[シドニー 20日 ロイター] - 豪連邦統計局が20日発表した12月の雇用統計は、就業者数が市場予想を上回り、失業率は2008年以来の水準に改善した。豪経済の力強さが鮮明となっており、足元で新型コロナウイルス感染が急拡大しているものの、景気の腰折れは回避する可能性が高まった。

就業者数は前月比6万4800人増と、市場予想(4万3300人増)を上回った。11月は36万6000人増と過去最大の伸びを記録していた。

失業率は4.2%と、08年8月の4%以来の低さだった。11月の4.6%から改善した。統計局によると、失業率が最後に4%を下回ったのは1970年代という。

市場では雇用統計を受け、早期利上げ観測が広がり、豪ドルが0.7228米ドルに上昇した。

ただ、今月に入ってからはオミクロン変異株の流行で消費者が外出を控えているほか、体調不良や隔離による労働者不足で物流システムが混乱するなど、雇用に影響が出つつある。

今のところ、影響は雇用自体よりも労働時間の減少に表れており、1月の労働時間が3─4%減少するとの試算がある。ただ、感染拡大が2月も続けばレイオフが相次ぐ可能性もあるという。

政府は19日、不足している労働力を補うため、外国人学生やバックパッカーにオーストラリアに来て働いてほしいと呼び掛け、ビザ申請費用の免除を申し出た。

アナリストは、こうした労働力需要が最終的に賃金上昇につながると期待するが、まだその裏付けは乏しい。2月下旬公表の昨年第4・四半期の賃金データで賃金の顕著な伸びが示される可能性は低い。直近のデータでも、賃金の伸びは前年比わずか2.2%と、米国の4.8%、英国の4.9%を大きく下回る。

これが、23年まで政策金利を過去最低の0.1%から引き上げる必要がないとオーストラリア準備銀行(豪中銀)が主張してきた主な理由だ。

一方で市場は、世界的にインフレ圧力が持続する中で、豪中銀の利上げが早ければ5月に前倒しされると見込んでいる。

来週発表される第4・四半期の豪インフレ統計では、コアインフレ率が09年以来の高水準となる2.5%に上昇するとの予想もあり、そうなれば早期利上げにつながる可能性が大いに高まる。

豪ウエストパック銀のチーフエコノミスト、ビル・エバンズ氏は20日、「想定よりかなり速いインフレと賃金上昇の加速」を踏まえて金利見通しを修正したとし、8月に15ベーシスポイント(bp)、10月に25bpの追加利上げが行われるとの見方を示した。

ウエストパックはこれまで、利上げは23年2月以降と予想していた。