[東京 28日 ロイター] - ANAホールディングスは28日、2023年3月期の連結純損益が210億円の黒字になる見通しと発表した。前期は新型コロナウイルス禍の影響で旅客需要が落ち込み、1436億円の赤字だった。今期は国内線を中心に旅客需要が回復するほか、国際貨物の好調も続くとみて、3年ぶりの黒字転換を見込む。

IBESがまとめたアナリスト11人のコンセンサス予想172億円の黒字も上回った。

芝田浩二社長は会見で、今期の命題は「単年度の黒字化達成」と説明。まん延防止等重点措置などが解除された時期には国内線の旅客需要が急回復しており、「コロナの状況が落ち着けば、需要は戻ると確信した」と述べた。今期予想は「保守的」だとし、海運の混雑・混乱が続く中、前期に過去最高だった国際貨物収入も「上振れ要素が十分ある」と語った。

売上高は前年比62.7%増の1兆6600億円、営業損益は500億円の黒字(前期は1731億円の赤字)をそれぞれ見込む。

旅客需要は、傘下の全日本空輸(全日空)の今期平均では国内線がコロナ前の80%に回復、国際線がコロナ前の35%を回復すると想定。全日空と格安航空会社ピーチ・アビエーション合計での国内線は今上期中に「ほぼコロナ前の水準に戻る」(柴田社長)とみており、国際線がコロナ前水準に戻るのは24年3月になるとの見方を示した。

国内線需要の見立てには政府の観光需要喚起策「GoToトラベル」の効果を織り込んでいない。前期は200億円程度を見込んでいたことから、「始まればその程度の規模感が期待できる」と述べた。商品やサービスの値上げが相次ぐ中でも「消費者の旅行に行きたい気持ちが高まっていることは間違いない」として需要回復に自信をみせた。

国際線需要も上振れ余地があるとみているが、「入国制限というバリアがあって数字が伸びない」と指摘。足元で進む円安も「訪日客には絶好のチャンス。我々のビジネスにもチャンス。現在の日本の入国制限1日1万人は非常にもったいない」と話し、入国時検査の緩和や撤廃、観光目的での入国許可など含め「スピード感を持って緩和を進めてもらうよう政府に要望したい」と述べた。

コスト削減については「この2年間で固定費2550億円、変動費700億円、合計3250億円を自助努力で削減した」と説明。固定費のうち1200億円は今期の事業規模回復に合わせて戻るが、「残る約1300億円の削減効果は今後も続く」とした。