[東京 30日 ロイター] - リーマン危機前後の2007年から2年間、財務官を務めた篠原尚之氏はロイターとのインタビューで、円安に伴う金融政策修正の可能性について「現時点で政策修正は難しいだろう」との見方を示した。円安是正に向けた為替介入に関しては「まったく意味がない」と語った。インタビューは29日に実施した。

<円安が続く可能性>

篠原氏は、原油高に伴う貿易赤字基調に加え、日米金利差の拡大や安全通貨として円が選好されにくくなる現状に「どこをみても円高になる要素がない」とし、今後も「傾向として円安が続く可能性がある」と述べた。

日銀が長期金利上昇を抑制する指し値オペを連発したことで「円安が進んでいる面がある」とも指摘し、「日銀のポジションは依然として『円安は望ましい』というもの。そうでなければあのような連続指し値(オペ)は打てない」と語った。

日銀が指し値オペを連発する背景に「今の円安を危険な水準とは思っていない」ことがあるとも指摘した。

<連鎖売りとは距離>

大企業や輸出企業などにメリットをもたらす円安が、消費者など多くの経済主体にとってマイナスの面がある構図は「今も昔も変わらない」とし、足元の為替水準を巡って「円安すぎるとか、円安を修正しないといけないとか、そういうことではないように思う」とも述べた。

現時点では、経常赤字と通貨売りが連鎖する「円安スパイラル」の状態には陥っていないとの認識も示し、「(足元の動きが)ものすごく速い円安とは思えない。通貨当局が慌てる必要はない」と指摘した。

悪い円安を誘発する前に「財政赤字解消への筋道をつけるべき」との選択肢も示した。

<介入効果を疑問視>

為替について29日の日米財務官協議で、日米の通貨当局間で緊密な意思疎通を図っていくことを確認したことについては「当局としてよく状況を見ていくというメッセージを出すためにやったのではないか」と指摘した。

一方、為替介入に関しては「米国と日本だけでできるわけではなく、他国とも調整が必要。円独歩安に各国が協調して対応しよう、という流れにならないと難しい」との認識を示し、仮に断行した場合でも「短期的な影響はあるかもしれないが永遠に続けられるわけもない」と、介入効果に疑問を呈した。

篠原氏は、退官後の10年からは国際通貨基金(IMF)の副専務理事を5年間務め、100年に1度とされる金融危機の事後処理を担った。

(木原麗花、日本語記事執筆:山口貴也)