2021/10/30

ベールに包まれた「ライブ配信の巨人」を全方位リサーチ

英日翻訳者・Webライター
NewsPicks編集部による番組『デューデリだん!』は、NewsPicksの記者たちが、注目の成長企業を取材し、経営トップにインタビューする過程を可視化する企画です。

今夜10時から取り上げる企業は「17LIVE」。ライブ配信事業で国内ナンバーワンの地位を確立した「17LIVE」は、今後さらに成長を加速しそうな勢いです。今回は、未上場ゆえ、ベールに包まれた「17LIVE」を全方位的にリサーチしていきます。
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INDEX
  • グローバルトップは日本人
  • ベールに包まれたトップランナー
  • 取材⑴ ライバーになってみた
  • 取材⑵「最前線」中国のライブ配信事情
  • 取材⑶ 元ライバーの生々しい証言
  • ライブコマースはECの主流になる

グローバルトップは日本人

コロナ禍により、ライブ配信の視聴時間が伸びています。
ライブ配信アプリを通じて、配信者に投げ銭をした経験がある方も多いのではないでしょうか。
市場は百花繚乱。ポコチャ、BIGO LIVE、LINE LIVEなどの人気プラットフォームが乱立する状況にあって、国内ナンバーワンの地位にあるのが、今回デューデリする「17LIVE」です。
「17LIVE」公式HP
世界6ヵ国に拠点を持ち、今年9月時点のユーザー数は5000万人を突破。国内の認証ライバー(配信者)の数は5万4000人に上ります。
9月に、社名の呼称を「イチナナライブ」から「ワンセブンライブ」に変更し、グローバル企業への階段を歩み始めました。
とはいえ、「17LIVE」は未上場企業です。
今回は、ベールに包まれた成長企業「17LIVE」の収益モデルやライバーの実態、市場環境や将来性を全方位で探り、グローバルCEOに就任したばかりの小野裕史氏にインタビューします。

ベールに包まれたトップランナー

今回、「17LIVE」のデューデリに挑むのは、片平知宏記者、谷口健デスク、インターン役の藤村聖子さん(本業は役者)です。
まず、片平記者が、ライブ配信者である「ライバー」の分類を整理します。
配信時間によって報酬が支払われる時給制、「17LIVE」と直接契約する独占契約、他社のプラットフォームでも配信可能な非独占契約。
さらには、タレント同様に事務所に所属するかたちなど、ライバーとひとくちに言っても、さまざまな形態があります。
続いて、3人が注目したのが、ライブ配信の市場規模です。
ある調査によると、2020年のライブ配信における市場規模は140億円ですが、2021年には300億円以上、2024年には1,000億円近くまで成長すると予想されています。
加速度的な成長を遂げる市場で、国内ナンバーワンの地位を確立した「17LIVE」。
「さぞや儲かっているに違いない」。
そう考えた3人ですが、残念ながら「17LIVE」は未上場。
売上高や営業利益は公開されておらず、谷口デスクは「17LIVE」の登記簿を取得しますが、わずかな情報しか公開されていません。
思うようにリサーチが進まず、数日後に迫った小野裕史グローバルCEOへのインタビューに不安がよぎります。
そこで今回、3人は周辺取材を徹底して行う方針に舵を切ります。

取材⑴ ライバーになってみた

「17LIVE」を知るためには、配信してみないことには始まらない。
ということで、藤村さんが実際に「17LIVE」で配信してみることに。
初回の配信は、アルゴリズムで優遇されている様子で、初めてにも関わらず、藤村さんの配信はかなり盛り上がります。
藤村さんの配信を見たユーザーは、思い思いに、課金アイテム「ギフト」によって配信を盛り上げます。
気がつけば、あっという間に1時間が経過し、藤村さんの初回配信では、1万を超えるコインが集まりました。
ちなみに、ギフトにはさまざまな種類があり、ユーザーは、無料のギフトから最高で6万円に相当するギフトの中から選んで、ライバーを支援します。
ライバーを応援する「ガーディアン」と呼ばれる応援団長に就任することも可能ですが、ガーディアンは入札制度のため、人気があるライバーでは課金額が跳ね上がることも。
今回のインタビューを担当する片平記者も自腹で「17LIVE」に課金し、ユーザーの心理やサービスの構造を徹底的に調べました。
収穫が大きかったのは、ライバーを体験した藤村さんです。
スマホの画面をひっきりなしに飛び交うアイテムやチャット。それらに、反応し続ける大変さを身をもって痛感した様子です。
17LIVEでの配信は簡単に始められるUI設計になっていますが、継続して配信することや、抜きん出た存在になるためには、相当な努力が必要であることを実感したようです。

取材⑵「最前線」中国のライブ配信事情

続いて3人は、ライブ配信の最前線、中国市場をリサーチすることに。
中国向けPRや映像コンテンツのプロデュースを展開する株式会社ぬるぬる山下智博氏に、中国のライブ配信事情を聞きました。
山下さんによると、中国では2008年頃からライブ配信が盛んになり、2016〜2018年に急成長したといいます。
2020年における中国のライブ配信者数は5.87億人で、今年は6億人を超える見込みです。
日本とは桁違いの人数ですが、日本のライブ配信が「投げ銭」が主流なのに対して、中国では、配信者がユーザーに物品を販売する「ライブコマース」も活況であることに3人は注目します。
ライブコマースの市場規模は20兆円を超える予測があると言う山下さん。
そして、企業側の広告費が安くなり、配信者の取り分が多くなってきており、今後もさらなる成長が予想されているといいます。
「今後、日本でもライブコマースは根づくのだろうか?」
最前線の中国市場を取材した3人は、小野グローバルCEOにぶつけたい質問を見つけます。

取材⑶ 元ライバーの生々しい証言

実際に「17LIVE」で配信経験のあるライバー・あいなまさんにも話を聞いてみることに。
あいなまさんによると、1日の配信で数百万円を集めるトップライバーもいることや、ライバーの取り分は、2割ほどであることがわかってきました。
もちろん、認証ライバー、非認証ライバー、事務所の有無などの契約状況によっては、手数料が引かれたり、時給制の契約もあるため、取り分の割合は一定ではありません。
競争の厳しい「17LIVE」では、継続することが何よりも大変で、ライバーとしてやっていけるのは「10人に1人」という厳しい実情を知ることができました。
「ライブ配信は、今後さらに盛り上がると思いますか?」
谷口デスクの質問に対して、あいなまさんは「ライブ配信はYouTubeなどのストック型資産にはならないから、懐疑的な印象がある」と言葉を濁します。
片平記者は、厳しい競争環境に置かれているライバーの苦労をどう感じているのか、小野グローバルCEOにぶつけることを決めます。

ライブコマースはECの主流になる

片平記者と対峙した「17LIVE」の小野裕史グローバルCEOは、狩猟民族的な野心よりも、柔和な笑顔と人の良さが前面に出ているタイプの起業家でした。
事前の周辺取材で、質問項目を綿密に練り上げてきた片平記者。
しなやかな笑顔の裏に潜んでいるであろう経営者としての本音を探ろうと、四苦八苦しながらインタビューを進めます。
「中国のようにライブコマースは日本でも盛り上がっていくのでしょうか?」
片平記者の質問に、小野グローバルCEOは、こう切り返します。
「ライブコマースが日本で流行らない理由が思い当たらない」
「おそらく10年後には、テキストと画像の情報だけでオンラインショッピングしていた時代を不思議に思うのではないか」
まるで予言のように、自信に満ち溢れた経営トップの言葉。
「17LIVE」は今後、どこまで成長を遂げるのか。
この解を探るために、今回の「デューデリだん!」はとても役立つはずです。
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