株式会社ユーザベースは2022年3月25日に、第14回定時株主総会を開催しました。代表取締役Co-CEOの稲垣が議長を務め、すべての審議を終了いたしました。

本記事では株主の皆様からいただいた、総会での質疑応答およびパネルディスカッションについてリポートいたします。

(報告事項パートにつきましては、2021年通期決算の内容を中心にお伝えいたしました。決議事項の議案については招集通知をご参照ください)
稲垣 代表取締役の稲垣です。本日はお忙しい中ご参加いただきまして誠にありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。当社定款第13条により私が議長を務めさせていただきます。それではただ今より、株式会社ユーザベース第14回定時株主総会を開会いたします。
※登壇者は以下スライドの通りです(オンラインでの登壇者を含む)。なお、酒井は本株主総会をもって退任いたします。

稲垣より株主の皆様へ

稲垣 最初に株主の皆様へプレゼンテーションをさせていただければと思います。
稲垣 まずはじめにコロナウイルスで出席もかなり難しい状況の中で、集まってくださって本当にありがとうございます。またオンラインの皆様も、ご参加いただいて本当にありがとうございます。本日は総会としての話がもちろんメインではありつつも、直近の皆様のご関心として株価の問題があるかなと思っておりまして、私たちの方から今考えていること、思いを最初に伝えさせていただければと思っております。
稲垣 では、まず株価低迷という現状についてです。これについては本当に申し訳なく思っており、経営陣一同、重く受け止めております。ただ今こうやって集まっていただいていること自体が、この状況下の中でも弊社の可能性を信じて支えてくださっている証かと思っております。
そこに深く感謝をしておりますし、なんとか経営陣一同、この状況を打破するために尽力していきたいと思っております。原因から遡り、そこからどういう思いで今の状況を捉えていて、今後をどう変えて行きたいと思ってるのかをこれからお話しさせてください。
稲垣 事前にSharely(シェアリー)からご質問いただいております内容を先に掲載させていただきました。本来、後半の質疑応答にてお話しさせていただくものではありますが、これからお話しさせていただく内容が回答に該当するものがありましたので、先にご紹介をさせていただきます。内容としては2点あります。
「ウクライナ情勢のはるか前から株価が急激に低迷したのは現取締役の重大な責任だと考えます。このような状況にも関わらず、これまで何度も『投資家の理解を得たい』と繰り返し述べるに留まり、対策ができなかった稲垣-佐久間体制が続くことに落胆している株主は多いと思われますが、その認識や反省はあるのでしょうか。また、梅田氏を代表取締役に戻し、新たなる成長を描いてほしいと思いますが、実現可能でしょうか?」ということが1つ。
こちらとほぼ関連する内容として、「株価暴落について、以下の4点について回答を要求するとともに、早急な対策を講じることを強く要望する。暴落の要因は何か。これまで対策をどのように講じてきたか。全く改善しない点についてどう分析するか。今後、改善にあたり何を目標にどのような対策をするつもりなのか。」というご質問を頂いております。この2つに対しては、皆様からの貴重な意見としてしっかり受け止めなければいけないと思いますし、それに対する考えをしっかりと述べさせていただきます。
稲垣 まず株価低迷に至る要因ですね。これはもう先般お伝えさせていただいたところではあるんですけれども、全ての要因はQuartz事業の撤退にあると私は考えています。2018年に買収をしまして、そこからQuartz事業をしっかりと立ち上げて、アメリカで通用するメディア、経済情報プラットフォームを作っていくために、しっかりと時間をかけて2年間投資を行ってきました。
けれども、私たちの経営の能力の問題もあれば、コロナの影響を受けたこともあり、2年で撤退をする決断をいたしました。それに伴って改めて投資のポートフォリオを見直しております。次なる成長ドライバーを何にするのか、それを日本事業の再成長として定義し、今投資を振り分けて実行しております。
この意思決定が、Quartz事業の撤退から日本事業の再成長というところで、戦略の変更を大きく伴ったものでもありました。そこで出した損失をリカバリーしていくところで、これに今一定期間お時間をいただいてしまっているのが実態かと思います。
事業の再建というものはそんなに簡単でもないのが実情でして、それに向けて注力はしているものの、まだ完全には至っていないと思っています。ここでお時間をいただいていることが、株価低迷の全ての要因だと思っております。今この結果責任に関しては明確に、当時これを推進していた代表取締役である私と梅田にあったと思っています。これに対して深くお詫びをするとともに、責任の取り方を明確にして突き進んでいきたいと思っております。
当時アメリカに飛んで現場の最前線で責任を負ってくれていた梅田に関しては、本人の意思に基づき、CEOを退任しています。これはこれで、彼の責任の取り方なのかなと思います。私は当時日本事業を支える役割を果たしていた中で、今ここで退任するべきではないと判断して、責任の取り方として再成長にコミットすることを行っていくべきではないかと思い、留まって今コミットメントを明確にして経営をしております。
その時に、この正念場で佐久間が一緒に経営をしようと手を挙げてくれたことで、今彼と共同経営で突き進むことができています。日本事業の再成長に向けて、しっかりとコミットしていくことを一緒にやってもらっています。
稲垣 再成長として3つの観点で進めています。まず第1に主幹事業であるSPEEDAとNewsPicksへの再投資をしっかりやるところ。次に、もともとこれはQuartzと並行してやっていたものではあるのですが、次の成長ドライバーの種となっているAlphaDrive・FORCAS・MIMIRへの追加投資をしっかりかけていくところ。最後にこれらの事業基盤であるコーポレート・エンジニアリングへの再投資。この3つを大きく掲げてやってきています。
3点目に関しては決算説明会でも説明させていただいているように、しっかりと進捗しており、エンジニアの採用が進み、コーポレートの役員体制も強化されて、順調に進んでいると考えております。
稲垣 次に事業の方のところですね。まず大きくSPEEDAを筆頭としたSaaS事業と、NewsPicks事業に分けると、SaaS事業に関しては非常に堅調なところです。30%成長というものを明確に果たせていますし、いわゆるこのSaaS40──成長率+利益率の水準ですね。40%を超えていれば優秀なSaaS事業であるという、1つのグローバルの目安だと思うんですけれども、ここに関しても明確に超えることができています。なのでSaaSに関してはこの1年でかなり力強い進捗を示していると考えております。
稲垣 その中でもSPEEDAは佐久間を中心に再建してくれているんですが、佐久間がそこまでコミットしない中でも、 AlphaDrive・MIMIR・FORCAS・INITIALという4事業は、各事業のCEOたちが力強く立ち上がってくれていて、彼らの手によって明確に成長することができています。こういった新規事業をどんどん生み出す事は簡単なことではありません。
投資家の方々からも、「これだけ新規事業を立ち上げることができてるということは明確なチームの強さであり、カルチャーの強さによってなされているのではないか」というコメントをいただいています。チームの力が原動力となっていることは、明確に次の種になっていると思いますし、今のこの状況を打破することにおいて、すごく大きな可能性をもたらしてくれていると考えております。
稲垣 残る課題は明確でして、NewsPicksですね。ここだけがまだ成長が鈍化している状況で、佐久間との経営体制に変えてから、まだここは回復に至れていないというのが現状であります。
ここへのコミットをもう一段、もう二段としっかりと高めていくために、ユーザベースの共同経営とNewsPicksの経営体制を一貫させて、私と佐久間がNewsPicksのCo-CEOとしてコミットして再建していくことを今年は特に力を入れてやっていきたいと思います。これを達成することで、今期200億達成の壁を目指していきたいと思います。
稲垣 ユーザベース全体として掲げている30%成長に向けて、これをしっかり果たし、有言実行できれば株価は上がると信じています。ここに向けて私たちがチーム一丸となって進んでいきます。
稲垣 未来のチームを牽引するところで、このチームが今私はベストだと思っています。ですが、先ほどの梅田への言及についても、ご指摘としてしていただくことが過去にもありました。私自身、一緒にユーザベースを立ち上げた創業者として苦楽をともにしてきた梅田や新野のことは今でもとても信頼していますし、尊敬をしている経営者であります。今は本人の意思と体調の問題で2人が退任していますが、個人として「どこかで一緒に経営できたら」というセンチメンタルな思いはあります。
しかし、彼らが退任したのはもう過去の話であり、今1,000人を超える企業としてこの複雑な事業を経営できているのは私と佐久間と、先ほど名前が挙がったような事業のCEO、またそれを支えてくれているメンバーたちの力によって成し得ることができていると思うんですよね。
これは梅田や新野も経験したことがない、ユーザベースとしても未知の領域です。私としてはこれを実現できている、今のこの経営チームが過去最高のチームであると自負しております。このチームをもって今後も結果を出していくことができたらと思っております。
稲垣 改めて支えてくださってる株主の皆様へ、本当に今日も含めてこうやってご支援いただいていることに心からの感謝をしております。本日は個人投資家の方々に多くご参加いただく中で皆様とお話ができればと思っておりますが、普段はIR活動として機関投資家の方にお話ししていることを情報としてお伝えさせていただきます。いわゆる海外の投資家の皆様、バリュー投資家の皆様と多くお会いすることが多く、弊社の株をより購入いただけるように、新規開拓をCFOの千葉とともに進めております。
その中でも直近で大量保有なども出ていますけれども、やはり今の弊社のポテンシャルであれば、「もっといけるんじゃないか」というようなお声をいただくとともに、大型の購入をしていただいている方々も増えてきています。IR活動としては、ここを継続していくことが株価低迷を脱却していくためにも大切なのではないかと思っております。
本当に、今日ご参加いただいている方々もそうですし、普段のIR活動の中で、エールをいただいて購入し続けてくださっている機関投資家の方々にも本当に感謝をしております。本当に本当にありがとうございます。その思いにしっかりと向き合い、チーム一丸で結果を出していきますので、引き続き応援いただけますと幸いです。
稲垣 私たちは創業当時から、自分たちのミッションと共にユーザベースに関わってくださったステークホルダーの皆様を少しでも幸せにしていくことを掲げています。そこは一貫してブレずにここまで掲げてきており、引き続きこの思いを忘れずに突き進みたいと思っています。ただ、今の状況として、それができていないというお言葉も十分に認識しております。本当にここに関しては申し訳なく、しっかり努力していきたいと思っております。
稲垣 このプレゼンテーションを最後として、私から一方的に話すというのも良くないかなと思いまして、私たちをガバナンスの観点からしっかり監督してくれている取締役会の方々の見方をお伝えできればと思っています。社外取締役を代表して平野よりコメントをいたします。本当に率直に私たちの今の状況を、赤裸々にコメントしてください。お願いできますでしょうか。
平野 社外役員の平野でございます。まず当社の取締役会の構成について申し上げます。当社の取締役会は梅田さんを含めて社内のメンバーが4名、そして社外のメンバーが5名ということで、強く独立したガバナンスが効く体制にあります。
そういう中において必要があれば、経営施策・経営陣・パフォーマンスを見ながら果断な意思決定をするという体制・準備ができていることを最初に申し上げたいと思います。株価の低迷につきましては、社外役員のメンバーを含めて非常に深刻に受け止め、より責任を痛感しているという事態であります。
経営政策それ自体は、執行側が策定しそれを運営していく立場ですけども、我々社外役員の立場から、その政策の妥当性・有効性というのを、株主価値向上という観点から厳しく毎回審議をして進めているところであります。
今、当面のところは、先ほど稲垣CEOからもご説明があった、中期の成長戦略をしっかり進めていくということで、SaaS事業の一層の伸長、それからNewsPicks事業のテコ入れということで、もう具体策はできていると我々は認識をしております。これをしっかり結果をデリバーするというステージに今いると考えております。
その中におきまして、2人のトップですね。稲垣CEOと佐久間CEOは、それぞれ分担し、特に力を入れなければいけないNewsPicksに関しては、2人とも深いコミットをして、リーダーシップを発揮していると評価をしております。従いまして、この役員会におきましては、今掲げているこの施策がしっかり成果を生んでいくところを、単にモニターをしていくだけではなく、後ろ支えをし一丸となって結果をデリバーするということに努めていきたいと思っております。引き続きご支援を賜ればと思います。よろしくお願いいたします。
稲垣 平野さんありがとうございました。プレゼンテーションに関しては以上となります。

決議事項

稲垣 続きまして、決議事項をご説明します。
(第1号議案から第3号議案については、招集通知記載の通りのため、本採録では記載を省略)
稲垣 第4号議案から第9号議案に関連して、株式報酬制度導入の背景についてご説明をさせてください。
※他議案については、招集通知の通りのため割愛いたします。
稲垣 こちらの資料は、決算説明会資料でお見せした内容の再掲になります。改めて背景をお伝えしますと、株式報酬制度導入の目的は弊社の成長と最前線で張ってくれているリーダーや役員メンバーたちの、個人の幸せのインセンティブをしっかり合わせる制度を作ることです。現メンバーたちにも報い、しっかりと長く勤める環境を作るとともに、新しい優秀な人材にも魅力的な環境となれるように、本件は提案をしております。
1つの背景として、直近の日本の競争環境の状況があります。現状採用活動をしていても、条件面が大きくネックになるケースはほとんどないのですが、唯一アーリーステージのベンチャーとの条件の比較の際に問題になることがあります。今のベンチャー市場は調達環境が非常に良くなっていることで、自分たちの創業期には考えられなかったくらいのオファー条件が出てきます。かなりの金額が投じられ、高水準の給与+ストックオプションになります。
もちろん意義や、やりがいといった面でもしっかり負けない会社を作っていくことが大前提ではありますが、条件面で競り負けない、継続性のあって競争力高い報酬制度を作るために、こういった株式報酬制度の設計を進めていきたいと思っております。
そういった思いでやっておりますので、何卒ご理解いただければと思っております。制度の詳細については改めて、担当役員である松井よりご説明いたします。
松井 それでは、株式報酬制度の詳細につきまして、私から説明させていただきます。まず今回の議案ですが大きく分けると3つのポイントがございます。
1つ目は、株式報酬制度導入に際しまして、取締役の金銭報酬の枠の設定を減少させていただければと思います。
2つ目は、事後交付による株式報酬制度、通称RSUと言われるものになりますが、RSUに係る報酬等の額の設定をさせていただくものになります。
3つ目は、ストックオプションとしての新株予約権に関する報酬等の額、および具体的な内容決定に関するものとなります。より具体的な報酬額の設定に関して、次のスライドにてご説明させていただきます。
松井 現行では、監査等委員である取締役を除く、取締役の金銭報酬額として10億円以内、監査等委員取締役の金銭報酬額として1億円以内の設定をさせていただいております。
今回、株式報酬制度の導入にあたり、総額の報酬額の変更をせずに、報酬の種類別の内訳の設定をさせていただく形になります。金銭報酬、RSU、ストックオプションのそれぞれの報酬枠の設定についてご承認いただければと思います。金額の詳細については、お手元の招集通知および、投影しておりますスライドをご確認ください。
松井 次に、より具体的な報酬制度の内容についてご説明させていただきます。なお取締役の個人別報酬については、先ほどご挨拶させていただきました平野社外取締役を委員長とする任意の指名報酬委員会において、その決定プロセス、内容、金額の全てについて事前審議された上で、取締役会の承認を経て決定されております(注:監査等委員取締役に関しては監査等委員会にて承認)。
まず業務執行を担う常勤取締役の報酬についてですが、管掌範囲、職責、能力等を踏まえて、5段階の役員のグレードを設けております。
報酬等総額は、該当グレードにおいて定められた上限額および下限額の範囲内において、前年度業績、当年度のコミットメントに連動して決まります。上位のグレードほど報酬等総額に占める株式報酬の割合が高くなるように設計しております。
例えば2022年度におきましては、代表取締役CEOで報酬額の50%、その他の取締役については30%が株式報酬の形で支払われることを想定しております。
取締役は、報酬等総額に占める株式報酬割合において、RSUとストックオプションの比率を任意に選択することができます。
松井 次に、社外取締役の報酬について説明させていただきます。社外取締役については、業績連動なしの固定額を報酬等総額としております。
社外取締役についても、株主の皆様と目線を共有させていただき、中長期的な企業価値向上にガバナンスの観点から寄与することを目的として、株式報酬制度の導入を提案させていただいております。
報酬等総額の70%が金銭報酬、30%を株式報酬とすることを原則としております。
なお、常勤業務執行取締役、社外取締役ともに、株式報酬の種類としてはRSUとストックオプションとなっており、いずれも継続勤務を条件として、1年間で権利が確定します。
私からのご説明は以上となります。

質疑

稲垣 それでは質疑応答の時間とさせていただきます。オンライン出席の株主様は質問タグよりご投稿ください。会場にお越しの皆様は挙手をお願いします。ご質問の内容に応じて、私を含め担当役員から回答いたします。まず、前日までにいただいたご質問から先に回答させていただければと思います。

事前質問への回答

稲垣 1つ目の質問は先ほど私の方でプレゼンテーションを通してお答えしたと思っております。この次の2つ目の質問の前半も先ほどと同じ内容になりますので、ここまでは既に回答したと思っております。
稲垣 後半の質問について回答させていただきます。「炎上広告について以下の2点について質問する。2度にわたり広告が激しい批判にさらされたことは、今振り返って何が原因だったと考えているか。炎上商法をねらったのか。情報企業が世論をつかめていないのは致命傷だと思うが、これについて何か改善したことがあるのか」というところで、ここは私からご回答を差し上げます。
まず、炎上を狙ったということはありません。ただこういった世の中に何かを問いかけるような人の心を動かすインパクトのあるメッセージの広告を出していくときに、賛否が出ること自体はしっかり反応があった証明ですし、良いことだと思っています。そこに課題があるから人それぞれの考え方によって賛否が生じる。これはNewsPicksの切り込んだ記事やコメント欄においても同じであり、そこに賛否があるから様々な視点で学ぶことができるし、議論が生じて未来に発展していく価値を生み出すことができると考えています。
「過去2回」とご質問に書いていただいていましたが、1回目に関しては私たちが意図した形での伝わり方をして賛否が起きたと思っています。ただ直近でご指摘をいただいているAlphaDrive/NewsPicksの件に関しましては、明確に意図しない形で賛否が起きてしまいました。大きな反省でした。結果として炎上に発展してしまったとも認識しております。
ご指摘の通り、世の中の反応をしっかり読みきれていなかったことをとても反省しておりますし、メッセージによって辛い感情を抱かせてしまった方がいらっしゃることも事実だと思います。そこに対してはしっかりと謝罪をし、真摯に受け止め、同じことが起きないようにしていきたいと思っております。
再発防止に関しましては、本件は取締役会でもしっかりと議論をしました。具体的な措置としましては、弊社にいる多様性のあるメンバーたち──広報や法務の異なる観点も含めて、様々な視点で今後意見を出し合って、ちゃんと世の中に出る前にチェックをかけていく仕組みですね。ここを作っていくことが何より大切だと思っております。
仕組みをしっかりと構築したことで、判断の精度は向上したと思っております。この再発防止をしっかりと引き続き続けていくことができればと思っております。
稲垣 もう1つ質問をいただいておりましたので、こちらについても読み上げさせていただきます。「社外取締役の方もピッカーになっており、梅田氏が始められたニューズピックス事業について質問です。SaaS事業への顧客獲得として重要であるとの理解ですが、顧客獲得のために必要な質よりも量を重視しているように見えます。
佐々木元編集長が同様のサービス開始など競争環境が激化する中、昨年からコメント欄など外部から指摘されている広告の炎上、4月から強化される個人情報保護法違反への対策、ステルスマーケティングと認識される記事への対応について、顕著な改善は外部からは見えず第三者委員会などの抜本的な対策を取らない理由はあるのでしょうか?」というようなご質問をいただいております。こちらについては佐久間よりご回答させていただきます。
佐久間 NewsPicks事業の質問に関して、私から回答差し上げます。当然NewsPicksに関して、いろんなユーザー様からご支持を得ていくためには、コンテンツのクオリティというものは最も重要であると考えております。実際今、ウクライナの情勢の元でもその複雑な環境・歴史等を正しく理解できる質の高いコンテンツを日々出せています。
質が高いコンテンツを継続的に出せることには非常に誇りを持っておりまして、「質を重視している」ということをはっきり申し上げられるとに考えております。広告の炎上の件に関しましては、先ほど稲垣からご説明させていただきましたので、割愛させていただきます。
改正個人情報保護法への対策に関しては、NewsPicksもそうなんですけれども、どちらかというとSaaS事業の方が影響が大きい分野でして。例えばエキスパートリサーチ事業、我々は人の知見そのものを取り扱っております。なので1年以上前から、法改正に向けてしっかり社内で協議し、関係各所への折衝も含め進めておりましたので、しっかりとした対策ができていると言えると思います。
次のご質問、ステルスマーケティングと認識される記事への対応。これはご質問の意図として、NewsPicksは外部の記事を投稿できるプラットフォームですので、そこにステルスマーケティングのような記事が投稿されるという主旨でのご質問との認識でお答えさせていただきます。
そのような不適切なコンテンツの記事に関して、速やかな削除を行っておりまして、しっかり対応できているかと思います。また、NewsPicksのBrand Design Team(NewsPicksの広告部署)は、他社の広告記事を制作して掲載するということをやっております。そこはしっかりスポンサー表記をしておりますので、問題はないと考えております。

当日質問への回答

稲垣 では次に、ご参加の皆様の質問をお受けいたします。会場でご発言を希望される株主様は手を挙げ、事務局の案内に従い指定の場所までお越しください。なお、質問者の顔が画面上に映らないようにオンライン配信をいたしますので、そちらの方に移ってお話しいただければと思います。個人情報保護の観点から、名前はおっしゃらないようにお願いいたします。会場の株主様は、ご意見があれば挙手をお願いいたします。先にオンラインの方でご質問いただいてますので、そちらからご回答させていただきます。
司会 質問にまいります。「株価についてご説明がありましたが、株価回復・向上はどれほどの期間を要すると現時点で考えていますか」。
稲垣 こちらはIRで一番機関投資家にも接してくれている千葉より回答申し上げます。
千葉 千葉でございます。私から回答させていただきます。具体的な時期についてはなんとも申し上げにくいところです。けれども、我々としては早期に回復させていきたいと思っています。今期に関しまして、NewsPicksのマーケティングの施策ですとか、SaaS事業が基本的にはクオーターを追うごとに勢いを増していくということを考えますと、年末に向けて徐々に我々の業績や継続的な成長蓋然性を示し、株価の回復を目指し、投資家とのリレーションを強化していきたいと考えています。
稲垣 こちらに関してはいろいろな情勢もありますので、まだ確かなことはどうしても言えないところはあります。事業として結果を出していくところ、そこは私たちの努力でできる部分が多分にあると思っていますので、しっかりとここからもチーム一丸で進んでいきたいと思っております。
司会 続いての質問です。「事業報告にSaaS事業とNewsPicks事業、今後御社の利益率に寄与すると想定する割合を教えてください。また、NewsPicks事業に近いコンテンツは、競合他社も多いですが、差別化・品質でどのような方針がありますか」。
稲垣 これについては担当している佐久間より回答申し上げます。
佐久間 ご質問ありがとうございます。具体的な利益率の割合というのはお答えしかねるんですけれども、SaaS事業に関しましては長期戦略説明会のときにポートフォリオマネジメント方針をご説明させていただいております。そこで収益率等、成長率のトレードオフをしっかりマネジメントしていくと。
具体的には売上高成長率が、40%を下回る場合、利益率を高めていくという方針を持っております。実際SPEEDAは30%を超えるEBITDAマージン、高い収益性を持っております。逆に50%を超えるような高い売上高成長が見込める場合に関しては、赤字をしっかりコントロールしつつも、投資していく方針を持っております。
NewsPicksに関しましては、今年投資をして拡大していく。ただこれは段階投資であって、しっかり四半期ごとに取締役会とも連携して、マイルストーンを設定し、それがクリアできたタイミングで次の投資をしていきます。その投資がすべて成功裡に進んだ場合に関してはNewsPicks単体での今年の赤字はあり得ます。ただ来年には必ず黒字化し、NewsPicks事業内で投資を回していくということを想定しております。全体として2025年にEBITDAマージン15%という基準を掲げております。
NewsPicksのコンテンツにおける差別化の部分。先ほど株式報酬の話もありましたけれども、やはり最高のタレントを集めて、最高のタレントの創造性が最大限に発揮される自由な環境を作っていくこと。それがまず1つだと考えております。実際、NewsPicksには最高のメンバーが集まり、先ほどお話ししたような、質が高いコンテンツを日々作り出してくれています。
ただもちろんそれだけではなく、構造的に競争障壁をしっかり作らないといけない。そこはやはり人の知見の循環です。NewsPicksにおける個人が発信するコメントの価値をしっかり強化していく。
NewsPicksの最大の価値の1つはコメントであり、これをエキスパートリサーチ事業に紐づく形で、持続的にコメントの価値が広がっていく世界を作り、人の知見の循環の流れをつくっていく。これはNewsPicksのユーザーの方にとっても大きな価値になる。我々にとって「人の知見を循環させる」というマテリアリティの達成にもつながっていくと考えております。
稲垣 他にご質問ございますでしょうか? ご質問は無いようですので以上とさせていただきます。それでは議案の採決に移らせていただきます。
(この後、議案の採決が行われ、全ての議案が承認可決されました)
稲垣 これで第14回定時株主総会を閉会いたします。ご参加いただきまして誠にありがとうございました。この後、新役員である井川 沙紀よりご挨拶をさせていただき、その後10分の休憩を挟んでパネルディスカッションを開会いたします。

新任役員のご挨拶

稲垣 それでは新たに選任いただきました、井川よりご挨拶をさせていただきます。
井川 この度、社外取締役を拝命いたしました井川と申します。ユーザベース社が掲げるパーパス実現のために、自身のこれまでの海外企業での経営経験、また事業のブランディング・PRの経験を生かし、社外取締役として持続的な事業成長に貢献できるよう尽力してまいります。また、客観的な立場でコーポレートガバナンスの強化にも貢献し、株主様と経営陣の橋渡しになっていく所存でございます。これからどうぞよろしくお願い申し上げます。
稲垣 井川さん、ありがとうございました。引き続き、パネルディスカッションを開催しますので、お時間の許す方はそちらもぜひご参加・ご視聴をしていただければと思います。それではありがとうございました。

パネルディスカッション

松井 皆様こんばんは、取締役の松井しのぶです。改めまして本日はお忙しい中、当社の株主総会にご出席いただきまして誠にありがとうございます。
毎年恒例となっておりますが、今回も総会の第2部としてパネルディスカッションを開催させていただきたく存じますので、よろしくお願いいたします。
パネルの内容についてのご質問につきましては、Sli.doという質疑応答サービスをご用意しておりますので、そちらからご質問を受け付けております。Sharely上にもURLをご案内しておりますので、そちらよりアクセスいただき、ご質問をいただけますと幸いです。
さて、株主総会において、稲垣からもお伝えさせていただきましたが、当社は創業時から現在においてチーム経営をしてまいりました。
稲垣・梅田・新野の3人でユーザベースを立ち上げ、チーム経営の強いDNAを作ってまいりました。現在当社には9つの事業がありますが、それぞれのリーダーがチーム経営を引き継ぎ、梅田・新野も経験したことがない1,000人規模の組織運営と9つの多様な事業を、意思を持って推進しています。
松井 昨年12月にグループ執行役員制度を導入し、13名のグループ執行役員がおりますので、簡単にご紹介をさせていただきます。
まず代表取締役CEOの稲垣、そして同じくCEOの佐久間、そして私、松井が取締役の3名になります。それから各事業を預からせていただいているCEOをご紹介いたします。
まず、本日も出席しております、AlphaDriveのCEOである麻生要一になります。2019年にAlphaDriveが、M&Aによりユーザベースのグループ入りをして以来、AlphaDrive事業を力強く牽引しています。
次に同じく本日出席しておりますMIMIR代表取締役CEOの川口荘史になります。MIMIRも2020年にM&Aによりユーザベースグループ入りしております。
続きまして、NewsPicks執行役員 新規事業担当の坂本大典、そしてFORCAS事業はここにおります佐久間が立ち上げた事業なんですが、佐久間からFORCAS事業を引き継ぎまして、今力強く経営しております田口槙吾。
SPEEDA事業のCLO(Chief Legal Officer)をしております武田彩佳、それから現在スリランカの地からSPEEDA EDGEという新しく米国展開している事業のCCO (Chief Content Officer)として活躍しておりますMifnaz Jawahar。
次にコーポレートサイドのグループ執行役員のご紹介をさせていただきます。 事業開発担当の太田智之、それから経営基盤担当の張替誠司、そして先ほど株主総会にも出席させていただいておりましたCFOの千葉大輔。
最後がカルチャー(人事)を担当しております村樫祐美。以上13名で、今年度ユーザベースグループ全体の経営をしております。よろしくお願いいたします。
ではモデレーターの琴坂さんにバトンタッチしたいと思います。よろしくお願いします。
琴坂 よろしくお願いします。本日は株主の皆様、ご出席いただきまして誠にありがとうございます。社外取締役の琴坂です。
私、新野さんと梅田さんが共同経営をされていた頃からいるんですが、当時と比較して、拡充・進化したチーム経営というものを今日は感じていただければと思っております。
今、松井取締役からご紹介のあった、経営者の皆さん1人ひとりが、もう武将。1つの企業をトップとして率いていけるような方々なのではないかと個人的に思っております。今日はその中から3名の方々に来ていただいて、その方々との対話を通じながら、皆様にユーザベースの今の姿──多様性の中で、またイノベーションを牽引していくユーザベースの姿を感じていただければと思っております。
まず事業と自己紹介を簡単にしていくところから始めていきます。まずAlphaDriveの麻生さんから、簡単に自己紹介と事業に関してお話いただくところからスタートできればと思います。麻生さん、お願いいたします。

事業紹介・今後の展望

麻生 皆様、初めまして。株主の皆様の前でご挨拶させていただけることを、心から嬉しく思っております。麻生要一でございます。現在AlphaDrive/NewsPicksというカンパニーのCEOを担当させていただいております。AlphaDrive/NewsPicksというのは、その名の通り、生まれが異なる2つの事業を統合した統合カンパニーとして、現在ユーザベースグループの中で運営している事業体です。
AlphaDriveという新規事業開発支援を行う会社を、2018年に独立した会社として創業いたしました。それを2019年11月にユーザベースグループに買収していただいて、M&Aされてグループ入りしました。グループ入り後に、NewsPicksをメディア事業ではなくソリューション事業としてB2Bに販売していく、NewsPicksの法人向けの事業部門であるNewsPicks for Businessと新規事業開発会社のAlphaDriveを足して運営している統合カンパニーです。
事業内容は、「企業変革を推進する変革ドライブカンパニー」と言っております。何をやっているかというとB2B事業です。大企業ですとトヨタ自動車様を筆頭に、中小企業ですと高知県にAlphaDrive高知という子会社があるので、高知県の受託でやっているような小さな中小企業の経営者まで。大きい会社から小さい会社まで全てを対象にして、企業変革を行う支援をしているというのが我々のやっている事業です。
企業変革というのは、どういうことか。日本企業に元気になってもらいたいんですね。元気にというのは、経営者の方もそうなんですけど、日本企業の中で働いている、いわゆるビジネスパーソンの方たち1人ひとりになってもらいたい。
会社から言われたことを、「本当はやりたくない仕事なのに」と言ってやっている方もいらっしゃるかもしれません。でも、そういうことではなく自分が所属している会社の未来を作りながら、自分自身の人生も切り開いていくこと。目を輝かせて働けるような環境を1社1社の中に装着するということが、僕たちがやってる事業内容です。
これによって、企業の中で働く人たちの目を輝かせ、輝いた目で何かをするときのスキルや能力を装着する人材育成を行い、そして育成された能力を活用して新しい事業を生み出す。イノベーションを生み出して、その企業の価値を上げて、その企業にとっての新しい事業をつくっていく。
かっこいい言葉で言うと、イノベーションマネジメントプラットフォームという事業内容ですね。様々な複合ソリューションを用いながら、1社1社に向き合っているようなカンパニーを担当させていただいています。よろしくお願いします。
琴坂 ありがとうございます。麻生さんは、どんなところにユーザベースの可能性を感じてグループにジョインされたのか、またこのAlphaDriveという事業体が、どのようにユーザベースの全体の事業ポートフォリオに貢献していくかを教えていただいてもよろしいですか。
麻生 はい。まず、なぜユーザベースグループ入りしたのかという観点からお話ししますと、起業家になる前に、私は株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)で働いていました。リクルートが上場した後、リクルートホールディングスの最初の新規事業開発室長でした。新規事業開発担当の経営幹部をやった後に起業家になったという生まれの人間です。
自分自身で創業した会社もそうですし、当時から様々な新規事業を生み出し、様々なスタートアップ企業とのお付き合いがあったので、比較的いろいろな会社の経営者の方と近しくお話しするような環境下にいました。たくさんの会社を見た中で、ユーザベースの梅田さんのことも昔からよく知っていました。数多くの企業を見た中で、ユーザベース だけは、この会社だけは自分には絶対に作れないなと思ったんですよね。凄まじいなと。
もちろん自分で作った会社を大きくして、ユーザベースに勝る企業を作っていくこともありえたとは思います。でもいろいろなお話をする中で、AlphaDriveという会社が最も伸びる経営環境は、ユーザベースグループ入りした中でこそ、作られるのではないかと感じて、参加したというのが背景です。
琴坂 ありがとうございます。AlphaDriveの成長が全体のグループに貢献していくという形で正しいですか?
麻生 そうですね。何よりも業績を上げることによって、全体に貢献していきたいと思っています。
琴坂 ありがとうございました。
琴坂 では次に、MIMIRの川口さんお願いいたします。
川口 はい。皆さん初めまして。MIMIRの川口と申します。よろしくお願いいたします。最初に簡単に自己紹介からさせていただければと思います。
私の経歴は、元々バイオ系の研究を経て金融でM&Aに関わり、その後は事業開発やスタートアップ事業の特にHR領域を見てきました。その後MIMIRを2017年に創業して、2020年にMIMIRはユーザベースの完全子会社になっています。
このように私の興味関心としては「知見の循環」、「M&Aや新規事業における企業の意思決定」、「人材の流動性」といったテーマになりますね。知見の流動性を生み出しそれを意思決定に活用されていくということで、エキスパートネットワークビジネスを始めました。
川口 MIMIR自体は、「経験値に価値を与える」というミッションのもとやっています。これはまさに、ユーザベースと一緒に実現できることが非常に多いなと思っているんです。ちゃんとナレッジに価値を与え、その流通化を図っていくことがねらいです。
川口 このスライドは、我々のエキスパートネットワーク事業を、ユーザベースの事業と絡めつつ、可視化したものになります。エキスパートネットワーク自体は、実はSPEEDAとNewsPicksの間にあるような事業だと考えています。現在は、特にSPEEDAとの連携が非常に高まっています。
人の知見を扱うエキスパートネットワーク事業は、グローバルでも非常に成長していると言われるマーケットです。インタビューの対象者となるエキスパート、専門家の方をネットワーク化して、インタビューでの情報提供をするのがメインの事業になっています。我々はそのサービスをSPEEDAという経済情報プラットフォームと連携させて、FLASH Opinionという専門家の知見やインタビュー情報を提供する、新しいサービスを行っています。
このようにエキスパートネットワークと情報プラットフォームが融合した姿というのは、エキスパートネットワーク業界においても、企業が活用する情報プラットフォームの世界においても、一歩先を行っている目指すべき姿だと捉えられているのではないかと思っています。そういうところを目指して、我々は創業初期からユーザベースとは一定の関係性がありましたが、2020年からは一体となって事業を開発しています。
同様にNewsPicksとMIMIRの連携についても、NewsPicks Expertというブランドを昨年ローンチしています。これはエキスパートネットワークを扱うNewsPicksのブランドですね。
中長期で見たときに、エキスパートネットワーク事業では、当然エキスパートが一番重要になってきます。やはり独自のエキスパートの獲得チャネルというか、エキスパートになっていただくチャネルを有していることが重要。そこから入ってきた専門的な知見を持っている方々が、NewsPicksでも発信しつつSPEEDAでもコンテンツ提供するという姿を一緒に実現できるのではないかと思って、NewsPicks Expertをローンチしております。
川口 サービスの中で、エキスパートインタビューについては、いわゆる一般的なエキスパートネットワークのサービスとして、比較的認知され始めてきているので、今回は割愛させていただきますね。
サービスの中でも、SPEEDAと連携した世界観になっているのが、このFLASH Opinionというサービスです。位置づけとして非常に重要なものになっているわけですね。このサービスではエキスパートのプラットフォームに対して、SPEEDAユーザーが質問を投げかけると、24時間以内に5名以上の専門家の回答が集まってくるものです。リアルタイムに回答がどんどん集まってきて、そのユーザーのアカウントで回答を見ることができるというような体験を作っているサービスになっております。
こちらは一昨年の終わりにローンチしてから1年育てて、我々としても非常に成長の可能性を感じる事業になってきました。なおかつ、このサービスはエキスパートネットワークとの親和性も、SPEEDAの情報プラットフォームとの親和性も非常に高いんですね。
通常、エキスパートインタビューは対話で行われるものが多いんですが、FLASH Opinionではそれがテキスト情報で残っていくので、データ活用としてのレバレッジを効かせやすくなるということが、実はこれから非常に大きなインパクトが出ていくのではないかなと思っております。
ということで、こういったシナジーを創出するような新しい領域っていうところを、今チャレンジしている最中という形ですね。以上でございます。
琴坂 ありがとうございます。先ほどの一歩先の世界って、すごく興味があります。エキスパートネットワークがより良くなったというイメージをつかめていない株主の皆さんもいるかなと思っていまして。具体的にどういう風に良くなるんですか。どのような世界観を実現したいんですか。
川口 そうですね。まずユーザー体験が向上します、ユーザーの皆様はもう既にSPEEDAのようなデータを活用するプラットフォームでいろいろな分析を行うことはしていると思うんですが、そこからさらに直接エキスパートにインタビューしたいというのは、ある意味リサーチや情報獲得のプロセスではかなり連続性のあるものなんですね。なのでエキスパートネットワークがSPEEDAに乗ることで連続性ある体験にできると思っています。
これが今まで難しかったのは、このSPEEDAとエキスパートネットワークの事業は、成り立ちとしてかなりギャップがあるためでした。データを活用するものと、人を集めて提供するものという大きなギャップがあります。そのため、グローバルのエキスパートネットワークの歴史でも、なかなかそれが共存する世界を描いてこれなかった。我々がこれらを一体化させて、両方の体験を作り価値を高めるというのは、ユーザーにとって非常に大きなメリットになるというところが1つですね。
もう1つは、これまでエキスパートインタビューは「話す情報」なので、なかなかデータの蓄積が難しいサービスだったんですね。であるからこそ、逆に後発のプレイヤーでもそこに食い込んでいくことができるんです。中長期で見ると、インタビューが情報としてずっとフローばかりでなかなかアセット化しないというのは、サービスにおいては弱点。
そもそもインタビューって非常に複雑なプロセスなんですね。まずは依頼をして、推薦のリストを見て人を選んで、日程調整をして話す。その後、クライアントはそれを何かしらテキスト情報でまとめたアウトプットを作る。なかなかプロセスとして簡単ではないですよね。
FLASH Opinionでは、もっと簡易なプロセスにできる。まず人を選定するプロセスが、我々のスコアリングシステムで一部自動化されています。完全な自動化はまだしてないんですが、それに徐々に近づけている一定の効率的なプロセスを作っています。そうして、エキスパートからの回答が自動的に、かつリアルなものが集まってくる。
さらに、そのデータから、我々はエキスパートのコメント情報や評価情報を活用できますし、ユーザーさんもデータがどんどん蓄積していくことで、彼らの情報資産として活用できるんです。これは実はインタビューと近いようで全く違う体験です。アセットになるってのはかなり重要な要素ですね。
琴坂 すごく労働集約的に行われていた作業を仕組みとシステムで効率化し、しかもデータがアセットとして残ってるような仕組みを作り上げた。そしてそれをSPEEDAに融合させていき、そこにNewsPicksも絡めていくことをされているんですね。ありがとうございます。
琴坂 では次に、FORCAS事業の瀬木さん。オンラインで参加されると聞いているんですが、つながっているんでしょうか。
瀬木 よろしくお願いします。FORCAS事業のCCO(Chief Customer Officer)を担当しております、瀬木と申します。
瀬木 ありがとうございます。まず自己紹介からさせていただければと思います。
私は新卒で商社系のIT子会社に入社して、エンジニア経験を積みました。その後、名刺管理サービスを提供しているSansan株式会社に入社しまして、インサイドセールスを経てマーケティングチームで、当時まさに流行り始めていたアカウントベースドマーケティング──ABMを推進する担当者として、仕組みづくりに従事していました。
実はそこで、まだ「FORCAS」と名前がつく前のFORCASのテストユーザーとして関わることになったのが、ユーザベース入社へのきっかけになっています。
テストユーザーとして関わるなかで、このあと出てくるFORCASのビジョンでもあるんですけれども、共創──共に創っていくというところを強く原体験として感じました。「こんなにユーザードリブンでプロダクトをつくっていく会社があるんだな」と思い、その後FORCASが本格的に立ち上がるタイミングで、元ユーザーという立場で参画した、という経緯になります。
入社後、まずはカスタマーサクセスとしてたくさんのお客様のご支援をさせていただいていました。その後、産休・育休を経て、時間的な制約などもあるなかで──まだ当時コロナ前だったんですけれども、リモートワーク前提でサポートチームを立ち上げる、ということをさせていただきました。
そのなかで、カスタマーサクセスとプロダクトをつなぐ役割としてプロダクトマネージャーにチャレンジし始めたのが、ちょうど2020年頃というところです。現在はCCOという役回りで、プロダクトドリブンでカスタマーサクセスにコミットしています。
プロダクトを通して、全てのお客様に価値を届けられるような、そんなCCOを目指して、日々取り組ませていただいています。
瀬木 それではFORCASの紹介をさせていただければと思います。
FORCASは、「顧客との共創を広げる」をビジョンとして掲げています。これは、FORCASを使うことで誰もが組織として狙うべき顧客を想像しやすくなる、顧客の解像度を上げることが可能になるということですね。
そうすることで、これまでの一方的な営業活動やマーケティング活動、経営だけではなく、まさに顧客と共創できるような、双方向の営業、マーケティング活動が可能になるのではないかと思っています。そしてそれが「誰もがビジネスを楽しめる世界」に直結するということを我々は信じていまして、このビジョンを掲げています。
瀬木 こちらがサービスの内容になります。まずFORCASですけれども、主に営業やマーケティング戦略、また事業戦略を立てている方々にご利用いただいています。自社の実績データをFORCAS上にアップロードすると、自動で分析がされて、現状の顧客の可視化だったり、売っていくべきセグメントが可視化されたりするようなサービスになっています。
もう1つがFORCAS Salesになります。こちらは主に直接顧客とコミュニケーションするような方ですね──具体的に言うと、インサイドセールスやフィールドセールスの方々にご利用いただいているサービスになります。
簡単に特長を申し上げると、1画面で営業に必要な情報が集約されています。「5分で顧客を知ることができる」というのが1つのキーワードになってくるんですけど、そういったことが可能なリサーチプラットフォームになっています。FORCAS、FORCAS Salesと合わせて、顧客戦略の立案・実行・効果測定までを、この2つのプロダクトでサポートしております。
琴坂 ありがとうございます。先ほど顧客との共創──共に創るという言葉をいただいているんですが、CCOとしての理想って、どんなところを見て業務をされていますでしょうか?
瀬木 そうですね。CCOでプロダクトマネージャーというロールは、まだ珍しいと思っており、「新たなCCOの役割を体現していくことにトライしたい」と思って日々やらせていただいてるんですね。
私はプロダクトマネージャーでありCCOであるので、「顧客起点の」というところは絶対に忘れないようにしたいなと思っていますし、自分が1番ユーザーの皆様の解像度を高く持ちながら、それをプロダクトに確実に反映していき、全てのステークホルダーの皆様にプロダクトの価値を届けていくことをやっていきたいなと思っています。
琴坂 ありがとうございます。
稲垣さんに伺います。昔のユーザベースのチーム経営と、今のチーム経営はだいぶ違うと思うんですけれど、どういう進化をしたのか、どう違うのかを教えてください。どのように感じていらっしゃいますか?
稲垣 そうですね。やっぱり最初のフェーズは僕や梅田、それぞれがお互いの得意領域に特化してお互いができないことをやりながら、力を合わせて1つの「ユーザベース」イコールSPEEDA事業をやっている状態だったのに対して、今はそれぞれの事業CEOが担当事業でいろいろなものをどんどん描いていってくれている。それは当時から比べるとすごく自立的です。
当時は製品を開発するのであれば僕がいなければできなかったり、製品をどう描いて作っていくかは梅田がいなければできなかったりと、何か1つのものを分担して作っている感覚でした。今は1つのものを事業CEOとそこで生まれている新たな経営チームが力を合わせて、どんどん自立的・発散的に動けるところが、以前とはぜんぜん違う強さだなと思っています。
毎年、来年以降の事業戦略を一緒に話し合うときにも、それぞれが描いてくれているビジョンを見ると、僕が全然想像しなかったものを描いてくれるので聞いていて楽しいですし、スピード感や発想力というものが当時と段違いになっていると思っています。
琴坂 麻生さん、様々なタイプの経営者をご覧になってきて、今このチーム経営の中で他の多くの執行役員の方とも議論し、事業をされてますけども、他の方々をどのように思われていますか。好きとか嫌いとか、すごいとかすごくないとか。何でもいいんですけども。今、グループでいろんなことを議論しながら作っているこの空気を、どう評価されていて、何が違うのか。
麻生 先ほど琴坂さんがおっしゃった「武将」というのはすごい言い得て妙だなと思っています。こんなに戦闘力が高くて、しかも誰か斬りつけるタイプの武将じゃなくて、本当に1人ひとりが世の中のためにこうあったらいいとか、お客様がこうなるべきだとか、こういう価値を作っていきたいことから、それこそ自由主義で創造性を持って、すごいスピードでプロダクトを作っていくのを、この人数が集まってやっている集団は見たことないですね。
琴坂 斬りつけるタイプじゃないってその通りだなと思っています。協調的な方々がすごく多いイメージがありますよね。そこで一緒に議論しながら作っていくような空気が生まれている感じかなと思いますね。
麻生 そうですね。武将なんですけど、それぞれが全然違う方向に行ってしまうかというと、事業が結構近しい領域でやっているというのもあるし、人としても協調性があるというのもあって、コラボレーションがすごく生まれているんですよね、ユーザベースグループ内で。それもすごいなと思います。ちょっと第三者的に喋ってしまっていますけど。
琴坂  いえいえ、ありがとうございます。瀬木さんはどうですか。今の質問に対して、どのようにお答えになりますか。
瀬木  私は執行役員になったのが2021年7月からなんですね。自分自身がまだ役員として未熟なところもある中で、ユーザベースでは本当にいろいろな強みを持った執行役員がおります。
FORCAS事業の中にも私の他にCEOの田口と、あと2名いるんですが、日々本当に彼らに助けてもらいながら、私はプロダクトの成長を通してカスタマーサクセスにコミットしています。一方で、マーケティング、営業活動などは他の役員に背中を預けている、という形です。
FORCAS以外のところでも、他のプロダクトの執行役員の方にも相談に乗ってもらいながら、いろいろなことに挑戦できるので、大変助かっているなと日々実感しています。
琴坂  ありがとうございます。

Q&A

※質問の内容は、事業・サービス名を除き、原則Sli.doに記載いただいたものをそのまま転記しております。
Q1. SaaS事業のSOMは年を追うごとに拡大しています。今後はどのようなプロダクトでSOMの拡大を目指していくのでしょうか?お話しできる範囲で構いませんので、ご回答お願い致します。
佐久間 未来は分からないという前提はありますが、SOMの拡大に向けては2つが重要だと思っています。大きな市場観というか未来観と、目の前のお客様の成果に対する執着、その2つから新しい事業は生まれていくと考えています。
なので、まず大きな市場観や未来観のところは、経営に関わる領域ですね。我々は「経営コンサルティング領域」とTAMを定義していますが、そこに関わるものは我々が持っている経済情報を梃子(てこ)にして、全領域でソフトウェアによる民主化を成し遂げていきたいと考えています。
SPEEDAやINITIAL、MIMIRの領域ですと、Strategy、経営戦略のど真ん中の領域です。AlphaDriveも経営戦略の真ん中の新規事業開発に関するサービスも展開しています。
さらにFORCASはSales & Marketingの領域ですね。B2Bで今後間違いなくコアになるのは、企業データベースを基にしたターゲティング。
そのコアの価値を我々は研ぎ澄ましていきます。ちなみに「FORCAS Sales」という名前ですが、実際カスタマーサクセス、要するに既存のお客様に手厚いケアを提供する方にもすごくお使いいただいています。もちろんその既存のお客様が、どういうニュースを出して、どういう動きがあったのかということを察知していなければ、優れたカスタマーサクセスは提供できません。このように、Sales & Marketingの分野では、ターゲティングをコアに、オペレーションの領域にまで踏み込んでいく。
あと麻生、AlphaDrive/NewsPicksの領域ですと、Culture。自律的な人材の育成をし、自律的で働く喜びに溢れた会社をつくっていく。その3領域に関して、我々はもうコアとなるサービスとして持っていますので、これを今後どんどん派生させていく領域というのは、先ほどお話しした「目の前のお客様に対して価値を届ける執着」から、新しい事業をどんどん作っていきたいと考えています。
琴坂 いえいえ、ありがとうございます。麻生さん、どうですか?
麻生 SOMの拡大っていうことで言うと、プロダクトの拡張もしくは新プロダクトの開発だと思ってるんですね。
僕たちがやっている事業って、今のプロダクトの提供価値を前提とすると「SOMはこの辺り」というサイズがあるんですけど、実はそこに留まらず、周辺にものすごいビジネスチャンスが眠っているんです。
例えば僕が担当させていただいてるAlphaDrive/NewsPicksでは、企業の新規事業開発というテーマを取り扱っているんですが、今プロダクトで実現できているのは、0から1を生むところの事業化支援の領域までなんですね。
でも、アイデアが実現して事業化した後を見据えると、その後に無限のニーズがあるんですよ。マーケティングニーズもあるし、セールスニーズもあるし、ちょっと遡るとリサーチのニーズもあるし──というように、まだプロダクト化できてないニーズみたいなものがたくさんあるんですね。そのプロダクトを拡張する、もしくは新プロダクトを投入するとSOMが大きくなっていくという感じかなと思います。
琴坂 なるほど。我々は既に大きな幹を持っていて、そこに枝葉のようにニーズが見えてくるような状態で拡大させていくと理解しました。
麻生 そうですね。やればやるほど見えてくる感じかなと思います。
佐久間 人の知見の領域など、いくらでもサービスを作れる領域なんですよね、間違いなく。
ただ、川口が担当しているMIMIRの領域は、まだ幹になっていないというか、これから幹にすべくガンガン投資していく段階です。そこから将来的に豊かな事業が生まれていく領域だと考えています。
Q2. 自由主義と社内規律はよく相反するところも出てくると思いますが、これが自発的かつ協調的なチームとなっているキーポイントは何だと考えておりますでしょうか?
琴坂 チーム経営というときに、これが一番議論になるんですね。松井さん、いかがでしょう?
松井 私は管理担当の取締役をしておりますので、管理部門ではルールを作ってみんなに守ってもらうことが必要になってきます。
ですが、やっぱりユーザベースの7つのバリューの1番目に「自由主義で行こう」というのがあるので、我々は上場する前に、この自由な社風を上場後もちゃんと維持していけるのか? というのは社内でも相当議論したところではあったんですね。
ただ上場してみて本当に良かったなと思っているところがありまして、キーポイントになるのは、やはり原則をちゃんと作っていくところかなと思っています。我々はパーパスと、The 7 Valuesを掲げておりまして、その中にも「異能は才能」とか、あと「渦中の友を助ける」というようなバリューがあります。
また、「自由主義で行こう」というバリューに基づいて自発的かつ協調的なチームになっています。こういったパーパスやバリューといったような大きな原則を大事にしています。社内でも原則や基準を作って、その背景にある「なぜその原則があるのか」ということを、しっかりとメンバーに共有し、細かいルールをたくさん作ってみんなを縛らない、ということを非常に大事にしております。
なので、みんなが自主・自律を持ちながらちゃんと自分の頭で考えつつ、でもみんなで約束した原則をちゃんと守っていくことがポイントなのではないかと思っております。
琴坂 私は監査等委員なんですが、その中で挑戦を許容し失敗を恐れないカルチャーができていることが、多くの人材が集まる理由ではないかと個人的には思っております。皆さんもぜひ伺いたいんですが、どうしてユーザベースはこうしたチームを作ることができているのか。キーポイントは何だと思っていらっしゃいますか。
稲垣 2つあって、1つは「原則経営」として、パーパスとバリューといった大きな方向性や価値観を共にできる仲間だからこそ、成立してできている部分が大きいと思います。
ルールのレベルでも、もちろん大事なものはいっぱいあるんですけど、大きなレベルで価値観が合っていることはすごく重要だと思うんですよね。ルールは後からいくらでも変えられますが、やはり価値がちゃんとあるからこそ、お互いすれ違ったり間違った方向に行かないことができてるのかなと。
もう1つは、明確に言語化はされてないんですけど、ユーザベースの中で一番強いのは性善説だと僕は思っています。お互いを信じて託すということがしっかりできているので、性善説をベースに、多少のすれ違いがあってもトラストの輪というか、そういうものでお互いを信じて立て直していくことができているのではないかなとは思っています。
琴坂 おっしゃる通りですね。信じて託すというところはすごく私も感じているところであります。
Q3. ミーミルのメインビジネスの内容をもう少し分かりやすく教えて下さい。例えばビザスクとのビジネスの違いは何でしょうか
川口 そうですね。全般でいうと、いわゆるエキスパート・ネットワークビジネスなので、インタビューを提供するという意味では同じと言えないことはないと思っています。
ビジネスの内容自体は、エキスパートインタビューを提供する──何かしら業界調査であったり新規事業というところについて知りたいときに、専門家の意見をインタビューによって獲得するというサービスですね。インタビューの対象者となるエキスパート──専門家の方をネットワーク化して、クライアントニーズに合わせてマッチングし、ご提供することがメインのビジネスになっています。
ビザスクさんを含めたエキスパート・ネットワークの企業との明確な違いは、まさに先ほど申し上げたようなFLASH Opinionであったり、SPEEDAという経済情報プラットフォームと連携したサービスであるところになります。
もちろんその先の姿として、FLASH Opinionがより拡がっていくことで、テキスト情報が貯まるなど、データを蓄積し深く活用していくことで、さらに違いが加速していくのかなと考えています。
琴坂 データが集まってくると、どのように加速していくんですか?
川口 まず今までは、エキスパートのマッチングをする際に活用する情報というのは、メインはエキスパートのプロフィール情報だったわけですね。エキスパートネットワークはもう20年ぐらい前からビジネスとしてあるんですけれども、大きくは変わらない姿なんです。それに対してFLASH Opinionなどは、エキスパートが知見情報を回答していくことで、その回答情報もエキスパートにどんどん付与されていくわけですね。
それらの回答情報も含めてエキスパートのマッチングができるというところと、あとは回答の評価情報も取り貯めることが可能になります。インタビューは、クローズドの場で提供されるので、評価は非常に難しかったんですが、テキストであれば評価が容易で貯めやすいので、それもエキスパートのマッチングにも活用することができるというところが、大きく違ってくるかなと思います。
Q4. ユーザベースは、異なる個性からなる共同代表でこれまで来ていますが、稲垣代表から見て佐久間代表の強み、佐久間代表から見て稲垣代表の強みを教えて頂きたいです。
稲垣 ありがとうございます。佐久間の強みは、一言で言うと、論理と情理のバランスをかなり高いレベルで持っているところだと思っています。発言がたまに尖って聞こえることがあるかもしれないですが、内には優しさや、パッションなどを感情をすごく大切にしている人で、ある意味ここは過去の梅田や新野も含めて同じような熱さというか強さを持っていると思います。
さらに、それをちゃんと仕組みに落としていけるところが佐久間のユニークさです。ちゃんと再現性のある形で組織を構築するところが、かなり秀でていると思っています。やっぱり当時の梅田・新野もそうでしたし、僕も思いのまま結構突っ込んでいってしまって、結果として仕組み化をあまりせず、コミュニケーションで頑張っちゃうみたいな傾向があります。佐久間はそこをちゃんと経営システムや、再現性のある形に落とせる。このバランスがあることが一番の強みなのではと見ています。
琴坂 弱みは何ですか?
稲垣 弱みは、ちょっと尖って見えちゃうところですかね(笑)。
琴坂 佐久間さん、反論からお願いします。
佐久間 いや、尖って見えると思います(笑)。
稲垣の強みは、今日も社内のミーティングでテクノロジーカンパニー構想に関してすごく熱く語っていて、そういったエンジニアリングやテクノロジーに対する愛というのもあるんですが、それよりやっぱり一番の強みは、人の可能性を諦めないことだなと思いますね。本当に対話してますね。社内で一番メンバーと対話していると思います。
階層とか関係なく、「この人、何か課題を抱えていそう」といった人と、1対1で向き合う。課題解決に長い時間をかけてタフに向き合っていく強さ。これは、ともすれば「稲垣教」ができやすいんです。稲垣宗派みたいな。「なんか佐久間さんは分かってくれないけど、稲垣さんは分かってくれる」みたいな状態は最悪じゃないですか。
そういうことではなくて、例えばリーダーとの関係性だったら、ちゃんとリーダーを入れて話すなど、稲垣教を作らず、その人の本当に持続的な問題解決に向けてサポートをする。その執着の強さが強みかなと思いました。
弱みは、あまり発言しないことですかね(笑)。
琴坂 ありがとうございます。ちょっと私の興味半分で聞いてみたいのですが、松井さん、ユーザベースは、これまで様々に共同経営の体制を変えてきたわけですが、過去とも比較しながら、今の共同経営の強み、特徴について教えてください。
松井 そうですね。直近でいくと、梅田・稲垣の共同経営体制から、佐久間・稲垣の共同経営体制になりました。稲垣は変わらないので、私の目から佐久間と梅田を見たときに、どう違うかなと考えると、2人ともすごくビジョナリーでパッションが強いところはよく似ています。でも、佐久間の方がもしかしたら優れているかなと思うのは、さっき稲垣も言ってましたが、仕組み化の部分ですね。
今1,000名規模になった組織を、感覚だけではなく仕組みに落とし込んで組織運営をしていくことや、そもそもいろいろな事業が自走している中で、それらをどこまでシナジーを効かせるのか、どこまで自走してもらうのかといったバランスをしっかりと仕組みで解決していくところは、非常に優れているのではないかなと思っています。
一方で梅田は、すごく人好きのするというか、もういろいろな人から愛されるキャラクターでして、佐久間はもう少し笑顔があった方がいいかもしれないなとは思っております。
琴坂 瀬木さんはどうですか? 今の共同代表の形はどう見えてますか?
瀬木 私はどちらかというと今まで佐久間と一緒に働くシーンが多かったんですが、佐久間の強みでいうと、1つはすごくいろいろな領域の、つまり各チームの業務への解像度がとても高いんですね。
ですので、いろいろな人を巻き込んで推進していくような大きなプロジェクトをすごくスムーズに進めていけるところは、私の目から見ても強みだなと思っていますし、日々私も学ばせてもらっています。
琴坂 そろそろ時間も迫ってきましたので、締めに入っていきたいと思います。佐久間さんから、チーム経営という形の中でユーザベースの未来がどのように作られていくのか、もう少し教えていただけますか。多様な執行陣がいる中で、今ユーザベースはどんな議論をしていて、どんなビジョンを見ていて、何に希望を持って議論しているのか、その辺の話をしてくれると嬉しいなと思うんですが、いかがでしょうか。
佐久間 ありがとうございます。ちょっと主旨に沿うか微妙なんですが、やはりさっきの「自由」と「まとめる」、この2つの矛盾しがちなところを、どう克服するのかが本当に大きいなと思いますね。
小さな会社で3つ新規事業を作るのは、やろうと思えばできちゃうと思うんですよね。ただ、ユーザベースがこれだけの規模になって、挑戦したい人で溢れているので、誰かの挑戦が他の誰かの挑戦を阻害するような状況が容易に起きてしまいます。これは最悪です。
そういうことを避け、みんなの創造性を、自由に、最大限に発揮してもらうためにも、やっぱりパーパスが必要だなというのも大きな理由の1つで、昨年1年間かけてパーパスを作りました。もちろん、パーパス以外にも多様な挑戦を矛盾なく包含する仕組みづくりを進めています。
これは、本当に人が幸せに生きることへの挑戦でもあると思っています。みんな自由に挑戦したいじゃないですか。ただそれを組織としてまとめ、持続的な高成長に紐付けていくことが、本当に大きなテーマだなと。
いろいろな人がちょっと仕組み作りが得意だと言ってくれたので、それを可能にする組織構造を見出すことを私のライフテーマの1つにして、みんなと一緒に取り組んでいきたいなと思っています。
琴坂 稲垣さんからもぜひ。
稲垣 そうですね。2つありまして、1つはやっぱりこのコロナも含めた環境下、コミュニケーション取りづらさ。これがどうしても出てくる中で、経営環境としてもいろいろな変動要素があります。だからこそ、今日来てくれた事業CEOのみんなが現場で引っ張ってくれるんですが、大変な環境だからこそハードワークといった状況も含めて、全ての人がしっかりと同じ思いで働けているかというと、どうしてもちょっとしたズレというのが起きやすいと思います。リアルだったらそういったズレも、すぐに気づいて解消できていたと思いますが、リモートワークによって解消しにくくなってきていると思うんですよね。
なので、こういったコロナ下の環境であっても、持続的かつみんなが幸せに働ける仕組みを作ること、それが何より根幹だと思っています。そのためにもコミュニケーションが大切なので、まずそこに対しては強い意志を持って引き続きいろいろな施策を講じていきたいなと思っています。
関連しますが、もう1つはやはり実態が変わらないと辛さは乗り越えられないところもあるし、どれだけコミュニケーションしても仕事が大変で改善できない状況が続けば、それに苦しみ続けることがあると思っています。そこで最も有効なものが僕はやはりテクノロジーだと思っているんですよね。
しっかりとエンジニアリングを各所に入れていって、生産性向上を図り、メンバーみんながより高い知見を持った面白い仕事に着手できるということが、僕らのパーパスのど真ん中でもありますし、僕ら自身が体現できると理想的だと思っています。そこに向かう戦略をしっかり立てて、強い意志で進めていきたいと思います。
琴坂 ありがとうございます。時間になってきましたので、そろそろこのパネルディスカッションも終わりにしていきたいと思います。冒頭に申し上げたんですが、ユーザベースには多様な武将がいると感じています。
そして私自身も、良い挑戦ができているなと思っております。なかなか株価という面での結果が伴っていないことは、私も非常に強く責任を感じています。しかし私も含めてここにいる全員が、良い結果をお届けできるように日々前進したいと思っていますし、私もそれをサポートしていきたいと思っております。本日はご視聴ありがとうございました。これで終了とさせていただきます。
以下、総会およびパネルディスカッションで回答しきれなかったご質問への回答を掲載いたします。
Q. 会社移転の目的たる新たな価値の創造実現とは、具体的には何ですか?
稲垣 三菱地所さんが多く物件を持たれている大丸有エリアはご存知の通り、日本を代表する有名な大企業が多く拠点を構えていらっしゃいます。ただスタートアップにはなかなか縁遠い場所になってしまっており、大企業とスタートアップの共創の場にはまだなれていません。今回ユーザベースが本社を構えることで、多くのスタートアップを呼び込み、大企業との共創の場として機能していくことを期待していただいています。
具体的には2つ。NewsPicks Studiosのチームが中心となって、丸の内からの情報発信をしていきます。ユーザベースのオフィスや三菱地所さんの保有されているスペースを相互に活かしながら、SaaS・NewsPicksの両面で大小様々なイベントも開催していきます。その際に、様々な大企業・スタートアップにお声がけさせていただいて、つながりを作り、共創の輪を広げていくことを考えています。また金融庁や、福岡や大阪などの企業や行政ともお話をさせていただいていますが、各地でも大企業・スタートアップの共創の課題はあるため、地域を越えたつながりを作っていける場としても機能していくことができたらと思っています。
Q. NewsPicks事業について、SaaS事業のマーケティング・チャネルとするということですが、NewsPicks事業単体としての売上成長のポテンシャルがあるのはどこで、それに対してどのように挑もうと考えているのでしょうか。また、収益性の改善も必要と思いますが、その点で最大の課題は何で、どう解決するつもりですか
佐久間 大きく伸びしろは2つ。認知率と動画であると考えております。NewsPicksは有料会員の継続率を上げる仕組みづくりに長期的に取り組んでおり、会員継続率は直近3年で大幅に向上しております。一方、認知率は他社メディアと比較して低く、認知を向上させれば、有料会員が定着して増やせる土台があります。この認知率向上のために、第2四半期から、テレビCMを開始します。
また、一般にスマホでの動画視聴時間は大きく向上しており、NewsPicksでも動画経由での有料会員獲得が増えております。この機を捉えるためにも、クオリティが高い動画コンテンツの拡充、動画体験を向上させるプロダクト開発を進めていきます。
Q. SaaSのマーケティングの一環としてNewsPicksを利用していくとのことですが、マーケティングを意識しすぎることでNewsPicksの体験価値が毀損され、解約リスクもあると思います。どういったKPIを基にシナジーを出しながらNewsPicksからSaaS事業へのユーザーのコンバージョンを進めていくのでしょうか?
佐久間 おっしゃる通り、NewsPicksのユーザーにとっての価値あるコンテンツを出すことが第一です。例えば、SPEEDAのオンラインイベントでは「MaaS」、「スマートシティ」といったNewsPicksユーザーにも関心が高いビジネストレンドを取り扱っており、この質が高いコンテンツを提供することで、NewsPicksユーザーにとっての価値と、マーケティング効果の両立を目指していきます。
Q. NewsPicksをSaaS最大のマーケティングチャネルにするとのことですが、SaaSのマーケティング動画をNewsPicksユーザーに提供するだけではコンバージョンは進まないように思います。チャネル化に対して、すでに何らかのテストを実施して感触をつかんでいるという認識でよろしいでしょうか?
佐久間 はい。SaaSのオンライン番組視聴者の中でNewsPicksユーザーは既に一定数存在し、相性の良さは一定、数値的にも裏付けられております。
Q. NewsPicksからSaaS事業へユーザーがどれだけコンバージョンできているか、数字を開示して頂けないでしょうか?
千葉 SaaS事業とNewsPicksの融合については、当社の長期戦略で重要なポイントであり、投資家の方々にとっても注視されている点だと理解しています。これは長期的な、時間がかかる取り組みではありますが、そのシナジー効果については長期経営計画を実行していく時間軸で開示していきます。
Q. NewsPicks事業の成長率が低迷し続けた場合、NewsPicks事業の売却を検討する可能性はありますでしょうか?より広い視野で資本配分を考えると、成長率も低く利益率も低いNewsPicks事業の売却も検討すべきだと思います。
佐久間 NewsPicks事業を売却する検討はしておりません。まずは、NewsPicksの成長を加速させる。そして、SaaSとのシナジーをつくることにフォーカスさせていきます。そのことが、中期的に大きな経済価値をもたらし、株主価値向上にも資すると考えております。
Q. 貴社では、調整後EBITDAを最重要利益指標としています。この指標を採用している背景をもう少し詳しく教えていただけないでしょうか?
千葉 まず、営業利益ではなく、EBITDAを当社が重視している背景ですが、暖簾や減価償却費などキャッシュアウトを伴わない費用を除くため、キャッシュ・フローに最も近く、企業価値を考える際に優良な指標だと考えているためです。
今回導入する株式報酬も同様の考え方に基づくもので、米国を中心に海外では調整させた指標が開示されていることもあり、当社でも最も重要な利益指標としていきたいと考えています。
Q. 自社株買いの判断基準を教えて頂けないでしょうか?これほどまで株価が低迷しているのであれば、積極的に自社株買いを検討すべきだと考えております。
千葉 申し訳ありませんが、具体的な基準については、お伝えすることができません。しかしながら、現状の株価水準については、経営陣として忸怩(じくじ)たる思いですので、株価の水準を見ながら、自社株買い含め様々な施策について検討しております。
Q. 推定される株主価値よりも大きく株価が下がっていると思われる現状で、事後交付型株式報酬制度を導入することは既存株主の一株当たりの価値の希薄につながると考えられます。本当にオーナー目線で取り組む役職員は、ソフトバンクの宮川社長のように市場から自分で株式を購入すべきだと思いますが、なぜそのような対応にしなかったのでしょうか?
松井 当社では従業員持株会、役員持株会に加入する役職員も多く、既に自らの手元資金で株式を保有している役職員も多くおります。今回の株式報酬制度の導入は、これらの持株会制度に加えて、もともと金銭で支給していた役員報酬の一部を今後は株式で支給するものとなっており、実質的には自分で株式を購入するのに近い形となっています。より株主の皆様と役員とのインセンティブを一致させることにより、中長期的な企業価値向上に資することになると考えております。
Q. 事後交付型株式報酬制度を導入することで、持続的な企業価値の向上を動機づけたいとのことですが、この報酬体系にすることで企業価値が向上するという研究などがあるのでしょうか? 導入を目指すに至った経緯も含めて教えてください。
松井 株式報酬制度が企業価値にどのように影響するかに関しては、多様な学術研究が存在します。企業価値に対して有意に貢献するという学術研究も存在する一方、学術研究の分析には多くの前提条件が存在するため、必ずしもそうではないとする主張もあり、現在のところ学問的な統一見解が確立されているとは言えません。
一方、グーグル、アマゾン、マイクロソフト、アップルといった世界的IT企業、そしてシリコンバレー、中国、インド、そして日本のスタートアップ企業の多くが、株式報酬制度を用いた報酬制度を採用し、また持続的な事業成長を実現しているのは事実です。
当社の指名報酬委員会は、こうした国内外のベンチマーク企業の報酬制度を丹念に調査し、また当社独自の状況、経営目標、直近の株価水準など多様な要素を検討した結果、事後交付型株式報酬制度は当社の企業価値向上に資すると判断しております。
Q. Uzabase内の人間関係はとても良好であることを立ち上げ当初より察知しております。仕事がとてもやりやすい環境であるように存じますが、反面、その社内環境を客観的に俯瞰できる方は役員にいらっしゃるのでしょうか?
稲垣 弊社のことを知っていただきありがとうございます。いわゆるガバナンスの観点のご質問かと思いますが、構図として社外取締役を含めた取締役会が稲垣・佐久間・松井の社内の常勤取締役3名のガバナンスをし、稲垣・佐久間・松井の3名が各事業のガバナンスの機能を果たす構図となっております。
例えば事業計画に関しては、各事業から上がってきたものを稲垣・佐久間・松井が中心となってガバナンスをします。それらを統合してユーザベース全体としての事業計画を作り上げる際には、取締役会が機能してガバナンスをかけるという構図です。役員の選任に関しても同じで、指名報酬委員会を通して同じ構図でガバナンスがなされています。一番大切なポイントとしては、当日平野よりコメントもありましたが、社外取締役の人数のほうが社内の取締役の人数より多いという点です。これにより、稲垣・佐久間・松井をいつでも解任できる状態となっておりますし、良い緊張感をもって経営ができていると感じています。
もう1つの観点として、弊社では機密情報と個人のプライバシー以外は社内にできる限り情報を開示しています。取締役会や各事業の経営会議の議事録も可能な限り開示していますし、役員の選任理由や報酬額までも開示しています。これによって説明が果たせてないような意思決定がされたときには、社内のメンバーたちからも率直に意見を言ってもらえる環境を作ることができているため、いわゆる自浄作用を担保できていると感じています。この仕組みに関しても、良い緊張感を持って経営に取り組める環境が作れていると思っています。