2022/1/24

【初心者必見】株式投資の「はじめ方」をやさしく学ぶ

NewsPicks, Inc. Brand Design Editor
いまアメリカでは若者を中心に「株式投資」が社会現象になっている。
これまで富裕層だけの特権と思われていた“個人投資”だが、経済的に自立して早期リタイアを果たす「FIRE」、手数料無料の投資アプリ「ロビンフッド」などの台頭により、「株式投資の民主化」が加速している。
日本でも投資や資産運用に関心を持つ人は増えている一方で、興味はあるものの何から始めればいいかわからない、どこから理解すればいいかわからない。そんな悩みを抱いていることから、始める機会を逃してしまっている人は少なくないだろう。
そんななか株式投資に関する認識の是正を目指し、投資管理アプリ「マイトレード」を開発したのが河野紘一郎氏だ。
10万人を超える個人投資家から熱狂的な支持を受けながら、一度は2020年1月に惜しまれつつサービスを終了したものの、今年1月に待望の復活を果たした。
自身も個人投資家として活動しながら、10万人以上の個人投資家を支えてきた河野氏に、株式投資の始め方と鉄則、またマイトレードを通じて変える個人投資家の世界について話を聞いた。
INDEX
  • そもそも投資は本当に必要か?
  • 株式投資の「鉄則」
  • 投資初心者が陥りがちな「2つの罠」
  • 個人投資家を支える「マイトレード」
  • もっと「投資が身近な世界」を作りたい

そもそも投資は本当に必要か?

──日本でも株式投資や資産運用に関心を持つ人が増えている一方で、興味はあるものの、何から始めていいかわからない、どこから理解すればいいかわからないという声も多いのが現状です。
河野 日本で投資は「怪しい」「難しい」「ギャンブル」などのイメージがいまだに根強いのですが、すでに米国では株式投資は社会現象にまでなっています。
 日本でも一部の人の間では投資のムーブメントが起きているものの、一般の人にとっては、まだ株式投資を身近に感じるまでに至っていないのが実態だと思います。投資をしている人としていない人の間には、キャズムのような“深い溝”が存在しています。
──深い溝、ですか。
 2013年以降、アベノミクスによって日本の株価は上昇し、日経平均株価が30年ぶりの高値水準となりました。
 また、昨年の米株手数料の値下げで米株投資家が増え、コロナショックのリバウンドもあり、日本株でも米株でもこの10年で利益を出している個人投資家が増えています。
 実際、みなさんのまわりに投資で儲けている人もいると思います。しかし日本では「お金」の話をすることがあまりよしとされていないため、その人たちも公には話さず、投資を身近に感じる機会が非常に少ないのが実情です。
 結果として「まわりがやっていないから自分にも関係ない」と思い、投資の必要性を感じにくいのです。
──そもそも一般の人にとって、投資は本当に必要なのでしょうか。
 大前提として投資は自己責任ですから、やるかやらないかはあくまで本人が決めることです。
 ただ経済のグローバル化や物価上昇などにより、現代社会では自分の都合とは関係なく、お金の価値や経済状況が揺れ動いています。
 このような不確実性の高い時代に、自分の大切な資産を守り、増やしていくことは、とても重要なことです。
 加えて投資は社会や経済への関心が自然と広がる素晴らしい一面も持ちます。今日は1人でも多くの方にその投資の魅力を、実用的なノウハウも交えてお話しできればと思います。

株式投資の「鉄則」

──早速ですが株式投資の始め方について教えてください。
 まずは「どの銘柄が上がりそうかな」と宝探しから始めるより、株を購入したいと思った時に、すぐに買える状態にしておくことが大切です。
 証券会社に、口座を開くことから始めましょう。
 いざ株式投資をしたいと思っても、そもそも口座開設ができていないと、なんとなく始められないまま時間は過ぎてしまうものです。
──初めて開設する口座は、どのようなポイントで選べばいいのですか。
 手数料の安さや、少額から売買できるところを選ぶのが良いかと思います。ネット証券では、1日の取引が100万円までなら手数料0円の会社もあります。
──口座を開いたら?
 次は実際に売買してみましょう。いまある資金のなかで、「少額投資」でスタートしてみる。これが“投資の鉄則”です。
 トレーニングとして、ごく少額で取引できる商品を動かしてみましょう。まずはお金が増減する感覚と売買自体に慣れることが大切です。
──どのような商品を売買すればいいのですか。
 例えば日経平均株価やTOPIXなどの指数に連動するETF(上場投資信託)という商品なら、1株から売買できる。数百円や数千円で買って、同値で売るという体験が可能です。
 すると10分前に1000円で買ったものが、もう10円下がっていたりする。この時点で、初心者には少しショックなはずです。
 でもそこで持ち続けず、すぐに売って実際に10円損してみましょう。
──あえて、損する経験を積むと?
 そうです。同じ1%減でも、100万円で始めて1万円損したら辛いと感じますが、1000円に対して10円の損なら「これも勉強だな」と考えられます。
 こうして値が動いた時に自分がどう思うのかを体感しながら、実際に売買して、少しずつ経験値を積んでリスク許容度を上げていくことが大切です。
──リスク許容度とは?
 どれくらいまでならマイナスやプラスの変動(リスク)を受け入れられるか、資金と精神面の観点から冷静に判断・行動できるかという度合いのことです。
 このリスク許容度があれば、つい株価や為替の変動に一喜一憂したり、注目銘柄情報に踊らされたりすることを防げます。だから最初の数ヶ月くらいはコツコツとETFを売買して、このリスク許容度を鍛えるといいと思います。
──投資にもトレーニングが必要なのですね。
 一度買った株を塩漬けにする人は多いのですが、なかには「買った株を売る」という経験自体がない人もいます。経験がなかったり、少なかったりすると、怖くてなかなか実行できません。
 だから「習うより慣れよ」です。慣れてきたら、今度は自分が好きな銘柄や気になる銘柄を10個ほどリストアップして、その中からいくつか売買してみるといいでしょう。この場合も、少額、短期間から徐々に大きくしていくことが重要です。
 投資の世界は「想像」と「実践」が大きく異なります。ライフワークの一つと考えて、まずは「経験値」を積むことが大切です。

投資初心者が陥りがちな「2つの罠」

──投資初心者が陥りがちな「罠」はありますか。
 大きく2つあります。1つ目が、「お金を貯めてから、投資を始めようとする」こと。2つ目が、「勝っている人の真似をすれば勝てる」と思い込むことです。
 まず1つ目ですが、まとまった資金を貯めてから投資を始めてしまうと、その分投資リターンに対して過度な期待を抱いてしまいがちです。
 だからわずかな値下がりにも耐えられず、「せっかくコツコツ貯めた100万円を投資したのに、10万円も減ったじゃないか!」とがっかりしてやめてしまう。しかも好きで買った企業を嫌いになってしまったりする。これでは本末転倒です。
 また貯めたお金でいきなり多額から始めると、損失が出た時の額も大きくなりやすい。
 私がインタビューした個人投資家の中には、60代後半で退職金をすべて投資に注ぎ込み、1年で4割飛ばした人もいました。
 しかも最悪の場合、多額の損失を取り戻そうとしてさらに無理な投資を続け、どんどん損失を膨らませてしまう人もいます。
 とにかく、一発で大きく当てようとしないこと。多額のマイナスがトラウマになり「私には合わない…」と投資を嫌いになることは、人生にとって損失です。
 勝ち負けどちらも受け入れるのが投資のため、まずは「負けても投資を嫌いにならない」程度の額で始めることが最も重要です。
 初心者が大きな額から投資を始めるのは、オススメできません。
──2つ目の真似については?
 「勝っている人の真似をすれば、自分も勝てる」と考えるのも、初心者が陥りやすい罠です。もちろん投資の上手い人から学べることはたくさんありますが、すべての情報を開示している訳ではないですし、おすすめの投資手法も初めから実践できるかというと話は別です。
 例えば投資の世界では「上がっている銘柄は持ち続けて、下がった銘柄は損切りする」が勝ち方のセオリーとされ、実際にこの方法で儲けている人がたくさんいます。
 そのため多くの人は、「自分も真似しよう(真似できる)」と考えます。ところが現実に自分のお金が増減するのを目の当たりにすると、想像した通りには行動できない。
 例えば自分が100万円を投資した姿を想像してみてください。もし10万円株価が下がったら、株を簡単に手放せますか。
──セオリーでいうと損切りすべきですが、「いつか上がるんじゃないか」と諦めずに保有し続けてしまいそうです……。
 そう。頭ではわかっていても、損切りせずに塩漬けにしてしまうことがよくあります。
 確かにそのまま保有していることで、プラスに転じることもあります。ですが、損失が拡大してしまって取り返しがつかないところまで保有し続けて、最終的に大損する投資家もいます。
 人間はその場その場で自分に都合よく考えて、判断を変えてしまいがちです。気付けば、真似でもなんでもない状態に陥っています。
 繰り返しになりますが、このように投資の世界は、「想像」と「実践」が大きく異なることを理解する必要があります。
──実際にその場面を経験しないと、自分がどう行動するかはわからないのですね。
 これまで多くの個人投資家と会ってきましたが、普段の性格と個人投資家としての性格が違うんですよ。いつもは論理的に物事を考えられる人でも、投資となると冷静に判断ができない。
──個人投資家としての性格とは?
 個人投資家としての性格は、前述した「リスク許容度」と「成功体験」で決まります。
 特に初心者はリスク許容度が低く、成功体験もありません。だから資産が増えたり減ったりすることに気持ちが追いつかず、想像と実践が乖離しやすくなる。
 そのためリスク許容度を鍛えながら、いろいろな方法を少額で試してみて成功体験の数を積み上げるというプロセスが大切なのです。その過程のなかで個人投資家としての自分に合った投資手法を模索することが必要になります。
 次第に、成功体験によって個人投資家としての性格も変わり、いままでできなかった投資手法も実践できるようになっていきます。

個人投資家を支える「マイトレード」

──自分に適した投資手法に出会うために、できることはありますか。
 やはりまずは個人投資家としての性格を理解すること。そのためには自分自身の投資傾向を知るために、「振り返り」の習慣を作ることが必要です。
 私たちが提供する投資管理アプリ「マイトレード」は、まさに個人が自分の投資を振り返り、自己管理する文化を世の中に生み出したサービスです。投資の「経験値」を見える化することで、個人投資家を支えることを目指しています。
──そもそも証券会社などで振り返りができるようなサービスは提供していなかったのですか。
 証券会社などの金融機関もアプリやサイトで情報を提供していますが、市況データや株価チャートなどが中心です。個人が「取引の記録」や「損益の推移」をスムーズかつ詳細に確認できるような機能は提供できていません。
 なぜなら金融機関は、つみたてNISA、iDeCoと毎年のように取り扱う金融商品が増えるため、そこへの対応に奔走されています。
 企業の業績やニュース、値上がりランキングなど、投資対象の情報や売買機能は充実していますが、取引を振り返る領域まではカバーしきれないのかと思います。
 一方マイトレードは、取引を株価チャート上で振り返ったり、特定の期間でどの銘柄でどれだけ儲かったかを調べたり、画像付きで取引メモを残すなど、取引管理に特化しています。
 だから証券会社は取引をするサービス、マイトレードは投資の自己管理をするサービスと捉えていただけるとイメージしやすいかと思います。
──「マイトレード」はかつて10万人以上のユーザーに利用されながら、2020年1月に惜しまれつつ一度はサービスを終了。ですが2021年1月にベータ版をリリース、今年1月に正式リリースしています。
 当時私たちが企画した旧マイトレードは、残念ながら終了してしまいましたが、今回復活できたのもユーザーのみなさまから大変多くの声をいただけたからです。
 サービス終了後も、Excelなどを使って旧マイトレードを模した取引履歴チャートを自作してTwitterに投稿する人が続出したほど、多くの個人投資家に愛されていました。
 そこで改めてこのサービスの必要性を実感し、復活に至りました。実は今回の新マイトレードは、NTTドコモ初のコンシューマー向け内製開発アプリです。
 旧マイトレードは外部に委託開発・ライセンスしていましたが、新マイトレードは中長期的に取り組み大きなゴールに辿り着くために、自分たちで企画・開発・デザインすべてを行うスタイルを取りました。
 NTTドコモは、iモードを通して社会のさまざまな領域を楽しく便利にした、イノベーションのDNAが根付いている企業です。新規事業創出プログラム「39works」や「docomo LAUNCH CHALLENGE」「docomo academy」など、私が所属しているイノベーション統括部からドコモグループ全体にもさまざまな取り組みを行っています。とにかく挑戦できる新規事業領域は幅広い。
 本来は通信会社なのに、「社会をよりよくすることなら応援するよ」という懐の深さがあります。「マイトレード」を発案した2016年当時も「こんな案件は通らないだろう」と思って社内に提案しましたが、多くの方々に後押しされ大きなチャレンジができました。いま考えても、NTTドコモでなければ生み出せなかったと思います。

もっと「投資が身近な世界」を作りたい

──個人投資家を支えるために、今回のサービス開発で特にこだわった点は?
 画像付きでメモを残せる機能を追加するなど、振り返りの機能を強化しています。売買したら、その理由と感情をメモして、売買した時に参考にしたニュース記事や証券アプリの画面スクショを記録する。
 例えばNewsPicksで見た記事やコメントなどを記録として残すことも可能です。それが個人投資家として、振り返りができる貴重な資産になります。
 他にも、旧マイトレードでは過去200件の取引から可能な限り逆算していましたが、今回はその期間を過去数年間まで延長しています。以前は正しく扱えていなかった現引・現渡への対応や、取引が大量の方にも便利にお使いいただけるように取引を銘柄ごとにまとめるなど、データの構造とロジックをゼロから見直しています。今後もさまざまな改善を行っていきます。
 加えてセキュリティやデータの扱いにも力を入れています。他の投資関連アプリでは、個人単位のデータを匿名加工して外部提供できるようにしているものもありますが、「マイトレード」ではそのようなことは行いません。
 私たちは日本の投資環境を変えるために真剣にこのサービスに取り組んでおり、ユーザーのデータを手厚く保護しています。
──「マイトレード」を通じて、どんな世界を実現していきますか。
 もっと投資が身近な世界を作りたい。それが私たちの想いです。負のイメージを払拭し、日本全体の金融リテラシーを向上させたい。
 そのために、金融教育のあり方の一つとして「投資教育サービス」も検討中です。
 中高生向けに「マイトレード投資部」を作り、親の許可を得て子供が口座を開設し、実際に投資をしながらマイトレードで記録をつけて経験値を上げていく。
 その記録を一緒に見ることで、親世代の金融リテラシーも上がるのではと考えます。「マイトレードfor親子」と題して、そんな取り組みもできたらいいなと考えています。
──親子が一緒に経験値を高めれば、日本人の投資に対するリテラシーは一気に上がりそうです。
 今後の取り組みの中で、「投資する人はカッコいい」と思われる文化を作りたいと考えています。もしかしたら自分のお金が減るかもしれないのに、値動きする商品に自分の資産を入れる。
 リスクを理解しつつ行動できる人は、若者だろうが高齢者だろうが、男性だろうが女性だろうが、カッコいい。少なくとも、私はそう思っています。
 普段の何気ない会話で、「投資始めたんだよね」と言ったら、周囲がネガティブに感じるような世界ではなく、その挑戦が評価されるような世界にしたい。
 投資家の本質は、自分で意思決定をし、リスクテイキングすることです。つまり「考えて勝負する」こと。
 この投資家マインドを日本に広め、個人投資家が「カッコいい」と言われるカルチャーを作る。そして1人でも多くの人がご自身の資産を守り増やす。そんな世界を実現するのが私の夢です。 
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