[ワシントン 19日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミスト、ピエール・オリビエ・グランシャ氏は19日、ロイターのインタビューに応じ、ロシア経済はウクライナ侵攻に伴う一連の制裁で受けた打撃からすぐには立ち直らないとの見方を示した。制裁対象がエネルギー輸出まで拡大すれば、打撃はさらに大きくなる可能性があるとした。

グランシャ氏は西側諸国による制裁や禁輸措置でロシア経済は「極めて厳しい成長軌道」に置かれ、経済ショックの後によく見られるような回復を遂げる可能性は低くなっていると指摘。制裁は既に「かなりの規模」に上っているとした。

IMFはこれに先立って公表した世界経済見通しで、ロシアのウクライナ侵攻を理由に、今年の世界経済の成長率予測を1月時点の予測から0.8%ポイント下方修正した。ロシア経済は8.5%のマイナス成長に陥ると予想した。

グランシャ氏は見通し公表にあわせた会見で、対ロシア制裁が強化され、エネルギー輸出も制限されれば、ロシア経済は23年までに17%のマイナス成長に陥る可能性があると語った。

同氏はロイターのインタビューで、対ロシア制裁がエネルギーまで拡大され、取引相手国がわずかになれば、ロシア経済は事実上の専制主義に陥ると予想。中国やインドなどは西側諸国の対ロシア制裁に加わっていないが、こうした国でもロシアと貿易することで自らも制裁対象になる懸念が広がっていると語った。

グランシャ氏はまた、通貨ルーブルが回復しても、高インフレなどのロシア経済の状況に変わりはないとの見方を示した。一方で、ロシア金融当局は資本規制や利上げで取り付け騒ぎや銀行破綻、金融システムの崩壊をうまく回避しているとした。

今のところ、ロシアでエネルギーや食料品の値上がりに伴う社会不安の兆しは見られないが、IMFはインフレが起きている世界の他の地域では社会不安が増す恐れがあると以前から警告していると述べた。