2021/12/7

電通デジタルの「コンサルティング」は他社と何が違うのか

NewsPicks Brand Design Editor
 2016年、電通デジタルは電通グループ各社からデジタル人材が集う形で生まれた。
 この5年で社員数は2,000名へと急伸。企業と生活者をつなぎ続けてきた電通グループならではのクリエイティビティを活かし、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の事業も拡大させている。
 連載「クリエイティビティ×コンサル新時代」第1回は、電通デジタル川上宗一社長に、同社の戦略とこれからの時代に求められるデジタル人材像を聞いた。
INDEX
  • デジタル革命が「組織の壁」を壊した
  • 使命は、企業と人の「ラブラブな関係」づくり
  • 今後求められるのは「スペアリブ人材」
  • 世の中を揺さぶり続ける。グローバルへの挑戦

デジタル革命が「組織の壁」を壊した

川上 電通グループのデジタル専門部隊として電通デジタルが生まれて5年。
 コロナ禍の影響で企業のDXが喫緊の課題になり、日常生活も、ビジネスも、すべてがデジタルを前提に急激に変化しています。
 当社も年々引き合いが増え、現在1,000社以上の企業をご支援しています。
 電通デジタル=デジタルマーケティングの会社というイメージが強いかもしれませんが、現在はデジタル時代に適応できる事業組織の変革やITプラットフォームの構築などDXコンサルティングにも力を入れています。
 たとえば、ビジネス全体を変革するBX(ビジネス・トランスフォーメーション)。事業やサービスをデジタルと融合させ、最も価値が高い形で送り出す仕事です。
 他にも、デジタルによって顧客体験を変革するCX(カスタマーエクスペリエンス)トランスフォーメーション、オンラインとオフラインを統合して購買行動を最適化するコマース変革など、DXの領域は多岐にわたります。
 なぜ電通デジタルがDXコンサルティングに取り組むのか。
 背景にあるのが「データマーケティングの進化」です。
 生活者が商品を購入した際に、その人がどのように商品を選択し、どのように使っているかをデータで把握できるようになり、さらには、AIによる未来の予測を応用して、次への戦略へ繋ぐことが可能になりました。
 個人情報の扱いには十分に注意を払う必要がありますが、把握できるデータが格段に増えたのは確かです。
iStock:Tempura
 データの高度な活用によって、企業側では事業開発、マーケティング、営業、店舗、コールセンターといった異なる組織が生活者起点でつながり、今まで以上に一気通貫した戦略が立てられるようになりました。
 データを蓄積して組織横断で事業をアップデートしていくという新しい成長サイクルも生まれています。
 データがサプライチェーンの「背骨」となり、組織の壁を打破したとも言えるでしょう。
 こうした変化によって、電通デジタルはあらゆる組織からDXの相談が寄せられるようになりました。
 今や、マーケティング部や宣伝部だけでなく、経営層、開発、情報システム、人事、営業、CRMなど、すべての部署が私たちのクライアントです。
 企業の課題をデジタル目線でひもとき、最適な解決策を考えて実行に落とし込む。設立以来、デジタル一筋でやってきたからこそ、この部分に期待されているのだと思います。

使命は、企業と人の「ラブラブな関係」づくり

 では、電通デジタルのDXコンサルティングは他社と何が違うのか。
 それは、業務効率化によるコスト削減ではなく、あくまで「企業と人々の関係強化」をゴールに置いている点です。
 私たちは、企業の成長にとって一番大事なのは「10年、20年先もお客様や従業員、ステークホルダーから愛され、必要とされ続けること」だと確信しています。
 DXはその一手段に過ぎません。関係づくり、すなわち企業と人々を強い信頼関係で結び、成長に伴走すること。
 それが、電通デジタルの使命です。
 私はよく、企業活動を「ラブレター」にたとえるのですが、相手を想うからこそ、良い商品を作り、世の中に届け、反応を見て改善したりと試行錯誤を繰り返します。
 社長が相手に企業のパーパス(存在意義)を話すことも大切で、その積み重ねで、企業と人々の間に良い関係が築かれるのです。
  私たちはこの「企業と人のラブラブな関係づくり」を全力でサポートしていきたいと思います。
 電通グループの自戒を込めてですが、これまでの企業コミュニケーションの多くは、良くも悪くも「一方通行」でした。
 かっこいい広告や店頭のPOPなどを通じてメッセージを投げかける。その結果、商品が売れたかどうかで一喜一憂する世界です。
 ですが、スマホなどのデジタルデバイスの浸透によってこのコミュニケーションスタイルが一変しました。SNSの普及もあり、継続的かつ双方向的な生活者とのコミュニケーションが可能になったのです。
これからの時代は、かっこよくなくてもいいから、お客様や従業員にきちんと想いを伝えて、反応を受け止める。それを、次のアクションにつなげて、相互にキャッチボールをしていく。この繰り返しこそが、長く愛される企業の条件になるでしょう。
 デジタルやテクノロジーはそのための強力な武器なんです。
「関係づくり」が目的なので、構想だけではなく、実行フェーズまでご支援するのも私たちの特徴です。
 実際、そこに魅力を感じて、他社に依頼していた企業から新たにご相談いただくことも多いですね。
 コンサルティングは実現できなければ絵に描いた餅です。
 我々は成果が出るまでとことんコミットしますし、電通デジタル一丸となってご支援できるように、部門間のコミュニケーションも密にとっています。この課題にはこの部門、と互いの特性を理解して横パスを出すこともしばしばです。
 毎週必ず役員や部門長クラスがクライアントの課題を共有していますし、現場同士も最先端の知見を頻繁に交換しています。
 この組織一体型の課題解決カルチャーも、繰り返し出てきた「関係づくり」を第一に考えるからこそ、どんどん強くなっていったのだと思います。

今後求められるのは「スペアリブ人材」

「企業と人々の関係強化」を実現するには、電通デジタルの社員一人ひとりに、クライアントとその先の生活者の課題を解決する能力が求められます。
 具体的には、システムやデータなどの「仕組み」と、顧客体験やサービスなどの「中身」、両者に理解があるかどうか。
 私はよく「スペアリブ人材」と呼んでいるのですが、骨と肉がセットになっているからスペアリブが美味しいように(笑)、「仕組み=骨」と「中身=肉」、2つを使いこなせる人材は強い。
 もちろん、「仕組み」と「中身」の両方を極める必要はありません。チームプレイが前提なので、補完し合える相手と組んで仕事をすればいい。
 大切なのは、お互いがお互いを理解し、尊重し、「共通言語」を持てるかどうかです。
 よく、営業やクリエイティブやエンジニアの意識の違いが指摘されますが、これも「共通言語」がないから。逆に言えば、お互いの特性や思考がわかっていれば、チームで力が発揮できます
 私自身は、電通でゴリゴリの「仕組み」側からキャリアをスタートしました。生活者のデータベースをつくる部署で、データ分析をする仕事です。
 ただ、データはそれだけではなんの意味もなさない。データを土台に、どうすればもっと生活者にクライアントを好きになってもらえるだろうと考えて、「中身」の世界に入っていったんです。
 そこからはブランドの開発や映像、音楽、ライブなどの顧客体験を手掛けるようになり、クリエイティブ思考や、人の心を動かす、とはどういうことかを学びました。
 この2つの頭の使い分けができるようになって初めて、クライアントの課題解決にも、チームにも、きちんとバリューを発揮できるようになったと感じています。
 だからこそ、社員にもこの「仕組み」と「中身」の行き来ができるようになってほしい。
 電通デジタルは年々カバー領域が大きくなっているので、どちらも経験できる環境ですし、これからもそうした場を積極的に用意していきます。

世の中を揺さぶり続ける。グローバルへの挑戦

 電通デジタルとしてこれから注力する領域が「グローバル」です。
 今年7月には、海外に強みを持つCXデザインファーム、電通アイソバーと合併しました。
 現在も、日本企業のグローバルでのDXや、外資系企業の日本進出をサポートしていますが、今後は「デジタル&グローバル」という広い視点から多くの企業をご支援していきたい。
 特に、直近ではEC領域を中心に、グローバルでエンジニアチームを動かすプロジェクトも増えています。
 私たちとしても、デジタルという強みを生かして国境を越えて、企業やそれに関わる人々、ひいては世界全体をもっと元気にしたいと考えています。
 設立から5年、電通デジタルは世の中のデジタルシフトとともに、当初の想定を上回るスピードで拡大してきました。事業領域もどんどん広がっていて、手前味噌ながらすごく面白いタイミングです。
 ただ、クライアントの課題を解決するにはまだまだ仲間が足りません。
 特に、会議室だけで完結するのではなく、実行までクライアントを支援したい、自分の仕事が社会にどれだけ役立っているかを確かめたい人には持ってこいの環境だとお約束します。 デジタルを使って、世の中を揺さぶることに喜びを感じられる。そんな人とともに、新しい電通デジタルを作っていけたら嬉しいですね。