2022/2/8

【大阪】トップコンサルが指導、2年でフォロワー300倍に

ライター(すきめし企画)
全国展開する100円ショップ「Watts(ワッツ)」は、業界第3位の店舗数ながら、若い女性への認知度の低さが課題でした。そこで、自己流だったInstagram(以下インスタ)運用をテコ入れ。2年でフォロワー数は400人から13万人に増え、「インスタで見た商品が欲しい」という流れも生まれました。“中の人”に飛躍のポイントを聞きました(全3回)。
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Wattsのインスタ@watts_100 より。2021年10月現在(取材時)でフォロワー14.6万人。2022年8月までに15万人突破を目指している。
INDEX
  • 業界3位なのに認知度が低いわけ
  • 自己流Instagramの限界
  • 東京ー大阪のLINEコンサル
  • できないことはアイデアで乗り切る
株式会社ワッツ/100円ショップ「Watts(ワッツ)」「Watts with(ワッツウィズ)」「meets.(ミーツ)」「silk(シルク)」などの運営。1995年2月設立。従業員3133名(パート・アルバイトを含む)、グループ店舗数1401店舗(どちらも2021年2月28日現在)

業界3位なのに認知度が低いわけ

WattsがSNS運用を始めたのは、2014年頃。2015年の創立20周年を前に東証一部上場を果たしたタイミングで、ブランド力を向上させようという狙いからでした。
当時、Wattsの店舗数は約1000店舗。都心やターミナル駅の近くに大型店を直営するダイソー、おしゃれな店作りでショッピングセンターへの展開に力を発揮しているセリアに次ぐ店舗数ですが、ローカルスーパーの一角に出店することの多いWattsは、知名度で大きく後れをとっていたのです。
組織体制も見直すことになり、POS分析などを主とするマーケティング課が新設されて、既存の営業企画課とあわせて事業戦略部に生まれ変わりました。営業企画課課長の宇田川幸一さんは、当時のWattsが抱えていた課題についてこう振り返ります。
「現在約1400店舗あるうちの800店舗ぐらいが、スーパーマーケットなどの軒先をお借りする委託型です。大根やニンジンと一緒にカートに入れて、レジでまとめて会計していただくスタイルなので、『Wattsで買っている』という意識が薄かったのではないでしょうか」
SNS運用責任者・宇田川幸一さん。1995年に入社し、店舗担当を経て2005年に本部へ。

自己流Instagramの限界

SNSを任されたのが、メイン顧客(40代前後の主婦層)に近い伊藤広美さんでした。大抜擢ですが、プライベートでSNSを使うことがほとんどなかった伊藤さんにとっては、不安が大きかったようです。
2度の出産育児休暇を経てSNS運用を任された伊藤広美さん。以前は研修などを担当していた。
宇田川さんもSNSには苦手意識があり、女性や主婦の感覚もわからないので助け舟を出すことができません。競合他社のアカウントを見たり、ノウハウを書いた本を読んだりしながら、手探りで運用を始めるしかありませんでした。
「とりあえず、Instagram、Twitter、Facebookのアカウントを準備しましたが、本格的に商品情報を発信するようになったのは2017年12月頃からだったと思います。見様見真似で使っているうちに、SNSといってもそれぞれに持ち味があることがわかってきました。
当初の目的はブランド名の“認知度アップ”でしたから、Facebookより拡散力のあるInstagramとTwitterに絞るようになりました。さらに、旬の情報がどんどんタイムラインに流れてくるTwitterよりも、じっくりと画像とテキストで商品の魅力を伝えることができるInstagramのほうが相性は良さそうだと感じました。Wattsには、焼き立てのパンや個数限定の商品があるわけではないですから」(伊藤さん)
その後、空きロッカーに照明を仕込んで“撮影ルーム”を作ったり、自らの足で店舗をまわってめぼしい商品を購入したりしながら、「営業日には必ず投稿」をノルマにInstagramの運用を続けました。しかし、フォロワーは500人にも届きません。
開始から約半年後、2018年5月9日の投稿より。背景を変えたり、電池で動くものはON・OFFを切り替えてみたりと工夫したが、思ったようにフォロワーは増えなかった。
部下の奮闘ぶりを運営責任者の立場から見守っていた宇田川さんは、実店舗と連動させる難しさをこう説明します。
「Wattsは店舗規模のバラつきが大きく、10坪前後の狭小店舗から1フロアを占める大規模店まであるので、品揃えもまったく違うのです。どこの店でも扱っているであろう商品を選ぶと、無難だけれど見る方には響かない投稿になってしまうのが悩みでした」

東京ー大阪のLINEコンサル

このまま効果が上がらなければ、社内的にもSNS運用が仕事として認められにくくなってしまう…。自己流には限界がありそうだと判断した宇田川さんは、外部コンサルタントの力を借りる決断をします。
複数の候補者の中から、Instagramの運用に関して実績のあった生駒幸恵さん(SNSコンサルタント)に指導を仰ぐことになりました。
「それまで相談してきた専門家は、宣伝まで踏み込んで提案される人もいれば、あくまでもSNSでの数を伸ばすことにこだわる人もいて……と、それぞれ。その中でも生駒さんは、素人同然の私たちの苦労に寄りそうように、『(運営の)人数が少ないと大変ですよね』『SNSのこういうところが面白いですよね』と理解を示してくださったのが印象的でした」(宇田川さん)
インスタ活用の中心人物となった、宇田川幸一さん(右)と伊藤広美さん(左)。
伊藤さんは、面談時に生駒さんから“ダメ出し”されたことを、さっそく実践してみたそうです。
『Wattsの商品かわいいね』と投稿している人を見つけたら、すぐにいいねとコメントをつけて、コミュニケーションをとること。商品写真はフレームいっぱいの大きさにすること――など、1時間の面談の間、ずっとメモしっぱなしだったとか。
「ちょっと試しただけで、アクセスしてくれた方の反応ががらりと変わったんです。すごい、これならいけるかもしれない。また、東京―大阪で距離は離れていますが、何かあればいつでもLINEしていいと言っていただけたのも、心強かったです」(伊藤さん)
コンサル前(上)とコンサル後(下)の画面の比較。ごちゃつきがなくなり、色やイメージに統一感が出た。
2018年7月に正式なコンサルティング契約を結び、Instagramを使ったPR戦略プロジェクトがスタートしました。コンサルタントの生駒さんが月に1回来阪してミーティングを行い、紹介アイテムの選定や商品撮影のコツ、ハッシュタグの効果的な付け方など、具体的なノウハウを伝授。
“SNS好きな若い女性層”というWattsのターゲットでもある生駒さんの感性は、10歳ほど年齢の違う伊藤さんとは大きなギャップがありました。たとえば、撮影した写真を送ると、こんなふうに生駒さんからの具体的な指示が返ってくるのです――。
この色は変えましょう

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「ほかにも、<参考になるアカウントがあるからフォローして>と、矢のように指示やアドバイスが飛んできました。あっという間にLINEが200通とか300通とかになるような状態だったので、初めのうちは考える暇もなく手を動かしていました」(伊藤さん)
ハッシュタグは絶対に30個考えてみる
画像は1投稿につき10枚まで使うことを意識して撮影する
など、生駒さんからの“無理めな課題”をクリアし続けたことで、ユーザーのメンションを待つだけでなく、こちらから仕掛けていくSNS運用に変わっていきました。

できないことはアイデアで乗り切る

一方で、休日や夜間の対応については、上長である宇田川さんを通じて「できません」ときっぱり断っていたという伊藤さん。個人のインスタグラマーには当たり前のことでも、企業アカウントの“中の人”には就業規則があるため、難しいこともあるのです。
「炎上対応など外部とのトラブルがあったときに対応して責任を負うこと、組織内でプロジェクトを動かす上で越えてはいけない一線を守ることが、私の役割。生駒さんに対しても、時間外労働ができないことをお伝えすると、こんな提案が返ってきました」(宇田川さん)
店舗担当の人に協力していただくことはできますか?
夜間対応が無理なら、次にアクセスの多い昼休みはどうですか?
これなら、少ない人数でも、時間外勤務をしなくても、運営は可能です。その成果は、数字にもはっきりと表れ始めました。開始時に400人ほどだったフォロワー数は、年明けを待たずに1万人を突破。他部署や各店舗担当者のSNSに対する姿勢も変わるのに、時間はかかりませんでした。
こうして、2017年末にフォロワー数400人から始まり、2018年末には約2万人に。2020年に入って10万人を突破しました。その飛躍を支えた、さらに具体的なノウハウを次回ご紹介します。
Vol.2に続く(NewsPicks +dの詳細はこちらから)