2022/1/12

天才の夢が、今、現実になる。世界のテクノロジーから目を離すな

NewsPicks Brand Design Senior Editor
 世界中の天才たちが描く夢が実現したら、ビジネスはどう変わるのか──。
 あらゆるもののデジタル化が加速し、最先端の技術による新時代の幕開けを迎えている昨今。
 とりわけ、日本のビジネスの根底を支える製造業や物流の現場では、高度なオートメーション化が進み、多くの読者が想像し得ないほど進化したテクノロジー活用が始まっている。
 そんな世界中の最先端技術をいち早く発掘し、日本の製造現場に実装する“テクノロジープロバイダー”企業が、リンクスだ。
 同社のミッションは、「世界の天才たちの夢を、ビジネスに。」。
 本記事では、リンクスが開催した技術の祭典「LINX DAYS 2021」(2021年11月25日・26日開催)の3つセッションから、夢の世界を飛び出し、リアルに訪れつつある最新の未来の話をお届けしよう。

「第5の波」は、社会や生活を根底から変える

ミチオ・カク 私がこれからお話しするのは10年、20年、50年のうちに訪れる未来です。
 未来を理解するために、まず過去を整理しましょう。
 1800年代の産業革命以来、物理学は富を生む「4つの波」を生み出してきました(下図参照)。
 そして近い将来、私たちは「第5の波」に突入します。
 第5の波の正体、それは「量子コンピューター」です。
 現在の半導体ベースのコンピューターは2進法で、0と1、1と0のオンオフを繰り返しています。
 しかし、原子はあらゆる角度に回転するので、量子コンピューターは半導体ベースのコンピューターより、はるかに強力なパワーを発揮します。
 この波によって、どんな未来が訪れるのでしょうか。

すべてがインターネット化する時代に起こること

 まず、近い将来、私たちはコンタクトレンズを通じてインターネットに接続します。まばたきするとオンラインとなり、目の前にいる人を識別してその人の情報を映し出してくれるようになる。
 インターネットはどこにでもあると同時に、どこにもない存在になる。つまり、目に見えることなく、環境に溶け込むわけです。
 医者と話したければ、壁に向かって話しかければロボットドクターが現れるでしょう。壁紙さえもインテリジェントになります。
 服も知能化するでしょう。もし一人で交通事故にあって、意識をなくしても大丈夫。身体の異変を感知した服が、救急車を手配。救急車が到着したときには、あなたが誰で、どんな病歴があるかも伝わっているので、すぐ正しい診断結果を出すことができます。一人で孤独に死ぬ必要は、もうありません。
 医療も大きく変わります。血液や尿、体液からガンの遺伝子を調べ、ガンが腫瘍になる10年前から検出できるようになる。
 細胞から、拒絶反応を起こさない臓器のコピーをつくり臓器移植できる技術は、すでに一部の臓器で実現しています。
 また、人間の脳をインターネットに接続する「ブレインネット」も夢の話ではありません。すでにマウスでは、記憶を記録することができています。
(metamorworks/iStock)
 最終的には、人間のあらゆる感情をインターネットで送ることができる世界がやってくるかもしれません。
 他人の「苦しい」「助けてほしい」という感情に対して、もしあなたがその痛みを直接感じることができたら。
 きっと人と人の関わり方は大きく変わっていくはずです。
 第5の波はまだ顕在化していませんが、物理学者は未来を確信しています。おそらく、私たちの予測は当たっているでしょう。
 私たちは「次世代」に行かなくてはなりません。

完璧な資本主義の時代、勝者になるのは誰か

 では、私たちはコンピューター革命と人工知能による最先端技術を持って、どこに向かうのでしょうか。
 私は、「資本主義の本質を変革すること」だと考えています。
 資本主義とは、需要と供給で価格が決定する私的所有権のことであり、現状は不完全なものです。
 今、モノの本当の値段はわからないし、あなたの手に渡るまでにどれだけ中間業者がいるのかも知り得ません。
 しかし、コンピューターは光の速さで物事を記録し、その不完全さを解消することができます。
 我々は、完璧な資本主義の世界に一歩踏み出すことができるのです。
 買い物に出かけたら、あなたのコンタクトレンズがあらゆるものをスキャンし、どこで一番安く買えるのか、だまして高く売ろうとしているのは誰かということを一目瞭然にします。
(metamorworks/iStock)
 つまり、需要と供給が完全にマッチするわけです。そうなると、勝者と敗者がはっきりと分かれます。
 たとえば、大きな敗者は価値を生まない中間業者です。
 しかし、単なる中間業者では倒産することに気づいた賢い人たちは、コンピューターが提供できないもの、経験やノウハウ、知識などを売ることで自分たちの価値を生み出し、生き残りを図るでしょう。その根源が知的資本です。
 近い未来、創造性、イノベーション、経験、ノウハウ、リーダーシップなどの知的資本を兼ね備えた知的資本家たちが最も重要なカギを握る時代がやってきます。
 最先端の技術は、私たちをこれまでとはまったく違う世界へと連れていきます。
 そこで、どう勝ち残っていくのか。みなさん、一人ひとりが今こそ改めて考えることが必要なのです。

成長する世界と取り残された日本の20年

夏野剛 アフターコロナに向け、一刻も早くコロナ前に戻ったらいいと思っている方、とくに経営者の中にはそういう方も多くいらっしゃると思います。
 しかし、よく考えてもらいたいのですが、コロナ前の日本って、そんなによい状況だったのでしょうか?
 コロナ前の20年は、IT革命に踊らされた時代でした。
 日本のIT革命元年は1996年、Yahoo! Japanがサービスをスタートした年といえます。当時は一人一台のパソコンも携帯電話もない時代です。
 しかし、そこからの20年においては、人類史上最も急速にテクノロジーが進化してきました。
 テクノロジーの進化は、生産性を向上させます。1996年と2019年で各国の成長を比べてみると、次のようになります。
 アメリカのGDP成長率165%に対して、日本はたった4%。
 生産性でも、日本は4.8%しか向上していないのに、アメリカ118%、イギリス74%、ドイツ52%、フランス51%と各国が軒並みアップしています。
 韓国にいたっては、GDP成長率は170%、生産性向上は138%です。
 世界中の国がGDPや生産性を大きく成長させ、それに伴い所得もアップしてきた。
 その中で、日本だけがすべての部分において停滞する状況が20年も続いてきました。

イノベーションを起こすのは経営者だ

 日本経済が停滞した大きな要因は、デジタル革命に乗り遅れたことです。
 これは技術というよりは、人のシステムの部分、社会の仕組みに根本的な課題を抱えていたからでしょう。
 日本では、年功序列、終身雇用、新卒一括採用……すでに終焉したはずの高度成長期のモデルが今も根強く残っています。
 たとえば、経団連の女性幹部はDeNAの南場智子さんただ一人です。そのほかは全員が60代以上の男性で、しかも転職経験がない。
 こんな状況では、新しいテクノロジーが生まれても、すぐにそれを取りに行く発想が生まれないのも当然です。
 イノベーションを起こせるのは経営者です。経営者が新しい人材や資金、技術を投入すると「決断」することでしか大きな変革は起こせない。
 現場から起きるのは、イノベーションではなく改善に過ぎません。
 ITがドーンと入ってきて、すべての業態にネットワークがつながるテクノロジーが普及し、モノのつくり方そのものが変わる、これが今起きているイノベーションです。
 日本企業が得意としてきた現場で改善を積み上げるプロセスでは、対応しきれない。
 それゆえ、国内に自動車メーカーが7社もあるのに、テスラが本格的にEVをやるまで誰もEVに乗り出せなかった。
 テスラがすごいのはEVだからではなく、ソフトウエアをアップデートすればいつでも最新式の状態の車に乗れるインターフェイスです。
 こうした考え方の変革は、30年間同じ会社にいる人たちだけで構成されたマネジメントでは、100%無理でしょう。
 この状況が続くと、いくら最新のテクノロジーが目の前にあっても、そこから新しいものを生み出すことはできません。
 高齢化が進めば、さらにこの傾向が強まる危険性がある。それが今の日本です。

「ソウゾウ」こそが、日本再生の道

 ですから、ビフォアコロナには決して戻ってはいけないのです。
 大事なのはテクノロジーを全面導入すること。優れたテクノロジーであれば、他社や他国の技術であるかどうかなど、出自はもはや関係ありません。
 あらゆるテクノロジーを集結させ、最も優れた製品やサービスをつくるしかありません。
 一方で、日本企業にはまだまだ資金、人材、技術力があります。
 個人金融資産は1907兆円、上場企業の内部留保は463兆円もあり、労働意欲の高い国民性、世界的にも高い技術力がそろっている。
 この余裕がある今こそ、日本企業が変われる最後のチャンスです。
 これから我々が目指す道は、2つしか残されていません。
 まずは、「過去と同じやり方をしない」強い意図を持って、イノベーションをつくり続けること。
 もうひとつは、グローバル市場に大規模に進出することです。
 これらを実現していくには、クリエイションの「創造」、イマジネーションの「想像」という2つの「ソウゾウ」を、社会や企業の中心価値にしていくことが大切になっていくでしょう。
 チャレンジを続けることで、これからの明るい日本はつくれる。みなさん、一緒にがんばりましょう。

100年先の未来ではなく、最新の「現実解」を届ける

村上慶 リンクスは、1990年に画像処理分野の技術商社としてスタートした企業です。
 2021年8月、活動範囲が多岐にわたるようになったことを踏まえ、我々はコーポレート・アイデンティティを再定義しました。
 技術立国・日本を取り戻すためのミッション、それが「世界の天才たちの夢を、ビジネスに。」です。
 私たちが送り出している技術は、まだ世界から発見されていなかった天才たちがつくりだしたものです。一方で、どんなに優れた技術であっても、正しく活用されなければ意味がありません。
 新しく生み出された技術がビジネスになれば、世の中がどんどんよくなっていく。その意味で、私たちのミッションは、世界中から天才を発見し、それぞれの現場に適応させていくために磨き届けることとも言えます。
 そして、究極の生産効率の最適解をお届けすることで「工場から人を消す」。このビジョンを実現していきたい。
(alvarez/iStock)
 私たちのお客さまは、製造業の生産や物流の現場でものづくりのオペレーションを支えている方々です。もちろん、お客さまが求めることは状況によりそれぞれ異なっています。
 しかし、みなさんが目指す方向性は「生産効率を上げる」ことです。
 私たちリンクスは、世界中から最適な技術を探し出し、組み合わせ、究極の生産効率を実現することで日本の国力を再び上げることを目指しています。
 しかし、生産現場を一気にすべて変えることは難しい。長年、お客さまと共に考え続けてきた私たちはそのことを知っています。そして今、早急に変えなければいけない現場が目の前にあることも、誰より熟知しているつもりです。
 そこで私たちは100年先の未来ではなく、今、解決しなければならない問題の「現実解」を提供していきたい。
 従来の世界では10年かかったことを、リンクスが手がけることで5年早める。その積み重ねが、次の世界をつくる。そう信じ、日々、世界中の技術を探し出しています。

天才の夢を現場に実装する「テクノロジープロバイダー」

 現在、我々は自らを技術商社ではなく「テクノロジープロバイダー」と定義し直しています。
 なぜなら、すでに商社、メーカー、コンサルという複数の役割を担うようになっているからです。
 理想工場を実現するためには、国内技術だけでなく、世界中の最先端の技術を取り入れなくてはなりません。
 海外ベンチャーを発掘して日本に導入するという、我々の商社的な役割はますます重要になるでしょう。
 加えて、もし理想工場に必要な技術がまだ世の中にないときは、自分たちでその技術をつくることも行っています。自ら工場を持ち、メーカーとして最先端の技術を提供する。
 さらに商品を提供するだけでなく、お客さまの課題解決を一緒に考える「伴走型技術支援」の拡充にも力を入れています。
 これまで、「画像処理」「エンベデッドビジョン」「ロボット」「IIoT(インダストリーIoT)」と活動の場を広げてきました。
 今後は理想工場を実現する上で、テクノロジーの進化の潮流を捉えながら、必要があれば取り扱う範囲もどんどん広げていきたいと考えています。
 我々から製造業の変革を担うみなさんへ、お伝えしたいことが2つあります。
 まず、理想工場を見据えて設計をしてください。オートメーションのさらなるレベル向上は、既存技術の延長では実現しません。
 そしてもうひとつ、汎用ツールをうまく使いこなしてください。
 差別化につながらないポイントに、エンジニアの工数を割いても競争には勝てません。
 私たちは理想工場を実現する上で、最も優れた技術を見つけて導入する、技術がなければつくる、そして伴走型技術支援を提供する。
 私たちが送り出す技術によって、これまでの製造現場をアップデートし、ものづくりに改革を起こしていきたい。
 強い想いを持ってみなさんと共に理想工場を実現し、「工場から人を消す」未来をお届けしたいと思っています。