北海道上川町は2021年11月、共創コミュニティ「KAMIKAWA GX LAB」を設立。以来、コミュニティミッション策定、取り組むプロジェクトの設計とコミュニティメンバーと一緒に議論を進めてきました。

そしていよいよ2022年5月初旬、準備してきたプロジェクトの旗揚げとして、プロジェクトKickOffイベントを開催します!そこで改めて、コミュニティの存在意義や活動内容をお伝えするため全3回の連載をお届けします。

#1 北海道上川町が、NewsPicks Pickerとつくるコミュニティ、始まる
#2 上川町が追求する「押し付けない」町と人との新しい関係
#3 「余白」が「感動」を生み出す、全く新しいツアーを共創する


#2ではコミュニティミッション「感動人口」に辿り着いた背景について、コミュニティマネージャーの一人であり、上川町役場情報防災室係長の清光隆典氏にお話を伺いました。

人は「関係人口になりたい」と思えるか?

私自身、2年前まで地方創生の担当で、総務省が定義するところの「関係人口創出事業」に携わっていました。ただ「関係人口」は抽象度が高く、理解するのが難しいという課題感を持っていました。
定義によると関係人口は、「現状の地域との関わり」と「地域との関わりへの想い」の2軸で説明されていて、どちらも高い状態が「定住人口」となっています。ただこれはあくまでも行政の視点での定義で、実際に地域に関わる人たちにとって「関係人口」という言葉はピンと来ないのではと感じています。
出典:https://www.soumu.go.jp/kankeijinkou/about/index.html:総務省
私自身「どこの関係人口なのか?」と問われると答えに苦しみます。私のような地方創生事業に携わる人も含めて、世の中の人の何人が「自分はこの地域の関係人口だ」と胸を張って答えられるでしょうか。便利な言葉であるからこそ、いつのまにか思考停止で使ってしまうのが「関係人口」だと思うのです。

感動は伝播する、だから「感動人口」は加速度的に増える

また、「関係人口」という言葉には「主体性」が感じられないとも思っていました。そもそも、町は住民をはじめ、関わる人たちと一緒につくるもので、自治体が一方的につくり上げるものではありません。重要なのは主体性をもって町と関わる人を増やすことです。どんな人が自ら進んで町と関わってくれるのかと考えたとき、出てきたのが「感動」というキーワードでした。
KAMIKAWA GX LABのコミュニティミッション
上川町にある「人」「自然」「食べ物」などたくさんの資産に触れ、心が動けば、人は具体的な便益がなくても、自ずとアクションをとってくれるはず。そのアクションは、観光でも、定住でも、場合によっては、ただSNSで呟くだけでもよくて、共通するのはそこに主体性があることだと思います。
さらに、「感動」のもう一つの重要な要素は、人を伝ってどんどん伝播するということ。ミッションに掲げた「​​1億人」は一見すると無茶な数字にも見えます。それだけの数の人に一気にコミュニケーションを取る手段はありませんし、全員に響くメッセージを生み出すことも難しいです。
ただ、誰かが感動して起こしたアクションは別の誰かを感動させる可能性があると思っています。最初はコミュニティメンバーやそれに近しい人の心を動かすことがメインだとは思いますが、そこから一人ひとりのつながりのある人に感動が伝播し、さらにその先にまで感動が伝わる、と「感動人口」は加速度的に増えていくのだと思います。
テレビや新聞のように一気に何かをお伝えすることはできないかもしれませんが、長い目で見ると「感動人口」を増やすことや、既に何かしらのつながりがある人を「感動人口」に変えていくことが、上川町と一緒に何かしたいと思い合える人を増やすことにつながるのだと思うのです。

まず最初の感動を、生みだそう

「感動人口」を増やすために取り組むべきプロジェクトは、今まさに共創コミュニティ「KAMIKAWA GX LAB」でコミュニティメンバーと一緒に議論中です。感動した瞬間をシェアし合いながら、感動のメカニズムを解き明かすのは面白く、やりがいを感じます。上川町の抱える資産を最大限に使い、ここでしかできない体験をつくり上げたいと思っています。
また、感動はみんなで一緒に作る過程にも宿ると思っていて、一生懸命プロジェクトに取り組み、何かを形にすること自体が、まず我々も含めたプロジェクトメンバーの感動を引き起こすと思っています。その感動は、プロジェクトやイベントを起点にコミュニティメンバーから、他の人々へ伝播し広がっていくはず。その第一歩として、まずは我々自身が感動するべく全力でコミュニティ活動に取り組みたいと思っています。
逆に言うと、少しでも「感動させにきている」と感じるコミュニケーションは冷めてしまとも思っていますので、狙うようなことはしたくありません。まず目の前の一人の人の心を揺さぶること、それが自然と他の人にも伝播していく形をピュアに追求し続けたいです。
KAMIKAWA GX LABでは、今後も「感動人口、1億人へ」というミッションを掲げ、さまざまなプロジェクトに取り組んで参ります。さまざまな資産を抱える町そのものを活用した「感動」を生み出す挑戦に、興味がある方はぜひご参加ください。
編集:清光 隆典(KAMIKAWA GX LAB コミュニティマネージャー)
撮影:渡辺 誠舟
デザイン:武田 英志(hooop)
共同編集・執筆:種石 光(NewsPicks Creations)