2022/6/16
【ビズリーチ直伝】企業が今すぐ実践すべき「採用力アップ」の3鉄則
NewsPicks Brand Design Editor
人材獲得競争が熾烈を極める中、「採用力の向上」が急務になっている。
いまや、どれほど大きな企業でも「待っているだけ」では、求める人材を満足に採用できない状況だ。
そこで求められるのが、企業が能動的に候補者にアプローチする「攻めの採用」。
ただ求人を出して応募を待つだけの「待ちの採用」ではなく、企業自らが候補者に対して「主体的に」アクションを起こし続ける必要がある。
では、具体的に何をすれば「採用力」を上げ、「攻めの採用」に転じることができるのか。
今回は、日本で初めて「ダイレクトリクルーティング」を提唱し、2009年から企業が候補者に直接スカウトを送れる採用プラットフォームを展開する、ビズリーチ代表取締役社長の多田洋祐氏を取材。
「攻めの採用」を知り尽くす同氏の詳細な解説とともに、採用力向上の極意をひもといていこう。
- 「企業の競争力=採用力」の時代がやってきた
- 鉄則①「口説きの面談」を活用せよ
- 鉄則② 採用は「確率論」で考えよ
- 鉄則③ 「トップ主導」で進めよ
- 採用力を強化しなければ、日本企業に未来はない
「企業の競争力=採用力」の時代がやってきた
そもそも、なぜ今「採用力の向上」が求められているのか。
その理由について、ビズリーチの代表取締役社長・多田洋祐氏は「産業構造の変化にある」と説明する。
あらゆる産業が成熟し、既存の産業の枠を超えたビジネス参入が増えてきている。
電気自動車市場の拡大を受け、IT事業を展開してきたグローバル企業が自動車製造に乗り出しているのはその好例だろう。
産業のライフサイクルが早まるなか、企業に求められるのは新たに参入する領域でもすぐに活躍できる人材の採用だ。
「ビジネスの幅を広げようと思った時、一番の近道はスキルを持った『即戦力人材』を業界の垣根を越えて起用することです。
ですが、もちろん異業種へのチャレンジはリスクも伴いますから、業界を超えて転職する人はそう多くありません。
さらに、採用競合も従来どおりとはいかず、IT企業や外資企業といった、さまざまな企業と競わなくてはいけなくなる。
そこで必要となるのが、『攻めの採用』。ただ応募を待つのではなく、『転職潜在層』を含めた候補者に、直接アプローチを行うのです。
私たちは、この『主体的な採用活動』をダイレクトリクルーティングと呼んでいます」(多田氏)
しかし、歴史ある大企業を中心に、こうした変化にうまく対応できていない企業がまだまだ多い。
その理由は、「新卒採用重視」の文化があったから。多くの日本企業は新卒一括採用で人材を採用し、ゆっくりと時間をかけて育成してきた。
既存事業の成長が目的ならば理にかなったシステムだが、今後はそうはいかないだろう。
「新卒採用マーケットではとても人気なのに、中途採用マーケットではまったくと言っていいほど知名度がない企業も存在します。
理由は単純で、中途採用に力を入れてこなかったから。
ですが、これからは新たな領域でどんどん事業を展開しなくてはなりませんし、そのためには中途での即戦力人材の採用が急務になります。
『企業にとっての競争力とは、すなわち採用力だ』と言っても過言ではありません」(多田氏)
だが、当然採用力は一朝一夕で高まるものではない。
一体、どうすれば採用力を高められるのか。10年以上前から「攻めの採用」の重要性を説き続けてきた多田氏によると、「3つの鉄則」があるという。一つずつ見ていこう。
「攻めの採用」を成功させる3つの鉄則
鉄則① 「口説きの面談」を活用せよ
鉄則② 採用は「確率論」で考えよ
鉄則③ 「トップ主導」で進めよ
鉄則①「口説きの面談」を活用せよ
1つ目のポイントは、「口説きの面談」だ。
まず、「攻めの採用」では、企業は候補者が「現時点では、自社に転職したいとは思っていないかもしれない」ことを前提にプロセスを設計しなければならない。
候補者は企業からのスカウトなどをきっかけに接触しているのであって、主体的に「応募」してきているわけではないからだ。
だからこそ、スカウトに応じる形で面談に参加してくれる候補者に、開口一番「志望動機を教えてください」と言うのはご法度。
そんなことは当たり前だ、と感じるかもしれないが、「スカウトに応じて面談に参加したのに、いきなり志望動機を聞かれた」という候補者は少なくないという。
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そこで多田氏が推奨するのは、まずは「面接」ではなく、「面談」を実施することだ。
「営業の場面でいきなり『うちのサービスを買いたい理由を教えてください』なんて言う人はいませんよね。
それと同じで、いきなり『面接』から入り、『選ぶ側』として候補者を評価するのではなく、対等な立場で自社をアピールしたり、お互いのニーズをすりあわせたりする『面談』を行うのが望ましい。
まずはリラックスしながら会話をし、『いいな』と思ってもらうのがスタートラインでしょう」(多田氏)
多田氏自身も、ビズリーチを使ってスカウトを送り、週に5人ほどの候補者と1時間の面談を実施しているが、冒頭の30分は必ず「自社のPR」にあてている。
まずは「口説き」、それから「お互いのニーズがマッチするかをすりあわせる」。
これが、「攻めの採用」の鉄則だ。
では、どうやって、入社意向がまだ高まっていない候補者を口説けばいいのか。
重要なのは、「一人ひとりの候補者に合わせた適切なストーリーを作ることだ」という。
「面談や面接を通して候補者に関する情報を集め、相手に『縁』を感じてもらうためのストーリーを構築するのが重要です。
面談の担当者は、次の接点では『誰の』『どんな話』を聞いてもらえば、意向が上がるのかを考え、次回の面談・面接担当者を決めていきます。
『入社意向が上がりきっていないのは、具体的な業務内容のイメージがついていないからかもしれない。であれば、次は○○さんに業務について詳しく話してもらおう』といった具合ですね」(多田氏)
ストーリーを構築する上で重要なのが「面談・面接担当者の役割分担」だ。
これは多田氏がビズリーチに参画した直後に考案したメソッドで、10年以上たった現在でもビズリーチ内やビズリーチの利用企業で活用されている。
具体的には、「フォロワー」「モチベーター」「インパクター」「クローザー」の4つの役割だ。
たとえば、採用の初期フェーズではフォロワーが候補者に寄り添い、「うちの社員と話してみてどうだった?」「次はどんな人と話をしてみたい?」とコミュニケーションを取る。
逆に、入社意志を固めていくフェーズではモチベーターやインパクターをアサインし、候補者の懸念点を一緒につぶしていく。
こうして、最初の面談から入社までのストーリーを構築しつつ、候補者のパーソナリティやキャリアイメージなどに応じて、適切な担当者をアサインする。
これが、「口説き」のポイントだ。
また、「4つの役割」を使い分け、入社意向を上げるためには、自社のメンバーのパーソナリティや得手不得手をしっかりと把握しておく必要がある。
誰が面談や面接を担当した場合、辞退率が低く、誰ならば高くなってしまうのか。
こうしたデータを把握し、役割分担を決めていくのも、採用担当者の役割だろう。
鉄則② 採用は「確率論」で考えよ
2つ目のポイントは、「採用を『確率論』で考えること」だ。「一人にリーチして、その人を採用するという『一本釣り』的な発想は捨てるべき」だと指摘する。
「営業活動の場合、商品を買ってもらうために1社にしかアタックしない、ということは絶対にあり得ませんよね。
複数の顧客に同時並行でアプローチするでしょうし、1件の契約を結ぶためには、何件のアプローチが必要かを考え、営業フェーズごとに数値やデータに基づいた戦略を立てる。これがセオリーです。
それなのに、こうした発想が採用になった途端できなくなってしまう企業がとても多い。
『いい人を採用したい』という大目的があるなら、採用も『確率論』で考えるべきです。
そうすれば、採用フェーズごとの目標数値を設定するのも至極自然だと気づくでしょう」(多田氏)
一般的に採用は「応募→書類選考→複数回の面接→内定通知」と、いくつかのフェーズを経て内定承諾というゴールに至る。
ならば、過去のデータから「何人に応募してほしければ、何人にスカウトメールを送ればいい」「何人の応募を獲得できれば、何人の内定者が生まれる」「何人の内定者がいれば、これくらいの内定承諾者が出る」などと数値ベースで算出し、その目標数値を達成するための行動を設計すべきだろう。
いわゆる「マーケティングファネル」的な考え方だ。
また、「目標設計は、職種ごとに行うべきだ」と多田氏。たとえば、営業職の応募から内定に至る確率と、エンジニア職ではその数値はもちろん違う。
だからこそ、過去の実績を踏まえて職種ごと、フェーズごとのコンバージョンレートを算出し、数値目標を立てるべきなのだ。
とはいえ、過去データが十分に溜まってない企業もあるだろう。そんな時に、参考となる指標がある。
「一次面接の参加から内定承諾に至る確率は、おおよそ10%と言われています。
だから、『採用したい人数×10』を1次面接に呼び込むことができれば、確率論的には目標を達成できるはずです。
『1分の1で狙った候補者を採用するのが、美学だ』なんて言っていたら、いつまで経っても採用はうまくいきません。
はじめから精緻な計画を立てるのは難しいかもしれませんが、徐々に『確率論』の考え方にシフトしていく必要があります」(多田氏)
鉄則③ 「トップ主導」で進めよ
そして最後のポイントが、「トップ主導」だ。
鉄則①、②の内容は、いずれも非常に重要。
だが、そもそもの「大前提」として、「組織のトップが採用にコミットしない限り、採用がうまくいくことはない」と多田氏は断言する。
「まずは、トップが採用に力を入れると決断し、大きなリソースを割かなければ企業の採用力は絶対に上がりません。
逆に、トップが採用にコミットしていない会社で、いい採用ができている会社は見たことがない。
トップが自ら号令をかけ、組織全体で採用改革を進めていかなければ、人事担当者がただ苦労するだけの『徒労プロジェクト』になってしまいます。
実際、誰もが知っているような大手企業で採用に成功している会社は、必ずといっていいほどトップが大号令をかけています」(多田氏)
ここでの「トップ」とは、経営陣だけではない。
組織を預かる「部門長」や「部署リーダー」などのコミットメントも不可欠な要素だ。
「言わずもがな、採用の責任は、人事部門だけではなく『会社全体』にあります。
事業を推進しているのは各事業ですし、その事業を伸ばすためのメンバーの採用であれば、現場が責任を持ってコミットすべきですよね。
もちろん、各事業部もそれぞれの業務がありますし、『忙しいのに採用まで責任を持てない』『採用は人事の仕事じゃないか』という声が上がるかもしれません。
だからこそ、部門長が『採用活動も、事業部の業務の一つ』という意識付けをし、自ら手を動かすことでその姿勢をメンバーに示す必要があります」(多田氏)
では、これまで採用や育成を担ってきた人事部門の役割はどうなるのか。
事業部に対し、「現場を採用に巻き込み、実行まで導く『プロジェクトマネジメント』に徹するべきです」と多田氏。
©️tadamichi
まずは、社内にあるすべての事業部の採用ニーズを把握し、どのチャネルでどれほどの候補者を集めるべきかを検討する。
その後、アクションプランを考案し、現場メンバーを巻き込んでいく。
こうした一連の流れにおける「司令塔」としての役割が要求されているのだ。
「『どんな人を採用すべきか』については、当然現場がよく知っているはずですから、事業部に求める人材の定義から入ってもらったほうがいいですし、スカウト送付や面談なども事業部と一緒に対応していくほうがいいですよね。
繰り返し『いい人は自分たちで採る』必要性を説き、事業部との協働を推進する。これが、今人事部門に求められる最も重要な機能です」(多田氏)
採用力を強化しなければ、日本企業に未来はない
社内でも活用しているメソッドすら惜しげもなく披露してくれた多田氏に、思わず「ここまで言ってしまっても大丈夫なのか」と尋ねた。
それでも、「少しでも多くの企業に採用力を高めてもらいたい」と応じる背景には、多田氏が抱く大きな危機感がある。
いわく「採用力を高めなければ、日本企業は滅んでしまう」。
「私がビズリーチに転じる前にヘッドハンターをしていた頃、外資系企業のリクルーターに『日本企業って“採用”をしていないんだね』と言われたことがあります。
そこで、『どの企業もたくさんの応募があるし、たくさんの人を採用していますよ』と答えたら、『それは、選んでいるだけだろう。採用というのは、“選ぶ”ではなく、“採る”と書くんだよ。選んでいるだけなら、それは“採用”ではないよ』と返されました。
『その通りだ』とハッとしましたね」(多田氏)
多田氏のエピソードが物語るように、日本企業の多くは「選ぶ」ことを採用だと考えてきた。
これまでは「待っている」だけでも必要な人材から応募があり、「選ぶだけでいい」マーケット環境だったからだ。
しかし、時代は変わった。
企業自らが動かなければ、優秀な人材を採用することはできず、「待ち、選ぶだけ」では、日本企業は衰退していくほかないのだ。
だからこそ、企業は採用力を強化しなければならない──それが、多田氏の信念だ。
そして、その信念はビズリーチが展開するさまざまなサービスにも色濃く反映されている。
2009年に産声を上げた「ビズリーチ」は、現在150万人以上のユーザー、累計1万9000社以上が利用する、日本最大級の採用プラットフォームに成長。
「攻めの採用」に特化したサービスとして、企業の採用成功にコミットし続けてきた。
サービスとしての使いやすさはもちろん、最大の特徴は1社に1人の専任コンサルタントが付くことにある。
「多くの企業が『攻めの採用』を成功させるためのノウハウを持っていません。
『ダイレクトリクルーティング』という言葉を生み出し、日本で最もその知見を持っている私たちの使命は、それを共有すること。
これからもコンサルタントたちによる伴走だけではなく、セミナーの開催などを通して、1社でも多くの企業をサポートし続け、『攻めの採用』を成功に導きたいと思っています」(多田氏)
もはや、採用マーケットにおいて横綱相撲を取れる企業は、一社もないと言っても過言ではない。
すべての企業が「採用力」を上げ続けなければならない時代に、ビズリーチが果たす役割は大きい。
構成:鷲尾諒太郎
デザイン:藤田倫央
撮影:小池彩子
編集:高橋智香、樫本倫子