[ニューヨーク 22日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は22日、コモディティー価格の高騰によりインフレ率の一時的な上昇が予想されるものの、日銀は現在の積極的な金融緩和を「粘り強く」継続すべきだと述べた。緩和の継続でコロナ禍からの景気回復を支え、賃金と物価がともに緩やかに上昇していく好循環の形成を促していくとした。

同総裁は米コロンビア大学での講演で、日本のインフレ率は短期的には上昇すると予想されるが、それは主にコストプッシュ型のため持続性に欠けると指摘。4月以降、一過性の要因からインフレ率は2%程度に加速する可能性があるものの、サービス価格の伸びが弱いため、物価上昇圧力は米国ほど広がっていないと述べた。

また、日本のインフレ期待はまだ適度に固定されているように見え、中長期的なインフレ期待が上昇する兆しはないとも指摘。米国で懸念されているような賃金と物価のスパイラル的な上昇が日本で起こるとは想定していないとした。

その上で「日本の需給ギャップはマイナスであり、安定的に2%の物価目標を達成するにはまだ長い道のりがある」とし、経済が過熱する懸念はないとも言及。「現在の状況における日銀の役割はイールドカーブ・コントロールを中心とした現在の金融緩和を粘り強く継続することであり、極めて明確だ」と言明した。

黒田総裁は、資源価格上昇を通じた交易利得の減少が、所得の減少を通じて国内需要に下押しの影響を与える点を強調。緩和的な金融環境の提供によって「新型コロナウイルス感染症の下押し圧力が残る日本経済の本格回復を後押しする」とした。

ただ、「現在の日本経済が、更なる追加緩和が必要なほど脆弱な状態にあるとも考えていない」と述べた。2008年にも資源価格が高騰する局面があったが「今次局面における日本経済の資源価格上昇に対する耐性は、2008年と比べれば強いのではないか」と指摘。その理由として、景気後退局面にあった08年当時より改善のモメンタムが比較的強いことや、コロナ禍の行動制約で積み上がった「強制貯蓄」、企業収益の改善、政府の原油高対策を挙げた。