2022/5/9

【人事必見】自律した社員を育てる花王グループカスタマーマーケティングの秘密

AlphaDrive/NewsPicks コンテンツエディター
多様で変化の激しい時代でも、成長し続け、新たな事業や変革を進められる人材を育てたい。
そんな思いから人材育成制度を刷新したのが花王グループカスタマーマーケティング(以下、KCMK)だ。
KCMKは、これまでの画一的な研修制度では、今後の時代を生き抜くリーダーを育成するのは難しいと判断した。
そして、Eラーニングを活用した新たな研修制度を構築している。
こうした制度変革の背景には、多くの企業が抱える課題、そしてそれを解決するための仕組みづくりがあった。
※KCMKの人材に対する考え方にならい「人財」と表記している箇所があります。
 人材育成の方針を大きく変えたKCMKが導入したのがEラーニング(動画学習)だ。
 Eラーニングはどこでも、誰でも学習できるというメリットがある一方で、導入したもののうまく活用できないケースも多い。
 KCMKがどのような工夫をしてEラーニングを活用しているのか、導入担当者に聞いた。

Eラーニングの先に作るべき「越境学習」

──新たなEラーニングを導入したとき、どのような懸念がありましたか。
佐賀 Eラーニングを導入する際、5つの懸念がありました。まずは会社から与えられた機会なので受講できる特別感がなく、学習が継続しないのではないかという点です。
 2つ目は、「どうぞ自由に学んでください」と機会を提供することが、かえって不自由になるのではないかという懸念でした。たくさんの動画があるがゆえに、何を視聴すれば良いのかわからなくなってしまうのではないかと思いました。
 3つ目は、動画を見るだけでは新しい刺激が少なく、変化や発展に欠けるのではないかという懸念です。
 4つ目はモチベーションの持続です。学習するペースや時間を個々の社員のマインドに任せたとき、1人で学び続ける気持ちを継続できるのかという不安がありました。そして最後は、動画を見て満足してしまい、思考や行動変容に繋げたり、仕事に生かしたりするまでの道筋を描けないのではないかという不安です。
──そうした懸念点と、どのように向き合ったのでしょうか。
佐賀 今までは、年代も地域も同じような人たちを対象に研修を行っていました。しかし、今受講している人たちは背景も環境もさまざまです。そうした人たちが受講者同士で繋がる仕組みを作り、新たな価値観を交換する場づくりをするよう工夫することにしました。
 部署や地域の境目を超えた「越境学習」が、多様な視点を身につける人材育成に大きな役割を果たしていると思います。
角田 そこでまず、受講対象者を挙手制で社内公募し、さらにその中から抽選で選びました。募集すると400人以上からの応募があり、その中から250人を抽選で選んで受講をスタートしています。
 受講者を抽選で選んだのは、与えられた機会ではなく、選ばれて受講できる特別感を感じてもらうことで、モチベーションの向上に繋げる狙いがあります。これまでは会社から指名したメンバーに研修を「受講してもらっていた」ので大きな変化ですよね。

チームで励まし合いながら学ぶ環境づくり

──受講者同士で繋がるのは、モチベーションの維持にも役立ちそうですね。
佐賀 そうですね。横の繋がりを作るために、Eラーニング単体ではなくTeamsを活用しました。Eラーニングで学んだことをTeamsのグループチャットで共有し、メンバーが反応していくという仕組みを作ったのです。
角田 チャットが機能しないのではないかという懸念もありました。意見を言いやすい環境を作るため、初めは事務局の私たちが投稿したり、投稿に対し反応したりしていました。ただ手をかけたのはそのときだけで、今では受講者同士が活発に意見を言い合う場ができています。
 250人の研修をするには、以前のやり方のままではかなりの手間がかかっていました。しかし、今では私1人で担当することができています。社員が自律的に学ぶ環境を整えることができれば、学びが自走していくと感じています
佐賀 インプットしただけではなく、自分がどう思うかアウトプットすることがとても大事だと思っています。
 弊社では「今月はこれを学ぶ」というテーマを決めています。そして定期的に少人数のオンラインミーティングを開き、学んだこと、気づいたこと、自分の意見などを共有する場を設けています。テーマを決めると参加者も飽きないし、お互いの意見や進捗を共有することで刺激し合える環境になっていると思います。
角田 そうですね。日頃の学習に加え、イベントも活用しています。社内の幹部や、外部講師が登壇するセミナーを開き、受講の意欲を高めています。Eラーニング導入にあたっては懸念もありましたが、複合的な対策を講じることによって社員が自ら学ぶ環境を作れていると感じます。

今の時代 人材育成にKPIは必要ない

──人材育成の仕組みを変えると、KPIを求められることが多いと思います。目標設定はどのようにしていますか。
佐賀 弊社ではKPIを定めていません。越境学習は、多様な考え方をお互いに認め合い、新たな刺激を得るためのものなので、答えがないんですよね。研修を経てどうするかではなく、何を学ぶことができるかが大事です。
 今は多様で変化が多いVUCAの時代と言われています。多様で変化が多いということは、答えが1つとは限らないということです。そのような環境で生き抜く人材を育てるのに、成果を数値化するのは難しい。KPIは必要ないと考えています。
──KPIを定めないと、上司を説得するのは難しいのではないですか。
佐賀 その辺りは、受講者の変化を幹部が社内で感じているので、問題ありません。仕事のやり方とか、仕事に向かう姿勢が良くなっているので、KPIを出さなくても納得してもらっています。
角田 最近では研修の枠におさまらず、受講者の皆さんが自分たちで勉強会を開いたり、セミナーに参加したりしています。社内にいると、受講者を中心に、自発的に学び仕事に向かう社員が増えていることを実感します。

変化の多い時代に対応する学び NewsPicks Learning

──Eラーニングを活用しているとのことでしたが、どんなパッケージを使っているのでしょうか。
角田 複数のプログラムを活用していますが、中でも変化の多い時代の学びに欠かせないと感じているのがNewsPicks Learningです。NewsPicks Learningは、マネジャーになる一歩手前の人を受講ターゲットに設定しています。基本的なことだけでなく、最新のトレンドを学ぶことができるので、社会の変化を捉えて自ら考えるリーダー育成に寄与すると考えています
NewsPicks Learningは、法人向け動画プラットフォームです。学び方を学ぶ「NewStudy」最先端キーワードを学ぶ「MOOC」専門性を磨く「プロフェッショナル対談」の3つの動画から構成されています。扱うテーマは、コーチングや心理的安全性などの次世代マネジメント、DXやSDGsなどのトレンドワード、そして営業ノウハウやテクノロジーなど多岐にわたります
佐賀 この時代、どの企業も変わらなくてはいけないと思っているはず。それでも、成功体験を捨てられなかったり、なかなか変わることができなかったりする企業は多いですよね。NewsPicks Learningで最新のトレンドを学び、さらに社員のアウトプットを助ける仕組みを作る。それが企業を変革していく人材育成に繋がると思っています。
 NewsPicks Learningは、今までの常識のみならず、ビジネスの最先端を最速で学ぶことができます。そして、実際にビジネスを牽引している当事者が登壇しているのも魅力です。より当事者意識を持って学び、学んだことをビジネスに生かすことができるコンテンツになっていると感じています。
──受講者を公募する際、どのようにメリットを提示して人を集めましたか。
角田 とにかく楽しく皆で学ぶイメージを伝えました。最先端のトレンドを学べるというNewsPicks Learningの特長を説明し、今まで知らなかったことを、チームで一緒に学ぼうと発信しました。
佐賀 そうですね。何時間も動画を見るようなものではなく、月に1時間くらい動画を見るだけだという手軽さも伝えました。そして、重要なのは知識を得るだけではなくて、横の繋がりを広げて発信することです。あえてハードな内容にせず、皆で繋がりながら楽しく取り組めるプログラムだということを伝えましたね。
──今回受講した人に留まらず、自ら学ぶ人が組織に増えていくといいですよね。
角田 はい。受講した人が周りの人に学習したことを伝えたり、今回受講していない人も含めたセミナーを開いたりすることで、社員の学びを拡張する施策に取り組んでいこうと思っています
 ただ、1つだけ意識しているのは、受講者たちが自ら学ぶ機会を作ったり、意見交換したりしているものに事務局ができるだけ関与しないことです。自分たちだけで学び続ける習慣を社員自ら作ることができれば、より学びは広がっていくと思います。
佐賀 受講した人が研修以外の場でも積極的に発信したり、社外の研修などに参加して越境学習に取り組んだりする例が出てきています。社内外での学びを持ち帰り、本業に生かしたり、新規事業を作ったりできるような仕組みを整備していきたいですね。
 そうして自ら学び、経験を深めていく社員が増えれば、その社員が伝道師となって、研修の意義がより具体的に伝わっていくのではないかと思っています。
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