[香港 29日 ロイター] - 中国不動産開発大手の中国恒大集団は9月29日に期限を迎えていたドル建て債(2024年3月償還)の利払いを履行した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

猶予期間の10月29日までに4750万ドルの金利を支払う必要があった。支払いができなければ同社が国際市場で発行している190億ドルの債券が全てデフォルト(債務不履行)したと見なされる「クロスデフォルト」となる恐れがあった。

恒大は先週も、9月23日に期限を迎えていたドル建て債利払いの資金8350万ドルを受託者の口座に送金し、土壇場でデフォルト(債務不履行)を回避したばかり。

9月23日と29日、10月11日にドル建て債の利払い期限が相次ぎ到来したが、計約2億8000万ドルの支払いが見送られ、30日間の猶予期間に入っていた。

11月と12月にも別のオフショア債の約3億3800万ドルの利払い期日が控えている。

恒大は取材の要請に応じていない。

ロイターは今回の利払いに使われた資金の出どころを特定できなかった。ブルームバーグ・ニュースによると、中国政府は恒大の創業者、許家印氏に対し、個人資産で債務を返済するよう求めていた。

恒大の株価は香港市場で一時上昇していたが値を消し、直近は0.8%安となっている。

デュレーション・ファイナンスのデータによると、恒大の23年1月債は9%超、24年1月償還債は約8%それぞれ値上がりした。ただ依然として額面を75%以上下回っており、23年償還債の利回りは190%近くとなっている。

ある社債保有者は恒大が利払いを行ったことについて「時間稼ぎをしているとしか思えない」と語った。

香港の建銀国際の趙文利チーフストラテジストは、「恒大は流動性問題の解決に最善を尽くしているが、全ての債務を返済するのに十分な資金を調達するのは多少困難だ」と指摘。恒大と債権者による何らかの交渉が行われると予想し、ヘアカット(債務削減)の可能性はなおあると指摘した。

<債務危機>

中国恒大の債務危機は中国の他の不動産業者の財務悪化を招いており、一部は正式なデフォルトに陥っている。

今月、ドル建て債のデフォルトを起こしたのは、花様年控股集団(ファンタジア・ホールディングス・グループ)、新力控股(シニック・ホールディングス)、中国地産集団(チャイナ・プロパティー・グループ)と当代置業(モダン・ランド・チャイナ)。

中国国家発展改革委員会(NDRC)と国家外為管理局(SAFE)は今週、不動産業者との会合で、多額のオフショア債が満期を迎える企業は返済リスクを評価し、問題があれば報告するよう指示した。

NDRCはまた、不動産業者にオフショア債務を履行し、企業の評判と市場の秩序を維持するよう求めた。

DBSのストラテジストはリポートで「オフショア市場での選択的デフォルトは当局にとって決して受け入れられない」と指摘し、「今週のNDRCの説明は海外投資家も国内投資家と同様に公平に扱われるという安心感を与える」との見方を示した。