企業物価指数10月は前年比+8.0%、1981年1月以来の高い伸び=日銀
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<考察>
米国と比較し日本は企業物価指数(CGPI)と消費者物価指数(CPI)が乖離している。前年同月比を比較すると日本は8.9%、米国は3.4%である。消費者物価指数への反映は遅れるが、各国ともに同条件のため日本は明らかに構造が異なっているのだろう。要はスタグフレーションである。
これは、企業側はインフレを吸収しているが、消費者にインフレを転嫁できていないのではないだろうか。日本は数十年所得が変わっていないため、企業が消費者に転嫁しようにもできない背景がある。よって、転嫁できなければ企業の収益性は今後悪化していき、生産性を改善しなければならない環境となる。
当然、収益性が改善できなければ倒産は免れないし、薄利多売な事業を行っている企業は消費者へ価格を転嫁できなければ、今後の成長は見込めない。よって、ゼンショーやカルビーなど価格を底上げする企業が増えてきている。デフレが続く国内ではカルテルを結び業界全体で価格を転嫁しなければ、転嫁した会社のみ売上が伸び悩むことも想定される。
この辺りの企業動向は今後、ニュースで度々取り上げられると想定される為、世界が大規模な金融緩和政策をした後の世界を見届けていきたい。
<物価上昇の背景と対策>
・コロナ禍における世界的な大規模な金融緩和政策
・コロナ禍により製品・部品供給網が寸断
・米中対立が激化し半導体などのハイテク製品・部品供給網が寸断
・米国はテーパリングを実施し2022/03までに完了させる
・米国は2022年2回、2023年3回の利上げ予定
<物価指数の推移>
◯国内
・企業物価指数(CGPI):前年同月比9.0%、前月の11月はオイルショックに次ぐ高さ
・消費者物価指数(CPI):前年同月比0.1%、企業物価指数と同様の推移であり、消費税増税による変動がある
◯米国
・生産者物価指数(PPI):前年同月比9.6%
・消費者物価指数(CPI):前年同月比6.2%
<物価指数とは>
・基準となる年から物価の変動を見る数量的指標
・為替や原材料変動は企業物価指数へ、次いで小売価格で吸収されるため消費者物価指数への反映は遅れる
・企業物価指数(CGPI):企業間取引における商品の価格変動
・消費者物価指数(CPI):消費者が購入する商品やサービスの価格変動、消費税含む
注目のコメント
資源高と円安が重なって、企業物価指数の前年比の上昇率は今春3月から10月にかけて1.2%、3.7%、4.9%、5.2%、5.8%、5.9%、6.4%、8.4%と加速度的に上がっています。また、10月は輸入物価が前年比38%上昇したのに対し、輸出物価は前年比13.7%しか上がっていないのも目を引きます。
企業は、原価が急増するのに国内でも海外でも売値に転嫁しきれていない状況で、このままでは国内で活動する企業の体力が奪われます。かといってこれが消費者物価を米国をはじめとする諸外国並み押し上げたら、日本は低成長の中で物価が上がるスタグフレーションという最悪の事態になりかねません。本源的な成長力を高めるほかにそうした事態を切り抜ける道は無いように思うのですが、これまで公表された経済対策を見る限り、分配重視の“優しい政策”が並ぶばかりで本質的な成長戦略が描かれていないことが不安です。(・・;これだけ企業物価が上がっても、経済の先行きも企業収益も悲観する見方は少数派です。というのも、既に鉄鉱石や銅や用船などの市況は大きく下がっています。企業も仕入れ値が上がっても売値に転嫁できず苦しい状況かと思いきや、出張の減少など経費削減で売上高利益率はコロナ禍の前と同等です。米国企業の売上高利益率は史上最高にまで上がっています。物価がスパイラル的に上がることはなく、一時的で済みそうだ、という見立てが多いと思います。