DJ-アップルとフィアット向け税優遇措置は違法―EU、暫定結果発表へ
2014/09/29, ダウ・ジョーンズ
【ブリュッセル】欧州連合(EU)規制当局は、加盟国が米アップルとイタリア自動車大手フィアット社に与えた税優遇措置がEU法に違反しているとする暫定的な判断を、早ければ29日にも発表する。関係筋が明らかにしたもので、この結果、多国籍企業による租税回避容疑へのEUの取り締まりは次の段階に入る。
EUの執行機関で独禁法違反を取り締まっている欧州委員会は6月、アップルに対するアイルランド政府の税優遇措置、フィアット金融子会社フィアット・ファイナンス・アンド・トレードに対するルクセンブルクの税優遇措置、そしてスターバックス社に対するオランダの税優遇措置が企業への違法な国家補助に相当するかどうか正式に調査を開始していた。
関係筋によれば、欧州委員会はアップルのケースについていわゆる「開始決定」を早ければ29日にも下し、アップルとアイルランド政府との間で1991年と2007年に合意した2つの税優遇措置が違法な国家補助に相当するとの暫定的な見解に達した理由を説明する。
アップルは30日以内にEUの決定に回答しなければならないという。
別の関係筋によると、欧州委員会はまた、フィアットがルクセンブルクとの間で結んだ税優遇措置に関する開始決定を発表する。フィアットはコメントを避けた。スターバックスに対する決定は不明。
アイルランド政府の報道官は、同政府が「このケースで国家補助に対するEU規則に一切違反していないと確信している」と述べ、「今月、欧州委員会に正式な回答を提出し、懸念事項や一部の誤解を詳細に説明した」と語った。
同報道官は、欧州委員会による開始決定は29日に発表されるだろうと述べた。
税優遇措置をEUの国家補助規則という視点から検証するという決定は、EUにとって初めて。税制専門家によれば、欧州委員会は最終的に企業に未払い税額を返還するよう要求する可能性があるという。税額がどの程度の規模になるかは明らかでない。
発表によって、幾つかのEU加盟国による多国籍企業への不当な優遇措置に対する欧州委員会の調査に注目が集まることになる。
欧州委員会のアルムニア委員(競争政策担当)は、アイルランド、ルクセンブルク、オランダ以外にも、ベルギー、英領ジブラルタルも調査していることを明らかにしている。
調査では、各国政府が企業に与えた税制関連の念書が焦点となる。もし特定企業だけ優遇しているとされれば違法とされる。
特に、「移転価格税制」の扱いが問題となる。グループ企業間のモノやサービスのやり取りの価格を調整して利益を再配分することによって税額を軽減するために使われることが多いためだ。
違法でなくとも、税当局が特定の多国籍企業内で相場とかけはなれた価格での取引を容認していることが明らかになればEUのルールに違反とされる可能性がある。
過去のEUによる租税回避への取り締まりは非常に長期間を要した上、ほとんど成果を得られなかった。アイルランドの低い法人税に政治家が声を上げても、各国政府がEUの決定に拒否権を持つため、EUは効果的な手を打てなかった。
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