株式会社ユーザベースは、2021年12月16日に長期戦略説明会を開催しました。当日の様子をほぼ全文採録でレポートいたします。

【登壇者】
代表取締役Co-CEO 稲垣 裕介
代表取締役Co-CEO 佐久間 衡
執行役員CFO 千葉 大輔
司会 みなさま、本日はお忙しい中ご参加いただき、誠にありがとうございます。定刻となりましたので、ただ今より株式会社ユーザベース 長期経営戦略説明会を開催いたします。
それではまずはじめに登壇しております当社役員をご紹介いたします。
株式会社ユーザベース 代表取締役Co-CEO 佐久間衡、代表取締役Co-CEO 稲垣裕介、執行役員CFO 千葉大輔、以上3名でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
佐久間 本日はユーザベースの長期経営戦略説明会にご参加いただき、ありがとうございます。オンラインで普段の決算説明会より多くの方にご参加いただいていると聞いております。お時間を割いていただき、ありがとうございます。
私、先日の決算説明会で直前に盲腸になってしまい参加できず、本当に申し訳ございませんでした。今はもう完全に復調いたしましたので、本日は元気にお伝えさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
佐久間 今年2021年から稲垣・私の経営体制に変わりました。そこから5年、2025年に向けて、我々がどういう世界を目指し、そこにどういう戦略で向かっていき、どういう経営数値を目指していくのかということを、本日お伝えさせていただきたいと思います。
最初に資料の前提に関してお伝えさせてください。3つございまして、1点目が利益指標、EBITDAですね。来期から、より株主の皆さんとしっかり目線を合わせて経営するためにも、株式報酬の導入を検討しております。株式報酬の調整として、来年以降のEBITDAに言及する場合は、株式報酬費用を足し戻した調整後EBITDAを使っている点にご留意いただければと思います。
2点目は業績の数字です。過去の連結の業績に関しては、Quartzを含んだ数値を使用しております。
3つ目はセグメントの区分ですね。来年に向けてセグメントを変更する予定であり、この資料ではそれを先行的に反映しております。どういう区分けかと申しますと、来年以降SaaS、NewsPicksという2つのセグメント区分にしていきたいと考えておりまして、今までSPEEDA事業、その他B2B事業と開示していたものを、まず1つにまとめます。
そこにNewsPicksの中で法人ソリューション事業を提供しているAlphaDrive / NewsPicks事業ですね。AD/NP事業という略称で今後呼ばせていただきますが、それをSaaS事業に含めていきます。SaaS事業は全てNewsPicksのコンテンツを使っておりますし、AD/NPだけを別にするのは実態に合わないので、SaaS事業としてまとめて開示し、NewsPicks事業は広告、有料課金、その他の事業という形で、すっきりしたシンプルにした構成でお伝えできるかなと思います。
この3点にご留意いただければと思いますよろしくお願いします。

企業概要

最初に企業の概要をお伝えします。
我々2008年に設立した会社でして、今グループ従業員は743名、連結ARRが116億円、SaaSのARRが91億円、NewsPicksのARRが25億円です。
先日の決算説明会資料に出した数字と一部変わっておりまして、それはAlphaDrive / NewsPicks事業のARRが6億円ですので、それがNewsPicksからSaaSに移ったとご理解いただければと思います。
ここでARRを出しているように、ユーザベースは安定的な収益でしっかり持続的に成長していくことを重視しておりまして、サブスクリプションの売上高比率が73%です。
それ以外にNewsPicksの広告事業の売上やSaaS事業の中のコンサルティング的な売上が一部入ります。
こちらのページでは我々の沿革を示しております。国内・グローバルともにいろいろなプロダクトを出して挑戦を続けてきております。
特に2013年のタイミングでNewsPicksを立ち上げ、SPEEDAも海外に進出しました。直近5年は大きな展開が続いておりまして、FORCASを立ち上げ、INITIALを子会社化し、AlphaDriveを子会社化し、MIMIRを子会社化し、直近2年ではFORCAS Sales、SPEEDA EXPERT RESEARCH、SPEEDA Edge、SPEEDAのR&Dプランという新プロダクトの提供を開始しております。
Quartz事業は失敗し撤退したわけですけども、ここに書いているSaaS事業のM&A、INITIAL、AlphaDrive、MIMIR、これらは全て大成功しておりまして、そのM&Aの成果についても後ほどお伝えさせていただければと思います。
我々のサービスは大きく2つ。SaaSについては、経営のど真ん中の価値を届けるサービスを展開しております。事業戦略、顧客戦略、組織戦略、それぞれで、顧客起点で、変化にスピーディーに適応する経営、アジャイル経営の実現をサポートするサービスを提供しております。
もう1つのサービスがNewsPicksですね。国内最大規模の経済ニュースメディアを運営しております。
我々の最大の特徴としては、この2つが非常に絡み合っている、かつSaaSに関して共通のデータを用いているという部分です。
企業・業界データベースを用いたSaaSを提供していますが、これらは全サービスで共通しておりまして、さらにNewsPicksのコンテンツも全てのSaaSで利用している。
昨年買収したMIMIR。NewsPicks Expertと名称変更しました。NewsPicksの最大の価値の1つが豊富な知見を届けるコメント欄ですが、NewsPicks Expertからコメント価値を引き上げるプロピッカーが生まれています。また、SPEEDA上ではエキスパートリサーチという価値を届けております。
このような形で企業・業界データベース、NewsPicks、NewsPicks Expertと共通の経済情報を活用してサービスを展開しております。
したがって、共通の経済情報に対する投資効率が非常に高い状態を実現しております。それにより高い競争障壁を実現し、高成長と高収益を両立できると考えております。

実現したい世界

次に我々が実現したい世界に関してご説明します。
これまでミッションを掲げてまいりましたが、それをパーパスに変更していきます。
「経済情報で、世界を変える」というミッションを掲げており、このミッションのもといろいろな事業が生まれ、成長することができてきました。
今これをパーパスに変更した理由が2つあります。1つは社内ですね。ユーザベースの中。本当にいろいろなサービスが生まれてきたので、最終的に目指したい世界をよりクリアに具体化していかないと、サービス間の連携を深め、全体として大きな力を実現することが難しい。逆に目指す世界をクリアに共有できれば、多様な事業間の大きなシナジーが実現できていく。
もう1つは社外ですね。我々だけで「世界を変える」という大きなことはできないので、目指す世界をしっかり具体化して、そこに共感してくれる社外の方々、いろいろな企業・個人の方々と一緒に実現していきたい。そのために、自分たちだけを向いたミッションではなく、目指す世界を具体化し、社会と共有するパーパスに変更していきます。
こちらが我々のパーパスです。「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界を作る」。このパーパスは、私と稲垣の新しい経営体制になって1年、特に社内のメンバーと議論を重ね、ユーザベース全員で作り上げてきたパーパスです。
誰もがビジネスを楽しめる世界とは何なのか。我々は社会、企業、個人それぞれのパーパスが調和的に実現されている世界だと考えています。サステナブルな社会の実現と経済的なリターンを上げていくことは決して矛盾しません。
そして自分たちの子ども含め、将来に不安がない状態を作ってこそ、しっかり今を楽しみ、ビジネスを楽しみ、人生を楽しむことができる。個人のパーパスが企業のパーパスと一部でも一致して、企業がそのパーパスの実現に近づいていくことに共感できてこそ、よりビジネスを楽しみ、人生を楽しむことができる。そういう世界の実現を目指していきます。
我々のコアなアセットは経済情報です。データ・コンテンツ・人の知見。これを人とテクノロジーの力で増幅し、誰もがビジネスを楽しめる世界を実現していきます。
データ・コンテンツ・人の知見・テクノロジー・ビジネスを楽しむという我々のパーパスのキーワードに関して、具体的にどういうふうに、どのような世界を作っていくのかを、文章にしました。
例えば「テクノロジーで世界を変える」という部分は、
テクノロジーの力を信じる。人の創造性をテクノロジーで増幅することこそが世界を変えると信じる。人の手だけではなく、テクノロジーを用いたプロダクトを通じてユーザーに価値届ける。社内のプロセスも自動化を進め、テクノロジードリブンの新たな企業モデルを社会に提示し続ける。
このようなより具体化されたメッセージを、我々のみならず社会全体と共有して、「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」を実現していきたいと考えています。
これが我々のビジネスとどう紐づいているか。我々は企業、個人それぞれにサービスを提供しています。
企業向けのサービスに関しては、顧客起点で変化にスピーディーに適応する経営、アジャイル経営を広めていく。これは日々顧客に接する人自身が、「成果がしっかり顧客に届いている」という実感を得て、意思決定に関与し、現場起点で変化に適応していくという、まさに誰もがビジネスを楽しめる社会を実現する経営だと考えています。
そのために、SPEEDAであれば競争環境分析を高度化・自動化し、変化にスピーディに適応する経営を実現していく。FORCASでは、顧客分析を高度化・自動化し、顧客分析をマーケティング、営業につなげる経営を実現していく。AlphaDrive / NewsPicksでは、自律的な人材を増やし、新たな顧客価値が探索され続ける組織をつくっていく。
個人向けのサービスでは、より直接的に、ビジネスを楽しみ、行動する人を増やしたい。NewsPicksのスローガンは、「経済を、もっとおもしろく」です。経済に関心を持ち、ニュースを楽しむ人を増やしていく。それがさらに学びにつながり、社会課題を解決する行動につながっていく。そういう人を増やしていきたい。
そして様々な社会課題を解決するには、多様なバックグラウンドを持つ人の知見の循環が必要だと考えています。我々は特にNewsPicks ExpertやNewsPicksを通じて人の知見を循環させ、社会課題の解決につながっていく。そういうサービスを目指していきたいと考えています。
そして、この2つが価値を届けたい先が重なります。SPEEDA、INITIALは事業戦略、FORCASは顧客戦略、AlphaDrive / NewsPicksは組織戦略や事業戦略に関するサービスを提供しています。これらは全て経営の最重要テーマであって、企業経営に関わる人にサービスの価値を届けていくことを目指しています。
NewsPicksが価値を届けたい先はより広い。ビジネスパーソン全体や学生の方等も含みます。ただ、日本を変え、世界を変えていくためには企業を変えていく必要があり、企業経営に関わる人がコアなターゲットになります。なので、サービスの価値を届けたい先は、SaaSとNewsPicksで一致すると考えています。
パーパス実現のために、SaaSとNewsPicksを融合していきます。
これが本日最大のメッセージです。
SaaSとNewsPicksの融合とは何なのか、そこで実現する効果は何かということをご説明します。まず定性的な話として、NewsPicksユーザーをしっかり増やし、そのNewsPicksユーザーから次々にSaaSユーザーが生まれる状態を作っていきたいと考えています。
この図の逆側として、増加したNewsPicksユーザーの中から、次々に知見を共有するエキスパートが生まれることを目指します。そうして様々な専門性や多様性を持った人の知見へのアクセスを容易にする。なかなか人の知見へのアクセスというのは簡単ではない。そこにSaaSを用いて、経営課題と人の知見とのマッチングを実現していく。
そうして様々な多様な人の知見が企業経営の中で生かされ、誰もがビジネスを楽しめる世界に近づけていきたいと考えています。
定量的な効果としては、SaaSのマーケティング効率を飛躍的に向上させる。今、日本には多数の優れたSaaS企業があります。そのSaaS企業が成長するために、多額のマーケティング投資を、例えばテレビCMや交通広告等に投下しています。
我々もSaaSが高成長を続けるためには、マーケティング投資を巨額化させていかなければいけない。そのマーケティング投資を外部化するのではなく、部分的にでもNewsPicksを活用して内部化し、マーケティング効率を飛躍的に向上させていきたいと考えています。
これはNewsPicksとSaaSでターゲットユーザーが同じであるからこそ、長期的に実現できると考えています。
同様に、この図の右側ですね。新規エキスパートの獲得効率を飛躍的に向上させ、たくさんのNewsPicks Expertの方に我々のネットワークにご参加いただきたいと考えています。そうすることで人の知見、最も貴重な経済情報をしっかり集積する構造を作ります。
それを全てのSaaSに接続し、様々な業務の場面で実際に活用される状態をつくり、長期的な競争優位性を実現していきたいと考えています。
すでに実現されているSaaSとNewsPicksの融合に関してご説明します。
SPEEDAのコアコンテンツはNewsPicksと記事なんですね。これはあまりお伝えする機会はなかったと思うんですが、私が実際SPEEDAのユーザーさんにインタビューをしていると、「SPEEDAで一番なくなって困るのは、トップの企業経営者への切れ味鋭いインタビュー記事だよ」みたいなことをよく言われます。それはそれで他の価値をしっかり感じでいただきたいという点はあるんですけれども、それくらいNewsPicksオリジナル記事が、SPEEDAの中でコアな価値になっています。
NewsPicks Enterpriseですね。これ先ほど申し上げたAlphaDrive / NewsPicks事業のサービスです。こちらは2019年秋からサービスを展開しておりまして、NewsPicksのコンテンツを起点に組織を改革していくというサービスを展開しております。
また、今年からINITIAL、FORCAS SalesでもNewsPicksの記事の活用を開始し、ユーザーの方から好評を得ております。
なのでNewsPicksのコンテンツの価値を最大化する意味でもSaaSが必要というように、相互に補完関係があると考えています。
SaaSのマーケティングにおけるNewsPicksの連携についてお話します。
コロナのタイミングでSaaSのマーケティングは大きく変わりました。それまでマーケティングにおいて、メインのチャネルの1つだったオフラインイベントがほぼ実施不可能になり、それをいかにオンライン化するか。そこに我々は取り組み、SaaS企業の中でも先端的な価値をつくることができたと考えています。
ここに書いているのは、SaaSのマーケティング目的のオンライン番組ですね。これらは毎回数千人規模の方に参加いただき、リード化することができています。しかも企業経営に関わる方が非常に多いんですね。
コロナのタイミングでマーケティングが大きく変わり、オンラインイベントの重要性が非常に高まっている。参加者のNewsPicks認知度も高く、NewsPicksと非常に相性が良いので、今後NewsPicks経由でこのような番組を提供し、NewsPicksユーザーがSaaSユーザーにどんどん転換していくファネルを、長期的に作っていきたいと考えています。
経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる。そのためにSaaSとNewsPicksを融合します。NewsPicksのユーザーを増やし、そこから多くのSaaSユーザーを生む構造をつくっていきます。

実現できる理由

次にそれをなぜ我々が実現し、高成長できるのかという理由を説明いたします。
理由はシンプルです。Must-haveなSaaSを次々につくることができる。NewsPicksのユーザーをしっかり増やしてくことができる。この2つに関してご説明します。
SPEEDAの解約率は1.0%を達成することができました。
解約率がコロナのタイミングで上がってしまい、これを2021年末までに1.0%の水準に戻していくということをコミットしまして、今まだ2021年は終わっていないんですけども、年末の解約率の数字は一定見えておりまして、1.0%を達成できることが明確にわかっています。
これが1つの明確な証拠ではないかと考えております。我々はユーザーの理想から始め、Must-haveなサービスをつくることができると考えています。数値開示はしておりませんが、FORCAS、INITIALなど全てのサービスの解約率も順調に低下しています。
次に我々の伸びしろですね、しっかりサービスをつくることができる、それを伸ばしていくことができるということに関してご説明します。
市場規模の説明に関して、改めて今回言葉をしっかり定義して説明させていただきたいと考えています。
まず我々が届けているサービスの価値ですね。SaaSについて、先ほどもお話しましたように経営のど真ん中、事業戦略、顧客戦略、組織戦略、その価値を届けている。これは経営コンサルティングという市場をクラウド化し、高度化し、民主化していくことにつながる。
このTotal Addressable Market(TAM)、最終的に到達可能な市場規模ですね。それが国内でいうと1.2兆円。グローバルだと20兆円。ともに高成長を続けている市場ですが、これが最終的に我々が到達することができる市場規模であると考えています。
一方、我々がこれまで説明会等でお話させていただいていた市場規模ですね。こちらはServiceable Obtainable Marketの略でSOMと言いまして、今のサービスでしっかり価値を届けられる市場です。
我々は高度な顧客戦略を実現できるFORCASを内部に持っておりますので、FORCASを活用して、今お見せしている1,125億円、これは全て企業名までバイネームで特定できております。これらの企業の方には、今のサービスでしっかり価値を届けられる。その市場規模であるSOMが、SaaS事業合計で1,125億円あると考えております。
したがって我々の前年度のSaaS事業の売上高は75億円でして、その10倍以上のSOMが見えておりますし、最終的には国内1.2兆円、グローバル20兆円の市場を目指していきたいと考えています。
このSOMは静的なものではなく、新機能の追加、新規プロダクトの開発によって拡大しています。こちらに載せているのがその推移ですね。
我々が2009年にSPEEDAをリリースしたタイミングで、証券会社、コンサルティングファーム等の市場が特定できておりまして、そのときのSOMが120億円。それからSPEEDA自体も事業会社に広く価値を届けられるようになり、INITIAL、FORCASといった新たなサービスをリリースし、2017年時点でのSOMが415億円。
今、それに加えて、AlphaDrive / NewsPicks、SPEEDA EXPERT RESEARCH、FORCAS Sales、SPEEDA R&Dなどいろいろなサービスが加わり、これが1,100億円を超える規模まで成長してきております。繰り返しになりますが、ここは企業名までバイネームで特定できている市場規模でして、今のサービスでしっかり価値を届けられる市場規模だと考えています。
しっかりリーチできる市場規模を拡大できるのはいいと。ただ実際に成長できるのか? という部分にお答えしたスライドです。SaaS事業における複数プロダクトの成功実績を示しています。
全プロダクトで高成長することができておりますし、特に近年FORCASですね。リリースから約4年で、ARR15億円を達成している。冒頭にお伝えしたSaaS事業に移動したAlphaDrive / NewsPicks事業に関しては、リリース後1年半、非常に短い期間でARR6億円を達成しています。
なぜこれができるのかと申しますと、経済情報というコアセットがあり、それを用いてSaaSをつくることがスピーディーにできますし、そこでユーザーの理想を実現するノウハウが蓄積されているからですね。なので今後も新規プロダクトはリリースし続けますし、そこには我々のアセットとノウハウが蓄積されて、短期間で高成長を達成できると考えています。
こちらは冒頭の沿革で申し上げたM&Aの成功実績です。
INITIALに関して、2017年から連結化して約4年半ぐらいですかね。それで12倍の規模に成長しております。MIMIRについては2020年5月より連結化しまして、それから1年と少しで約3倍の規模に拡大しています。AlphaDriveに関して、2019年11月より連携連結化し、2年経っていない状態で4倍の規模に拡大しています。
このようにSaaS事業のM&Aは全て成功しておりまして、しかもこれまでプロダクトを持たず、例えばデータベースやノウハウ、そういうものを持っている会社、MIMIRとAlphaDriveを買収し、それをプロダクト化し、SaaSとして高成長を実現することができてきたと考えております。なので、今後もM&Aは我々の主要な成長戦略の1つとして、しっかり投資を続けていきたいと考えています。
こちらはちょっとテクニカルな指標ではあるんですが、売上高成長率とEBITDAマージンを足し合わせた数値です。主に米国で「Rule of 40%」という言葉がございますが、成長と収益それぞれを足し合わせた指標で40%を超えると、優れたサービスであるというような見方がございます。
我々は高い成長率と高収益を両立し続けていきたいと考えておりまして、この数値で見ると50%を超える数値で、国内でもトップクラスの数値であると考えています。
これがたまたま良かった数値というわけではなく、こちらで過去の推移を示しています。
一番上の濃い黒色の部分が売上高成長率とEBITDAマージンを足した数値でして、1つ下が売上高成長率の数値、その下がEBITDAマージンの数字ですね。
50%を継続的に超えており、長期にわたって高い成長率と高い収益性を両立することができている。今後もしっかり高成長と高収益を両立できると考えています。
次にNewsPicksのユーザーを増やし、成長することができると我々が考える理由に関してご説明します。
これはNewsPicksの伸びしろを端的に示すグラフです。
NewsPicksはここまで高成長を続けてきましたが、NewsPicksの認知率は他の経済メディアと比較して約半分で、まだまだ大きな伸びしろが存在します。
この伸びしろをどう捉えていくのか? 我々が勝ち筋を見い出しているものが動画です。
これはコロナのタイミングの後のスマホをどのように利用しているのかという調査ですね。動画の視聴が66%を占めています。ニュースの約2倍の大きな市場がございます。ここにしっかり経済コンテンツを届け、市場を獲得していきたいと考えています。
我々は4年前から動画コンテンツに取り組んでおりまして、今年も非常に多くの新たな経済動画番組をスタートさせています。その経験の蓄積があり、どのような番組がユーザーの視聴につながって、見られるだけではなくて有料会員の獲得につながるのかということを、長い期間をしっかりデータ分析し、把握し、しっかりユーザーに刺さり、経済的な成果にもつながる効果的な動画コンテンツをつくることができると考えています。
投資家の方にはあまり知名度がないので、ぜひNewsPicksアプリを開いていただいて、「番組」というタブがございますので、例えばここで加藤浩次さんが司会を務める「2 sides」ですとか、左下にある成長企業を根掘り葉掘り調べていく「デューデリだん!」ですとか、そういった番組をぜひ見ていただきたいなと思います。面白い!と思っていただけるかと。我々はこの番組ラインナップに自信を持っています。
実際に有料会員の獲得に関して、動画が占める割合が大幅に増えてきています。YouTubeなどを獲得のチャネルとして、動画経由での有料会員獲得が非常に効率的に伸びておりまして、今は30%を超えています。これが近い将来50%を超えてくると考えています。
そして重要なのは、解約率ですね。特に経済の動画マーケットに勝機を得て、ここの認知を取りに行く、そのためのマーケティング投資を増やしていくことを考えています。ただ、マーケティングで新規会員を獲得しても、すぐに辞められたのでは全く意味がありません。
なので直近3年ぐらいですね。新規会員の獲得というよりは、コロナで一気に新規獲得が増えた時期はあったんですけれども、それより今の会員に継続してお使いいただくという開発を過去3年、優先してやってまいりました。
その結果として、このグラフに2.7ポイントという数字がございますが、解約率をしっかり低減することができました。これは新たに会員を獲得すると、その方が継続的にNewsPicksを使っていただけるということを意味します。この状態がしっかりできましたので、マーケティング投資を増やして、動画価値を訴求し、ユーザーを増やしていけると考えています。

2025年に向けて

次に2025年に向けての数値計画を含んだ話をさせていただきます。
2025年に向けて、連結売上高の成長率はCAGR(Compound Average Growth Rate/年率平均成長率)で30%を目指していきます。これは以前にお話させていただいた数値と変わりません。
特に2022年について、SaaS事業の人員拡大への投資をしっかりやっていく。NewsPicksのマーケティング投資をやっていく。そしてユーザベース連結のEBITDAは10〜15億円程度の規模を想定しています。これは今年の着地見込みより低い数字なので、2022年を収益性のボトムとして、そこからしっかり収益性を回復させていき、2025年に連結EBITDAマージン15%、これまで我々が達成できていない数字を達成したいと考えています。
特に投資していくのが、SaaSですね。SaaS事業のポートフォリオマネジメント、投資方針に関してご説明します。
経済情報を共同活用したSaaSを、我々はどんどん生み出しています。左にあるほど新規立ち上げフェーズですね。右にあるほど安定成長になり、収益性がしっかり出せるフェーズになってきたということを意味します。
まだ新規事業立ち上げフェーズであり、高成長を記録しているサービスがたくさんあります。特に濃い青でハイライトしているSPEEDA EXPERT RESEARCH、FORCAS、AlphaDrive / NewsPicks、この3事業に2025年に向けて大きく投資していきたいと考えています。
成長率が下がれば収益性を高め、この成長と収益のバランスをしっかり取っていきます。
成長のための投資に対しては、事業別の投資規律が必要だと考えています。
SaaS事業に関しては先ほどRule of 40%を説明させていただきましたけど、まさにその数値ですね。全事業、売上高成長率+EBITDAマージンの合計率40%以上というものを目安にしていきます。これは今、しっかり達成できている水準です。
NewsPicks事業に関しては、先ほど動画領域に特に勝ち筋があるというような話をしましたけど、マーケティング投資に関しては当然不確実性がございますので、段階的にその効果を見極めながら投資していきます。ユーザーのLTV(Life Time Value/顧客生涯価値)が明確に獲得コストを上回っている。それを投資条件にして、段階的に投資を進めていきます。
マーケティングが効率的にしっかりROI高く実現できれば、2022年、来年にはNewsPicks事業で一定の赤字になることを許容します。ただその場合でも、2023年にはNewsPicks単体で黒字化することをマストの条件にしていきます。
この部分ですね。NewsPicksのマーケティング投資のブレがあるので、来年のユーザベースの連結EBITDAとしては、10〜15億円というブレがある数値でお伝えさせていただいております。
新規事業に関しては、例えばAlphaDrive / NewsPicksに関しては1年半ですし、まだ3年経っていないものもあります。全ての新規事業に関して、今後出していくものも含めて3年以内に単月黒字化していくと。これは当然、FORCASやINITIALも達成しておりまして、これをクライテリアにして新規事業をつくっていきたいと考えています。
事業モデルの転換ですね。どうやってSaaSとNewsPicksを融合していくのか。
SaaSに関しては、パーパスの話でもお伝えした通り、「経済情報で、世界を変える」という、ある意味解釈の余地が広いミッションのもと、バラバラに成長してきたというような過去がございます。
2020年に私がSaaS担当の取締役になり、2021年から全体の代表も稲垣と一緒に務め、この構造を変革しています。
まずユーザーIDをNewsPicks IDに共通化していく。これでNewsPicksからSaaSへのユーザーの転換を可視化し、効率化できますし、それのみならずSaaS間でのIDが統一化されることで、SaaS間でのクロスセルが非常に効率的になることが期待できます。
次に共通データの利用ですね。これも冒頭に説明させていただきましたが、一部バラバラに使っている状態であったデータの利用というものを、企業・業界データベースを統合しまして、そこからAPIベースで各サービスへ理想的に活用できる体制をつくってきました。
これで我々のデータへの投資が非常に効率的に行える土台が作れましたので、共通データへの投資を拡大させていく。そのためにも、UB Datatechという会社を設立しております。
NewsPicksに関して、有料会員の成長が鈍化してきたと。いきなりそのタイミングで新規獲得を追うというよりは、まずしっかり継続的に使ってもらう状態を目指して、解約率を大幅に低下させると。それが実際数値にも表れる成果が出てきております。そして、動画からの有料会員獲得が増えてきている。
これが今年の達成でございます。2025年に向けてはこの方向性をさらに進めて、SaaSとNewsPicksが融合した事業モデルを作っていきます。
ユーザーIDを全SaaSで共通化していく。NewsPicksをSaaSの最大のマーケティングチャネルにしていく。NewsPicks ExpertをSPEEDAのみならず、全SaaSで利用し共通価値化していく。共通データへの投資を拡大させ、競争障壁をしっかり築いていく。そして、NewsPicksは動画をメインの価値の1つに転換し、マーケティング投資を段階的に拡大する。
これはかなり長い話です。今年実現したことは先ほどお話しした通りなんですが、2025年までどういう時間軸で実現していくのか。もちろん、すぐに実現できることはすぐに実現していきます。例えばSaaSのオンラインイベントをNewsPicksと連携して展開していくことは、来年すぐに実現していきます。
ただ、SPEEDAとNewsPicksのユーザーIDを完全に統合するのは時間がかかる。開発もそうですし、ユーザーの方へのメリットをしっかりつくり、訴求していかないといけない。そのために2023年を完了のタイミングに置いています。
そして、NewsPicksが全SaaS最大のマーケティングチャネルになるのは2024年を目安にしています。2025年に向けて、このスケジュールでSaaSとNewsPicksを融合し、大きな価値をつくっていきたいと考えています。
各事業が2025年末に目指す姿と主な投資領域を書いたものです。
全社に関してはこれまでお話させていただいた通り、SaaSとNewsPicksを融合し、持続的なユーザー価値の拡大、高成長が見通せており、経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界、その実現に大きく近づいているという状態を2025年末に目指していきます。
SaaSに関しては、全体として先ほど申し上げたSPEEDA EXPERT RESEARCH、FORCAS、AlphaDrive / NewsPicksに大きく投資をしていきます。そして、さらにクロスセルですね。SaaSサービスを全て使い、経営を大きく変革していく。その価値の実現を2025年末に向けてしっかり実現していきます。
そしてパーパス実現のために、顧客起点で変化にスピーディーに適応する経営を日本中に広めていく。そういう状態を目指していきます。
NewsPicksに関しては特に認知率が大きな課題なので、これを効率的なマーケティング投資により、80%以上、2倍以上に引き上げていきたい。そして、NewsPicksに対するパーセプション、どういうメディアか? ということも変革し、社会課題を解決するために行動する人がNewsPicksを通じて次々に生まれ、経済を楽しみ、社会課題の解決を目指すメディアとして認識されている状態を目指します。
グローバルに関してはまだまだだと考えておりまして、先ほどのSOMにもグローバルに関しては含めておりません。例えば、SPEEDAの中国事業が今年大きく伸びてきたというようなポジティブなものはありますが、まずはしっかり現地のユーザーにMust-haveなサービスになっていくこと。そして高成長フェーズに入っているということを、2025年末に目指していきたいと考えています。
2025年に向けて、我々の事業ポートフォリオ、売上高の分布は大きく変化します。これがそのイメージを示した図ですね。30%のCAGRは、2025年時点の売上高が約450億円ということを意味します。
そこに特にSaaSの3事業、SPEEDA EXPERT RESEARCH、FORCAS、AlphaDrive / NewsPicksが大きく成長し、このような形で事業ポートフォリオが変化している状態を目指していきます。
この長期的な成長にしっかりコミットしていくために、本日プレスリリースを出させていただきましたが、グループ執行役員制度を導入しています。我々いろいろな事業がございますが、その事業を横断し、SaaSとNewsPicksの融合を図っていく。そのための強固な経営陣をつくっていきます。
特にグループ執行役員や我々取締役に対して、株式報酬制度をしっかり入れていく。そして株主の皆様と目線を共有して、長期的な成長を実現していきたいと考えています。取締3名は現金報酬を減らし、株式報酬を入れることを考えております。
最後ですね。SaaSとNewsPicksを融合し、2025年には「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」、その実現に大きく近づいていきます。
同時に大きな成長、大きな経済リターンをステークホルダーの全員に向けてしっかり実現する。そして我々自身がパーパスの実現と経済合理性の追求が矛盾しないことをしっかり証明していきたいと考えています。以上です。

質疑応答

司会 それではこれより質疑応答に移りたいと思います。まず会場よりご質問を頂戴いたします。
※会場からのご質問の他、Sli.doという質疑応答サービスを利用しております。Sli.doからのご質問はサービス名の表記以外、原則いただいた内容のまま記載しております。
Q1:前提として佐久間さんのご経営・執行能力には期待するのみなんですが、対株式市場のコミュニケーションに関して確認させていただきたいことがございます。

今年の2月の通期の説明会で──御社の場合は説明会の議事録は正確かつご丁寧に全て公開されているので、お手元でも確認可能かと思いますが、「2021年の結果を受け止め2022年については利益のガイドラインをつくっていきたいと考えています。各事業別の50%ルールを規律として持っておりますので、来年にかけて利益率は基本拡大させていただくことを考えています。利益を下げて投資をしていく、新たな事業の大きな成長の兆しが見えて投資していく際は改めてご説明したいと考えております」とご発言されていらっしゃいます。

その後の説明会でも、2022年2月に2022年度の利益に関してはご説明したいというご説明があったので、もし今日はそういう場ではないとしたら、そういうご回答で結構なんですが、そうすると仮に2月のご説明を前提とすると、そこから何か基準が変わった、あるいは新たな大きな成長の兆しが見えてきたから、来期についていろいろ考え方が変わったのかなと考えられるんですが、この10〜15億円を前提にすると利益率が下がっていることになりますので、それはそのときのご発言の背景、そしてその後にどういう変化があってこういう数字を出されるに至ったのかというところをご説明いただきたい。
Q2:2025年の数字を出す意味ですね。そもそもSaaS事業について見ると、大きな赤字をして投資している会社も少なくない中で、佐久間さんの中でそういう利益の見通しを出すということが、そもそも5年後だろうと来年だろうと、どういう意味合いを持っているのかということを前提に、2025年にこういう数字を出されたのかと。これについてもある意味来年の10〜15億円にしても、2025年の数字にしても、何かの変化があった場合、兆しがあった場合については、変更の可能性がある数字と我々は受け止めるべきなのかということも含めて、そのあたりをご説明いただければと思うんですけれども。
佐久間 ご質問いただきありがとうございます。まず2022年の前提の変更があったのかということに関して、ご説明させていただきます。
特にSaaS事業に関して、想定以上に成長している事業がいくつかございまして、例えばAlphaDrive / NewsPicksは先ほどご説明した通り、1年半で大きく伸びてきております。FORCASの中のFORCAS Salesも今年大きく伸びました。
もちろん我々は利益がコントロールできる事業をつくっていますので、利益を今年対比で増やしてくことができる。ただ、新たな事業の大きな成長の兆し──AlphaDrive / NewsPicks、FORCAS、NewsPicksの動画領域。それをしっかり捉えて投資をしていくべきではないかという議論のもと、数値を変更させていただいているというものが、2022年に対するお答えになるかと思います。まずこの点から追加でご質問あれば。
質問者 そうすると御社の中での方針の変更ということでしょうか。2月のご説明のときは「何か事業において大きな成長の兆しがあれば」という前提だったんですけど、何か事業の実態として将来に対しての変化が出たからということではなくて、御社の中でのあくまで戦略の変更ということですか?
佐久間 事業の大きな成長の兆しがあり、戦略を変更しました。兆しとしては、AlphaDrive / NewsPicksが大きく伸びて、FORCASに関しても内部のFORCAS Salesというのが大きく大きく伸びたんですね。ここにしっかりと投資をして伸ばしていくべきではないかと。NewsPicksに関しても、動画に関して非常に良い結果が出ているので、しっかり投資していくべきだという我々の変化を捉えた方針の変更です。
質問者 動画について1点確認なんですけれども、今NewsPicksのYouTubeのチャンネルの登録者数でいくと、数日前に私が見たところ43〜44万人だったかな。過去の動画1つひとつは、YouTubeの中の再生回数だけで見ると多いもので10万とかあるんですけども、だいたい数万という形でした。これは動画自体が好評を博しているのか、まだそこに至ってないのか、そこがちょっと外から見ると見極めが難しい数字だなと思っています。
動画については手応えに関して、有料会員への動線としてというご説明ありましたが、そこまでその動画について期待を高く持つに至る背景を、我々が見えていない、あるいは理解してない部分を含めてご説明いただけると助かります。以上です。
佐久間 ありがとうございます。YouTube経由の獲得も非常に効率的にできるんですよね。そこのLTVは他の獲得経路に対しても非常に高い。かつ実際NewsPicksの有料会員で、もちろん記事と動画の双方を見ていただいてるユーザーがマジョリティなんですけども、ほぼ動画しか見ていない、動画の価値にまっすぐ行ってるユーザーがかなり増えてきております。なので、ここは既存のユーザーに対する価値を見ても、新規獲得を見ても、大きな可能性があると感じています。
質問者 現状の数万人というのは佐久間さんから見て、かなり強い数字だというご理解なわけですね? 我々がNewsPicksのYouTubeから確認できる再生回数は、経済動画というジャンルの中では相当手応えがある数字と捉えていらっしゃるという理解でよろしいでしょうか?
佐久間 全体の動画の一部切り抜きなど、マーケティング向けに色々な動画を出しております。なので、そこの再生数だけを追っているっていうものではなく、あくまでマーケティングチャネル1つと捉えています。なので、再生数は数万から数十万とバラツキがあります。重要なものは有料会員数であり、YouTube以外のチャネルもございますし、YouTubeの再生数を最重要に追っているというわけではないです。
あともう1つのご質問に答えられていなかったので。今後の方針は基本変更することは考えていません。2025年に15%という数字は、しっかり目指していかないといけない数字だと認識しておりまして、私も今回は全ての事業の成長戦略を描き、数値的なシミュレーションを行い、その上で策定した数値です。
そして利益をなぜ目指すのかという点。利益に関しては、シンプルに我々は株主資本がまだ少ないと考えています。これを大きく上げていってこそ、大規模な投資機会を捉えつつ、安定的に成長できる。しっかり利益を出して株主資本を厚くして、大きなチャレンジに耐えうる体制にしていくことが、今の段階、2025年まで非常に重要だと考えています。
Q3:ご説明ありがとうございました。資料42ページの2025年に向けての財務目標というところで、3Qの決算説明会のレポートを読ませていただいて、そこのQ&Aで2028年までCAGR30%で1,000億円を目指すという回答があったんですが、今回これが2025年までに短縮されたというところで、これは方針的に2028年は一度取り下げたという理解でよろしいのかなというところと、このEBITDA15%を目指すにあたって、資料を見るとマイナスにはなってないので、赤字を掘るほどの投資はせずに、利益を出しながら15%を目指すという理解でよろしいのか、確認をさせてください。
佐久間 ありがとうございます。CAGR30%というのは変えていないので、2028年の1,000億に向けて、オントラックの数値が2025年時点で450億であるとご理解いただければと思います。
利益面に関しておっしゃる通りでして、赤字を掘って大きく投資していく、自分たちの利益の幅を超えて投資していくことは考えてないです。
司会 ご質問ありがとうございました。それではSli.doからのご質問に回答させていただきます。
Q4:P.68の会社評価は今でも十分高いかと思いますが、1年半ほど前までは日本全体で2-3位でした。それが今ではだいぶ下がってしまっているとも受け取れます。書き込みの中身を見てみると経営方針の変化に異を唱えるものが多かったです。現場の士気が下がっていないか心配です。
稲垣 私から回答させていただきます。
率直に包み隠さずお伝えしたいなと思います。まずここの書き込みが多かったのは、おそらくQuartzの売却を決めたタイミングだと思います。当時はそれ自体がまず当社にとって非常に大きな判断でありましたし、そこから経営体制も変えて新しい戦略でというところでしたので、新しい方針に腹落ちできないというメンバーも率直にいるのではと思いました。
そこで新たな方針に納得できるかどうか、メンバー1人ひとりに対してもフェアにオポチュニティを持ってもらうために、期限を決めてそこまでに納得できないというメンバーに対しては退職という選択肢も取れるように、退職パッケージを用意したという背景があります。
その中で率直にコミュニケーションをして、10名弱のメンバーが退職するということがありました。ただそこで全て白黒はっきりさせ、残るメンバーのみんなには前を向いて、僕らと一緒にできる人たちだけに残ってほしいと伝えた上で、今を迎えています。
そこからも、もちろん実際に実行していく中で様々な葛藤が生まれていくこともあるはずなので、全体での発信や1人ひとりとの対話など、いろいろな施策も経て、1つの会社として強度を持ってみんなでチームでやっていけるように努力をしてきました。その後、新たに組織サーベイの製品を導入して、組織の状態を可視化できるようにしました。
詳細な他社比較の数値は開示許可をいただけませんでしたが、そのサーベイの内容を見ても、その会社さんからのコメントとしてはかなり高い数字、トップクラスの数字が出ていると言っていただいています。なので、その定量的な数字もそうですし、私自身がみんなとの対話を通して体感している士気の感覚から見ても、現状、強い意志で頑張ってくれており、大きな問題はないと思ってます。来年もしっかりチーム一丸で事業をより良くする方向に、しっかりと向かっていければと思っております。
Q5:今日あった資本業務提携の売上寄与について、どのぐらいの期間で、どのぐらいの規模を想定しているか。
佐久間 Archesとの資本業務提携ですね。まだ資本業務提携が始まったばかりでして、まず特に東南アジアの領域でエキスパートの価値を我々のお客様にも届けられるような状態をつくっていく段階です。なので、現在まだ売上規模というのは具体的には見込んでおらず、まずはユーザーの皆さんに連携した価値をしっかりつくっていくことかなと考えています。
Q6:ユーザベースにしかない強みは何ですか。
佐久間 大きく2つあるかなと考えておりまして、1つは先ほど稲垣がご説明差し上げた組織の強みですね。日本トップクラスの水準。これが画一の集団ではなく、本当に多様な集団で実現できている。ビジネス、デザイン、記者・編集者、エンジニア、アナリスト、クリエイター、日本も海外も。
いろいろなスキル、バックグラウンドを持つメンバーが融合してこそ、それぞれの強みをしっかり組み合わせて、価値があるものをつくり、お客様に届けることができる。SaaSとNewsPicksが融合する複雑な事業を支える多様性がある組織力というものが1つかなと。
もう1つは、プレゼンの中でも何回もお話させていただいた経済情報ですね。経済情報に関しては、実際に保有しているデータ、コンテンツも多岐にわたりますし、例えば質が高いコンテンツをどんどん廉価でつくっていく、そういうキャパシティをスリランカに保有し、もう5年以上運営しております。
このようにデータ、コンテンツで、あとまさにArchesとの提携の話もありましたけれども、NewsPicks Expertの人の知見の分野。この経済情報に関して、我々は強みを持っていると考えております。
Q7:「面白い」「楽しい」のニュアンスは幅広いと思いますが、「funny」と「interesting」ではどちらでしょうか。現状は「funny」に寄っている印象があります。
佐久間 これはシンプルな回答を持っておりまして、「Play」ですね。
「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」、これの英語訳が「Awaken a world of play in business, with our insights」です。
「Play」という単語は意味が広いと思うんですね。遊ぶだけではない、Play a Role、しっかり役割を果たすという意味もありますし、しっかり役割を果たすことで喜びを感じ、楽しみにつながっていく。そういうような複合的な意味。
夢中になって遊んでこそ創造性が最大限に発揮されて、いい仕事ができるということもございますし、そういう役割を果たす、楽しむ、夢中になる、そして良い仕事ができる、みたいなものを「Play」という言葉に込めています。
Q8:経営陣の方々が株で報酬を受け取るのは素晴らしい取り組みであると思うのですが、多少なりとも希薄化してしまうのが残念です。例えば現在経営に参画していない創業者の新野さんや梅田さんから時価で買い取る等のスキームは考えられなかったのでしょうか?
千葉 私から回答します。おっしゃっていただいたことも検討し、最終的には今回の制度を導入しています。株主の方々と同じ目線を持って、さらにその想いを共にする新たなタレント、優秀な人材を引き入れるために、今回の制度を導入したいと考えています。
報酬に関わるところですので、取締役に関しては株主総会で議論をさせていただいた上での確定になりますが、我々としては今このような制度で進めていきたいと考えていますので、ご理解いただければと思います。
Q9:コンテンツ等や新しい取り組み、いつも楽しく見させてもらっています。ただ、IRなどから社会的意義は感じるものの、株主としては売上等の数字に結びつきにくいように見えるのが実感です。IRでは何を重視して発信されているのでしょうか。
千葉 基本的には我々のIRのポリシーとしては、株主の方々にお伝えすべきもの、もしくは株価への影響があるかどうかという視点で考えてはいます。ただ、おっしゃる通り、売上ですとか利益の結びつきの時間軸が、おそらく発信する内容によって異なっているかなと思いますので、よりPR的なものとIR要素の強いものを分けて、今後は開示していければと思っています。
Q10:多種多様な経済情報を一般の投資家向けにアレンジして新サービス化などは考えておられないのでしょうか?
佐久間 我々が有する経済情報を一般の投資家向けに提供するということは、創業のときのピッチ資料にも書かれております。なので、常に検討している領域でございます。しかし個人投資家向けの領域にはもう様々なサービスがございまして、そこで我々が圧倒的な価値を届けられるというものが、いまだに思いつけていないというか、取り組めていないのが実情です。
ただ、誰もがビジネスを楽しめる世界にしていくために、個人投資家の方にも価値を届けるサービスを将来的につくっていきたいと考えておりますので、この分野は継続検討していきたいと考えています。
Q11:経営陣が株を持つことは良いと思いますが、経営指標を達成した際にストックオプションなどを活用してもらいたいです。ここまで落ちた株価で、経営指標未達でもばら撒いて希薄化するのは何だかモヤモヤします。
千葉 これまでも我々は業績目標を設定したストックオプションというのを使っていますので、これからもその時々の状況に応じて柔軟に対応していきたいと思っています。今回の主旨は、現金報酬を減らして株式報酬を増やすというところが1つポイントになりますので、どちらかというと株主の方々や投資家の方々と同じ目線で、リターンをしっかり得るという制度になっていると改めてご理解いただければと思います。
稲垣 少し補足させていただきますと、私たち経営陣の評価もそうですし、そこに対する報酬というものは全てこの経営指標にリンクしておりまして、しっかりと規律を持って自分たちの報酬を決めています。かつその報酬を私や佐久間の金額も含めて全て社内に公開していまして、メンバーたちからも何か異論があれば言えるように全てオープンにしています。
そういったガバナンスも前提に、私たちの成果が価値として認められる部分があれば、しっかり報酬に還元していくことにしています。今後もしっかり規律を持った形での報酬制度をつくっていくことをお約束いたします。
司会 皆様たくさんのご質問ありがとうございます。一旦、会場の皆様よりご質問を受付いたします。会場の皆様でご質問のある方、挙手をお願いできますでしょうか?
Q12:社長が2人体制になられたということで、執行役員のご紹介のページ見ると、SPEEDA事業に関してはCEOである佐久間社長が最終的な意思決定を取られるのかなと思いますが、NewsPicks事業はやはりお2人とも社長でありCEOということで、このあたりのコミュニケーションと、最終的に意思決定、ハンドリングがどのような形で今後行っていかれる予定なのかお聞かせください。
佐久間 NewsPicksの組織構造としては、完全にユーザベース全体とミラーですね、ユーザベース全体で私と稲垣で共同CEO体制をしておりまして、私が主に事業面、稲垣が組織面を担当しています。
そこで意思決定は分かれる。ただ私と稲垣は長らく一緒にやってきて意思決定の原則を共有しており、背中を預け合ってやっています。その同じ構造がNewsPicksにも成立していると。そうやって意思決定をスピーディーにすることができるとご理解いただければと思います。
司会 ご質問いただきましてありがとうございます。それでは続いてSli.doのご質問に移らせていただきます。
Q13:女性管理職の研修、学び直しなどは国策とも絡んでくる部分だと思うが、地方公共団体や大企業でのモデル的な取組に発展する可能性は考えているか。
佐久間 これはIBMさんと共同で取り組んでいく我々のプレスリリースに対するご質問ですかね。こちらは稲垣からご回答差し上げます。
稲垣 IBMさんの話は12月13日にプレスリリースを出させていただきましたが、それ以外でもいただいている学び直しのところもそうですし、学んだものをどう生かしていくのかというところで副業推進など、現在日本にとって課題であり、私たちのパーパスとしてやるべきことを支援していきたいと考えています。
大企業の方もそうですし、地方行政のみならず経済産業省などからも、いろいろなお話をいただくケースはあります。現在はそれをまとめて、どういう形で取り組んでいくのがいいのかを絶賛協議中ではありますので、このあたりは開示できるようになりましたら、また私からご説明できればと思っております。
Q14:サービスを融合させるのは良いことだと思いますが、それにより新しいものが生まれて、大きく事業成長するイメージが湧きません、その辺りはどのようにお考えでしょうか?
佐久間 我々、「The 7 Values」という自分たちの価値観を掲げておりまして、その1番目に「自由主義で行こう」です。「自由」というものを真正面から掲げておりまして、我々が最も大切にしているバリューです。自由であるからこそ創造性を働かせ、ユーザーの理想を叶える新しい価値をどんどんつくることができる。
私もユーザベースでは長年、その自由を体現し、ユーザーの方だけを向いていろいろなサービスを作ってまいりました。なので、このDNA、カルチャーは絶対になくさない。我々の先ほど申し上げた組織の強みの根幹だと考えています。
なので、この自由と融合の両立ですね。ここが今後のユーザベースの経営にあたっての大きなテーマになる。私の社内に対するメッセージでも常にこれを話しております。
融合するからこそ、どんどん自由に新しい価値を作り、成長することができる。これまた事実であると考えております。例えば、FORCAS Salesという新しい事業は、NewsPicksをコアな価値にすることで、早くお客様にその価値が届いて、大きく成長することができてきています。経済情報という我々の共通の基盤が融合してあるからこそ、それを用いた事業を、ユーザー起点で自由に、クイックに立ち上げて大きく成長することができる。
なので、自由と高成長を両立するものは「共通の強み」です。なので、経済情報という強みと組織の強み。
経済情報に関わる分野では、他で起業してやるよりユーザベースの中で起業してやる方が圧倒的に早く成長できる、自分のビジョンに近づけるというような状態を実現していきたいと考えています。
Q15:プライム市場への移行はどのぐらいのスパンを想定していますか。
千葉 具体的な時期については、申し訳ありませんがお答えすることはできません。従前からお伝えしている通り、最短での市場変更を実現したいと考えています。
本日適時開示をさせていただいてますが、来年の4月1日時点ではグロース市場にエントリーすることが決まっておりますので、そこから最短でプライム市場への市場変更を計画し、実行していきたいと思っています。
Q16:業績は順調に推移しておりますが、株価のダウントレンドが続いています。この点に関して、どのような施策を考えておられますでしょうか。株主還元、成長投資への傾斜、投資家との対話など具体的な取り組みについて差し支えない範囲で教えてください。
千葉 株主還元に関しては、ありとあらゆることを議論して常に可能性を検討しています。具体的には今のタイミングだと申し上げられないので、差し控えさせていただきます。
成長投資に関しては先ほど別のご質問で、利益を出すフェーズなんじゃないかというご意見もありましたけれども、我々としてはまずトップラインの成長率を上げていきたい、長期的なCAGR30%を実現したいというところがメインのシナリオになりますので、そこに向けて着実に投資を実行し、売上拡大という形で投資回収していきたいと考えています。
一方でIRチームとしては、まだまだ投資家の中での認知率やコミュニケーションがうまくいってないと実感する部分がございますので、常に改善し、新しい投資家の開拓もかなり積極的にやっています。しっかり成果につなげていきたいと思いますので、引き続きご支援のほどよろしくお願いします。
Q17:有料会員の解約率が低下しているのは有料会員数の成長鈍化も関係していると考えられますが、その点はどのように分析されておりますでしょうか。
Q18:NewsPicksの解約率を下げるために具体的にどのような対策をされたのか知りたいです。
佐久間 続いて2つの質問にお答えさせていただきます。
まさに2つ目の質問に関しての答えが、1つ目の質問の回答にもなっているかなと考えておりまして、解約率を下げるというのは、ありとあらゆることをやるしかなくて、もう妙策というものはありません。
例えば、具体的には有料会員になっていただく際に、毎月の更新の会員より、年割の会員に誘導する。例えば、ユーザーの転換率が高い、しかも継続していただけるコンテンツをしっかり当てていく。例えば、翌月継続率が高いマーケティングキャンペーンに重点的に投資していく。そのような施策の積み重ねでございまして、そのような施策別の効果を分析し、認識できておりますので、有料会員数が成長鈍化してきたから解約率が低下しているとは考えておりません。
Q19:今までの決算説明では今期が収益性ボトムとなり、来期以降の収益に繋がるという説明だったと記憶していますが、来期が収益性ボトムという説明が先ほどありました。これはどういうことでしょうか。認識齟齬がありましたら申し訳ありません。
佐久間 この点については、冒頭ご説明差し上げた通り方針転換です。今期をボトムとして来期以降に収益を上げることを、今年の頭には考えておりました。しかし先ほどお話し差し上げた通り、新たな成長の種が見えてきていることを捉えた方針転換でございます。
Q20:SaaSが乱立している印象があり、サービスの特徴やターゲットが理解しにくい構造になっているように感じるが、顧客の反応はどうか。
佐久間 今回の長期経営戦略説明資料のAppendixに、実際のお客様の声が載っておりますので、そちらをご参照いただければと思います。
我々は「ユーザーの理想から始める」ということを「The 7 Values」、ユーザベース全体での価値感も掲げており、ユーザーの価値を起点にしたサービスを展開できていると感じています。その証拠の1つが、先ほどご説明差し上げた通りSPEEDAで解約率を下げることができていると。その他のサービスに関しても、解約率というのは究極のお客様の満足度を表すものでありますので、その数値をしっかりウォッチしてユーザーのみなさまに価値を届けていきます。
Q21:SPEEDA を使ってみたいので、株主優待(保有株数に応じて利用期間が延びるなど?)としてぜひ検討いただけるとうれしいです。
佐久間 はい、こちら検討させていただきます。
Q22:KPIの月次開示等は考えておられますか?
佐久間 現状、月次でKPIを開示することは検討しておりません。今後、事業の特性上そのニーズが非常に高まることが出てきたら、検討していきたいと考えております。
Q23:2025年時点の各セグメントのEBITDA率はいくつになる想定でしょうか?
佐久間 こちら凸凹はございます。エキスパートリサーチを除いたSPEEDAに関しては、30%を超える高いEBITDA率を達成していく。その他の事業については、SaaSに関して事業ポートフォリオのマネジメントの図でご説明差し上げた通り、成長率が下がるとしっかり収益性を高めていくという構造を考えております。
NewsPicksに関しても、だいたい全体の収益性の回復と同じような推移をしていくことを想定しております。
Q24:プライム市場の流通時価総額の基準を満たすためには、現状の株価の2倍にする必要があり、容易ではないと思います。株主目線からすると、我々のプライオリティが低いように感じています。市場から信任されるためには何が必要だと考えていますか。
佐久間 先ほど千葉から、投資家の方とのコミュニケーションに関して改善していくとお話させていただきましたので、私からそれに加えてお話させていただけることは、やはりしっかり方針を示して、そして実績を上げること、これに尽きるかなと考えております。
今回2025年に向けての方針を説明させていただいたので、あとは実績を示し、この戦略を実現し、経済的な結果も出していくことに全力を注いでいきたいと考えています。
Q25:2025年末にエキスパートリサーチで、日本No1になるとのことですが、売上高で1番ということでしょうか?具体的に意識されている競合となるサービス、会社はありますか?
Q26:大きな競合としてビザスクが存在していますが、現状エキスパート数でビザスクに負けています。どの様にビザスクと戦っていくのでしょうか?
佐久間 事業会社の方に対する売上高でNo.1になることを目指していきたいと考えています。競合サービスに関しては、ここに書いていただいているビザスクさんもございますし、海外ですとGLG、GuidePointなどをいくつかの会社があると考えています。
エキスパート数に関して、もちろんエキスパート数というのは非常に大切な指標ではあるんですけども、それよりクオリティが高い、しっかりいろいろな方のニーズに回答できるエキスパートを揃えて、回答差し上げていくことが非常に重要だと考えておりますので、豊富なご経験を豊富にお持ちのエキスパートの方にしっかり登録していただく。
それを本日発表したArchesさんとの提携ですとか、GlobalWonks、直近「Enquire AI」と名称変更しておりましたけど、そこに出資しておりますので、その会社との提携ですとか、そこでしっかりユーザーの方の質問にお答えできるデータベースをつくります。
後はやはりテクノロジーですね。エキスパートネットワークサービスというのは非常に歴史が長いサービスです。例えばコンサルティングファームの方から、「こういう事業分野の、こういう経験を持った人がいないか?」みたいな要望を受けて、そこに対してマッチする人を人の手で探し出して、数日から数週間かけてマッチングさせていくと。
我々は事業会社の人が日々使うSPEEDAというプラットフォームを持っています。そのプラットフォーム上で、テクノロジーの力を使って「FLASH Opinion」というサービスを展開しております。従前のやり方とは異なり、エキスパートの方にクイックにアクセスできる。こういう事業分野の、こういう素材の、こういう応用方法に関する質問をすると、もうその日中に、早ければ数時間で回答が成立するという状態を実現しております。
このように、エキスパートの数自体も重要ですが、そこに実際お客様に回答を差し上げられる方がどれだけいるのかという点と、それをテクノロジーの力でしっかり増幅させていくことを重視していきます。
Q27:将来的に、NewsPicksがSaaS事業の最大のリードチャネルになるとのことですが、カスタマージャーニーのイメージを教えてください。
佐久間 イメージをお伝えしますと、先ほどのオンライン番組のところのイメージがわかりやすいと思うんですけども、例えばモビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)ですとか、スマートシティですとか、SPEEDAの競争環境分析にダイレクトにつがるテーマのオンライン番組を展開しています。これはNewsPicksのユーザーの方からしても、当然価値がある内容だと思うんですよね。
そういう番組を展開し、ただその番組を視聴いただくために、所属企業名などのリード情報をご登録いただく。そしてその番組の内容にご満足いただき、その番組と関連あるサービスの価値をしっかり訴求していくという流れをつくるということを想定しています。
これまでオフラインイベントであったマーケティングの形のオンライン化です。ここには我々大きな可能性を感じております。
Q28:現状の株価について、どうお考えでしょうか?
佐久間 先ほど申し上げた通り、我々のIR、投資家の方にしっかり成長ストーリーをご説明させていただき、クリアな将来イメージを持っていただくということが十分にできてないため、株価が低い状態であると考えています。
なので今回の説明も含め、我々の成長ストーリーをしっかりイメージいただき、そこに納得感を持っていただき、そういう方を増やし、実績を示し、株価を引き上げていきたいと考えております。
Q29:これまでNewsPicksの記事をSPEEDA以外のプロダクトで利用していなかったのはどういう背景か?
佐久間 特に大きな背景はなくて、FORCAS Salesというのは立ち上げ当初からNewsPicksのコンテンツを活用しておりますし、INITIALに関してもメディア化してリードを獲得するという動きは最近です。なので、そういう動きにシフトしていくタイミングで、NewsPicksの価値を取り込んでいく、NewsPicksとSaaSを融合していくことを実現してきました。
Q30:NewsPicksユーザーがSaaSユーザーになる流れが分かりにくい。多くのユーザーではなく、プロダクトの導入を意思決定出来る決裁権のあるユーザーに対してSaaSプロダクトの利用をアプローチするとの理解で良いか?
佐久間 先ほどお話し差し上げたカスタマージャーニーの話と重なりますけども、もちろん意思決定権、決裁権のある方にサービスの価値を理解いただくことは非常に重要なんですけども、それ以上に重要とも言えるのが、実際にサービスを利用する現場の方に価値を理解していただくことなんですね。
どういうことかというと、日本は海外と比較して稟議承認率が高い国でして、現場の方がサービスの価値を理解して稟議を上げれば、通る確率が高いんですね。加えてSaaSというものは、たとえ導入しても現場の方が納得しない、価値を感じてもらえないと、解約されてしまうサービスです。なので現場で実際サービスをご利用いただく方に、そのサービスの価値を理解いただいて、導入につなげていくことが非常に重要であり、そこにNewsPicksと融合したマーケティングの効果を実現できると考えております。
Q31:NewsPicksの2025年売上目標について。課金、広告などの構成比をどう見ていますか
佐久間 現状の構成比から大きく変わることは考えておりません。
Q32:SaaSプロダクトのSOM1,125億円について、現在のプロダクトで価値を届けられる市場とのことだが、他社製品との競争力、つまりリプレイス出来る実現性はどのように見ているのか?また、現在のプロダクトで獲得できるSOM1,125億円自体は毎年成長しているのか?
佐久間 もちろんプロダクトごとに違うんですけども、我々基本、あまり他社製品とかぶる領域でサービスを展開していくことは考えてなくてですね。先ほど申し上げましたように経済情報という我々のユニークな価値がございますので、そこで独自のサービスを展開して、しっかり成長することができると。
もちろん先ほどお話したように、例えばエキスパートリサーチの分野ですと、お話した競合が存在していたり、それ以外の分野でも競合と呼ぶ企業さんはたくさんいらっしゃいますけども、我々独自のユニークな経済情報という強みと、それをテクノロジーの力で増幅していくことで、リプレイスを含め価値を創出していけると考えております。
現在のプロダクトで獲得できるSOMは、毎年かどうかわからないんですが、成長していきます。そのために、これは新規事業のみならず、例えばSPEEDAでもエキスパートリサーチですとか、事業会社向けの機能拡充ですとか、SPEEDA R&Dですとか、そういったことでSOMを段階的に成長をさせておりますので、そういうターゲットが明確な新しいサービス・機能をリリースしてSOMを成長させていくことを考えております。
Q33:動画コンテンツについては非常にクオリティが高いと感じているが、インベスターズのように面白くても新規会員の獲得には結びつかないコンテンツもある。新規ユーザーを獲得するコンテンツと現在のユーザーを満足させるコンテンツは別物なのか?また、番組の製作能力についてキャパシティを上げて本数を増やしていくのか、質を上げていくのか?
佐久間 有料会員に対する「浸透率」という指標を持っておりますけども、有料会員のうちどの割合の方が実際その記事を見たり、番組を視聴したりしたのかという点と、新規獲得数ですね。この2つのKPIを見ています。
その中で、もちろん新規獲得には大きくはつながらなかったけども、既存の有料会員に対する価値が大きいというコンテンツはございます。ただ、それほど大きな差はなくて、我々こういったことがしっかり数値上モニタリングできておりますので、既存のユーザーをしっかり満足させ、新規獲得を増やしていくというコンテンツをつくれていくと考えております。
番組の制作能力のキャパシティに関しては、現状を大きく引き上げていくことは考えていないですね。ただ例えば、我々のオリジナルのコンテンツに関して動画の割合を段階的に増やしていくことは考えています。なので、本数を大幅に増やしていくというよりは、本数をなだらかに増やし、質を上げていくという形でご理解いただければと思います。
Q34:役員に対する報酬制度等の取り組みは理解しましたが、成長を実現するための組織、人への投資はどのように考えておりますでしょうか?
稲垣 今期は昨年末の方針変更から、一時的にエンジニアを中心に人材強化の投資をかけてきました。おかげさまでチームは無事につくり終えていて、いい状態をつくれております。そのため、来期は人材の強い先行投資は行わず、各事業の成長に合わせた形での順当な人員増加という形で考えています。
それに対して、そのメンバーたちがしっかり成長できる状態をつくっていくことが非常に重要だと考えています。最も人が成長するのは、やはり新規事業のところですね。ですので、この部分をしっかりと立ち上げていくようなスキームをつくっていき、新たな事業をつくるために抜擢された人たちが、しっかりと挑戦して成長していけるようにしていきたいと思ってます。
これ自体は会社の事業自体が伸びていくことと全く矛盾しない形になります。新規事業にどんどん挑戦して、それぞれの挑戦を高速回転させていくことが事業・組織両面での成長に活きてくることになると思っております。
Q35:NewsPicksの認知率が低いとあるが、認知していない層はどういった特徴があるのか?そもそも認知したとしてニーズはあるのか? また、決算説明会では「地方」「topicks」がキーワードだったが、今回は「動画コンテンツ」に重きが置かれている理由は?
佐久間 逆にNewsPicksの認知が高い層というのは、年齢層でいうと20代・30代の方ですね。なので、その逆を言うと40代・50代。年齢層が高くなるほど認知率が落ちる傾向はございます。
あとはやはり経済情報への感度が高いというか、経済情報が業務に大きく関わるビジネスパーソンの方には認知率が高い。ただそこから少し離れて、経済情報に接する必要性がそれほど高くない方は認知率が低くなる傾向がございます。
なので、我々動画の訴求というのは主に後者ですね。もちろん前者にも価値は訴求できると思うんですけども、NewsPicksのクオリティが高い記事を毎日読むというようなところまではいかないけども、なんらかそれが動画ベースで面白く解説されていると、それは見たいというような層に、しっかりアプローチできるんじゃないかなと考えております。
後半の、「決算説明会では『地方』『topicks』がキーワードだったが、今回は「動画コンテンツ」に重きが置かれている理由は?」について。今回は、長期的な我々の投資の方針に関して説明することに重きを置いて、動画コンテンツに関して重点的に説明しております。
当然地方にも大きく伸びしろはございますし、トピックスはユーザーの方にしっかりコンテンツをつくっていただく場をNewsPicksでつくることで、金銭的な還元も含めて、情報発信するユーザーの方にしっかり価値を感じていただける場をつくることには、非常に大きな可能性を感じています。
ただこれは両方長期的な取り組みでして、来年大きく投資をするというような分野ではございません。なので、今回投資に重きを置いて、その効果が大きく見込める動画コンテンツに関して重点的にご説明させていただきました。最終的には、この全てが融合して、NewsPicksの大きな成長が実現できると考えております。
Q36:"UBが提供するSaaSを組み合わせて使うことで、「パーパス実現のために、顧客起点で変化にスピーディに適応する経営」(アジャイル経営)への変革が、特に大規模な企業で次々に実現されている"という観点で、最も成功事例に近づいている大企業ユーザーさんの状況について匿名でも結構ですので教えていただけますでしょうか。
佐久間 Appendixにユーザーの事例がございますので、そちら見ていただければと思うんですけども、例えばSPEEDAをお使いいただいているソニーグループさん。例えばソニーさんのB2Bのマーケティングを担当するソニーマーケティングさんでは、FORCASをお使いいただいております。
そのように競争環境の分析をSPEEDAでスピーディーにこなしていく。そこから得られたインサイトをもとに、さらに顧客の分析を組み合わせて戦略を具体化し、営業・マーケティングにつなげていくということで、ソニーさんは一つの例かなと思います。
それ以外にも、例えば日立さんですとか富士通さんですとか、そういった大企業の方にSPEEDA、SPEEDA EXPERT RESEARCH、FORCAS、INITIAL、AlphaDrive / NewsPicksというような様々なサービスがクロスで利用されております。
Q37:AD/NPのプロダクトの内容を詳しく解説してください。競合となるようなプロダクトがあればそれを挙げて、違いを教えてください。
佐久間 こちらもAppendixにございます。AlphaDrive / NewsPicksにはいくつかのサービスがございますが、メインのサービスとしては、ここに掲げているNewsPicks EnterpriseとIncubation Suiteというものになります。
NewsPicks Enterpriseに関しては、ニュースを起点に、人材を育て、発掘していくサービスですね。これは社内のクローズドなNewsPicksをつくって、そこに社内の独自な情報も発信して、NewsPicksだとコメントをして終わりなんですけども、そこで相互のコミュニケーションができるようになってるんですよね。
そうすることで、特に大企業の方に、なかなか社内では探すことができなかった有能な人材をそのコメントベースで発掘してコミュニケーションすることも可能になりますし、社内の例えばトップのメッセージに関してちゃんとリアクションがある場をつくって、トップのメッセージをしっかり浸透させることができたり。
Incubation Suiteに関しては、新規事業の開発を包括的にサポートしております。新規事業のプログラムを運営していくサービスです。大企業の中で新規事業をコンテストのようなものを実施していくのは非常に煩雑なフローが必要で、例えば何百と応募があって、そこからいろんなピッチをしていただいてセレクトしていったり、そこの1つひとつのプロジェクトの進捗をウォッチしたりします。そのようなものがワンストップで可能になるサービスがこのIncubation Suiteです。
NewsPicks Enterprise、Incubation Suiteともにかなりユニークなサービスでして、現状、明確な競合というものはないです。
Q38:2022年の利益を削って投資をするのであれば、売上成長は30%以上にならないとおかしいのではないでしょうか。売上成長がそのままで投資を重ねて利益が減るのが納得できない。
佐久間 売上成長30%にしていく、その蓋然性を2025年に掲げて高めていく。そのための投資を2022年に行っていきたいと考えております。そのようにご理解いただければと考えております。この後もしっかり実績を示して、我々のこの方針に納得いただけるように努めてまいります。
Q39:経営陣への株式報酬は、株価が上がらなければうまみが少ないため、株価対策とも言えると思います。ただ、以前からストックオプションをよく活用していることもあり、現状は希薄化という印象が強まっているように思います。いいかがお考えでしょうか。
千葉 おっしゃる通り、IPOの前から発行しているストックオプションはまだ残っていますし、業績の達成条件がついているもの・ついていないもの含め、まだ残高が一定あるかなと思っています。
現状は資料にもあります通り、発行済みのだいたい10%ぐらいがストックオプションなのですが、ここは着実に行使されていきますので、残高を減らしながら株式報酬とのバランスを見て新たに発行していきたいと思っています。
今後は株式報酬をメインに、年間でだいたい1%ぐらいを目安にして、インセンティブとして発行していきたいと考えています。
Q40:SPEEDAを個人投資家向けに廉価で出すことはないでしょうか。経済情報のインフラになるためには、敷居が高く感じます。
佐久間 先ほどのご質問にもあった通り、個人投資家向けに我々の経済情報を活用したサービスを出していくことは長期的に検討しており、今後も検討していきたいと考えています。敷居が高く感じさせてしまい申し訳ないです。
Q41:本日発表のあった NewsPicks Stage について、これまでもNewsPicks上でスポンサーつきの番組が配信されていたと思いますが、違いを教えて下さい。
佐久間 先ほどお話しさせていただいたマーケティングジャーニーの話になるかと思いますけども、スポンサーして終わりという形ではなくて、しっかりそのサービスの価値等に合った、視聴いただく方にも価値あるコンテンツを届けて、そしてリードの形でスポンサーの方にお返しするモデルをつくりたいと考えております。
なので、シンプルなスポンサーモデルではなくて、新しい時代の、オンライン動画によるコンテンツマーケティングをサポートするプラットフォームにしていくことを考えています。
Q42:株式報酬制度について、代表取締役CEOで給与報酬の50%ということですが、株価が高ければ高いほど、支給時の報酬株数が減るという理解であっていますか?
佐久間 ご理解の通りです。金額ベースで固定して、それをそのときの株価で割って株数を算出する形を想定しております。
Q43:利益方針を1年足らずのうちに変更されたように、4年後の利益水準も簡単に方針転換されてしまわないか心配です。
佐久間 こちらは転換してご心配をおかけして、非常に申し訳なく考えております。新経営体制で2025年を向いた体制をつくっていくために立てた計画でございまして、これを容易に変更することは必ずないとお約束します。
Q44:Uzabaseの解約率上昇の理由/原因はどのように考えていらっしゃいますか?
佐久間 これはSPEEDAのことですかね。SPEEDAですと先ほどご説明差し上げた通り、1.0%の数字の達成が見えておりまして、しっかり下げていくことができると考えております。
今後も1.0%の水準は基本キープしていきたいと考えておりまして、ただ新たなチャレンジをしていく、新たな顧客層に新たな機能を持って価値を届けていくときは、解約率が上がることは起こりえます。重要なことは、しっかりそれをコントロールして、中期的に1%以下の水準を基本的にキープしていくことだと考えております。
Q45:北海道等自治体との連携に関しては、今後拡大する見込みがあるか。どのように利益を出すか
稲垣 はい、拡大の見込みです。先ほど申し上げた通り、いろいろな地方行政からもお問い合わせいただいてますので、私たちのパーパスとしてやるべきことはしっかり貢献したいなとに思っています。ここで私たちが一番利益を出せるところは、先ほど佐久間が申し上げたファネルのところで、NewsPicksの認知率をしっかり上げていく部分ですね。
1つ明確に成果が出ているものとしては、大阪府さんとの取り組みのところで、業務連携協定を結んで一緒に大規模イベントですとか、スマートシティの支援など、いろいろなご取り組みをご一緒させていただきましたが、そういった活動を通して当社にとってもしっかりとメリットが出ています。具体的には明確に関西でのNewsPicksの認知が上がり、その派生効果としてSPEEDAなどのSaaSの利用率も上がったというデータがあります。
ただこれは1つの地域のデータではありますので、いろいろなお取り組みをさせていただく中で効果を検証して、意義と利益、しっかりと相互にメリットがある形で、他の地域にも広げていればと思っております。
Q46:「誰もがビジネスを楽しめる世界」と「価値を届けるべきユーザーを確り選んでABMする」世界観は矛盾すると考えています。確りカスタマーセレクションを実施する御社の強みから方針転換されたのか、どう整理しているか教えてください。
佐久間 これは全く矛盾しないと考えています。2つお答えしますね。
ABM自体はしっかり価値を届けられるお客様にマーケティングを実施するということで、逆にこれがない世界をご想像いただくと、例えばアウトバウンドコールというか電話を1日200本して、誰でもいいから代表番号からアプローチして価値を届けるみたいな、圧倒的に疲弊する世界です。電話をしまくる人も疲弊しますし、その電話を受け取った先も「そんなサービス興味ないよ」というような感じで、お互い疲弊する世界だと考えています。
ABMがあれば、しっかり価値を届けられる。サービスの価値を感じていただける方に限ってアプローチしていきますので、そうすると実際アプローチする営業とかインサイドセールスの方も、「これはお客様の課題をしっかり解決できる」と確信して提案できるので、楽しく仕事できますし、そのサービスの提案を受ける側からしても、自社の抱えている課題の解決につながるサービスを提案してもらえるので、いいことしかないと考えています。
おそらくご質問の趣旨は、これを我々が実施する場合ですよね。我々が実施する場合でも、我々がサービスを届けられる方に絞ってサービスを受けていく。そしてそれを拡大していくことですね。なので、先ほど申し上げた、SOM、我々のサービスで実際に価値を届けられるお客様を順次拡大していくことがとても重要だと考えています。
これがまさにABMと、誰もがビジネスを楽める世界が矛盾しない方法であると考えております。
Q&Aに関して、以上になります。
司会 たくさんのご質問をいただき、誠にありがとうございました。お時間を延長させていただきましたが、以上をもちまして株式会社ユーザベース 長期経営戦略説明会を終了いたします。本日はお忙しい中ご参加いただきまして、誠にありがとうございました。
※Appendixを含む資料PDFはこちらからご覧いただけます。