。TSMCが米国に6カ所の工場を設けるとメディアは報じているが、同社が公表しているのはこれまでのところ1カ所のみ。建設の可能性に向けて用地取得を強化している。

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、米国などが発動した厳しい経済制裁は対ロシアのみであり、陳氏が言及したシナリオがどのように現実になるのかは不明だ。中国は台湾を不可分の領土だと主張している。

原題:Top Economist Urges China to Seize TSMC If US Ramps Up Sanctions(抜粋)

©2022 Bloomberg L.P.