2022/3/29

【濱口竜介監督】『ドライブ・マイ・カー』は、こう作られた

NewsPicks編集部
「三浦さん、取りました!」
濱口竜介監督(43)の『ドライブ・マイ・カー』が3月27日(日本時間28日)、第94回アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した。
オスカー像を受け取った濱口監督は、会場に同席した西島秀俊さんや霧島れいかさんら一人ひとりに感謝を伝えた上で、授賞式に参加できなかった三浦透子さんに興奮気味に報告した。
『ドライブ・マイ・カー』は、村上春樹さんの短編小説を原作とし、最愛の妻を亡くした主人公(西島秀俊さん)が、専属ドライバーの女性(三浦透子さん)との関わりから、人を愛する痛みと尊さを見つめ直す作品だ。
🎥『ドライブ・マイ・カー』
【公  開】
2021年
【ジャンル】ドラマ/ロードムービー
【キャスト】西島秀俊、三浦透子、霧島れいか、岡田将生、パク・ユリム、ジン・デヨン、ソニア・ユアン、安部聡子
【時  間】2時間59分
『ドライブ・マイ・カー』は、国際長編映画賞以外に、監督賞、作品賞、脚色賞にもノミネートされたが、他の受賞は逃した。
作品賞は、聴覚障害を抱える家族を支える少女を描く『コーダ あいのうた』が受賞した。
日本作品の国際長編映画賞受賞は、2009年に外国語映画賞(現・国際長編映画賞)に輝いた、滝田洋二郎監督の『おくりびと』以来。東アジア勢の作品としては、4作品目の快挙となった。
東アジア系の「国際長編映画賞」受賞作品
2022 🇯🇵『ドライブ・マイ・カー』
    (濱口 竜介)
2020 🇰🇷『パラサイト 半地下の家族』
    (ポン・ジュノ)
  ★作品賞、監督賞、脚本賞も同時受賞
2009 🇯🇵『おくりびと』
    滝田 洋二郎)
2001 🇹🇼『グリーン・デスティニー 』
    (アン・リー


(注)1999年まで「外国語映画賞」という名称だった
過去にアカデミー賞の国際長編映画賞(旧・外国語映画賞)にノミネートされた日本作品は、14作品目だった。
国際長編映画賞にノミネートされた日本作品
(⭐️は受賞)

2022年『ドライブ・マイ・カー』 ⭐️
2019万引き家族』是枝裕和
2009おくりびと』滝田洋二郎 ⭐️
2004たそがれ清兵衛』 山田洋次
1982泥の河』小栗康平
1981影武者』黒澤明
1976サンダカン八番娼館 望郷』熊井啓
1972どですかでん』黒澤明
1968智恵子抄』中村登
1966怪談』小林正樹
1965砂の女』勅使河原宏
1964古都』中村登
1962永遠の人』木下惠介
1957ビルマの竪琴』市川崑
『ドライブ・マイ・カー』は2022年1月、アカデミー賞の前哨戦である米ゴールデングローブ賞で、非英語映画賞に選ばれていた。邦画の同賞受賞は、1959年の市川昆監督『鍵』以来、62年ぶりだった。
(写真:ロイター/アフロ)
さらに、1月8日に発表された全米批評家協会賞では、『ドライブ・マイ・カー』が作品賞、監督賞、脚本賞、そして西島秀俊さんがアジア人初の主演男優賞と、主要4部門を受賞していた。
NewsPicks編集部は2021年12月に、濱口監督への独占インタビューを実施、掲載していた。
そこで、監督は、脚本をどう作っているのか、なぜ俳優の本読みを大事にしているのか、恩師・黒沢清監督から学んだことなどについて包み隠さずに語っていた。
特に、2021年のベルリン国際映画祭で最高賞に次ぐ銀熊賞に選ばれた、監督初の短編オムニバス『偶然と想像』が、『ドライブ・マイ・カー』に大いに影響していたと語っている点は興味深い示唆を与えてくれる。
今回、アカデミー賞を受賞したタイミングに濱口監督への独占インタビューを再掲載する。
INDEX
  • 脚本作りで重視していること
  • 俳優の「本読み」が大事な理由
  • 「どうやってこの作品が?」を作る
  • 「リアリズム」と「イリュージョン」
  • 『ドライブ・マイ・カー』への準備
  • 「偶然」をいかに起こすか

脚本作りで重視していること

──国際映画祭で受賞した作品において、共同脚本の『スパイの妻』も含めて、すべて脚本を手がけられています。脚本はどのように作っているのですか。
濱口 僕が脚本を書く時、最初に物語の構造を大まかに作ります。
特に大事にしているのは、それが基本的には現実離れしたものになるように、ということです。現実通りのものは面白くないからです。