[ワシントン 27日 ロイター] - 米上院民主党議員がバイデン大統領の看板政策の一つである気候変動・社会保障関連歳出法案の財源として27日に公表した超富裕層を対象とする増税案を巡り、民主党内で意見が対立し、法制化に向けて十分な支持が得られるか不透明な情勢となっている。

ワイデン財政委員長とウォーレン議員らがまとめた「富裕税」案は、26日に公表した15%の最低法人税率を導入する案とセットとなっている。

企業や富裕層による税回避の抑制を目的としており、数千億ドルの税収を見込む。1兆5000億ドルから2兆ドル規模とされるバイデン氏の歳出法案の財源に充てる。

富裕税は3年連続で年収が1億ドル以上か資産が10億ドル以上の超富裕層が対象で、影響を受けるのはおよそ700人。2022年の課税年度からの導入を目指している。

議員の側近によると、株式など売買可能な資産の長期キャピタルゲインに対し、売却しなくても23.8%の税を課す。資産の損失は控除を認めるという。

声明によると、パススルー事業体として設立された企業の持ち分や不動産投資信託を含む信託も課税対象に含まれる。

ただ、米下院歳入委員会のニール委員長(民主党)は富裕税案について複雑すぎるため法制化は難しいと指摘。民主党は1000万ドルを超える所得者に対し3%の付加税を課すことを検討しているとした。

また、進歩派のサンダース上院議員は、富裕税案は「正しい方向への一歩」だが、十分とは言えないとした。ホワイトハウス側近によると、サンダース氏はこの日、バイデン氏と会談したという。

一方、ホワイトハウスのサキ報道官は「大統領は富裕税案を支持している。議会およびワイデン財政委員長と協力して米国の高所得者に対する公平な負担を確実にすることに期待している」とした。

中道派のマンチン上院議員は富裕税案に懐疑的な見方を示し、民主党が提案している15%の法人最低税率と同様に富裕層の個人に対する最低15%の課税を支持するとした。

富裕層からは、米電気自動車(EV)大手テスラのマスク最高経営責任者(CEO)が富裕税案に反発。ツイッターへの投稿で「他人のお金がいずれ底をつき、自分のところにツケが回ってくるだろう」とし、「行く着くところは、政府と起業家のいずれが資本配分で長けているかだ」と述べた。

リフィニティブのデータによると、マスク氏の資産は今週、約2300億ドルに達した。

しかし、全ての超富裕層が異論を唱えているわけではない。米著名投資家ジョージ・ソロス氏の広報は週初、ロイターに対し、ソロス氏が富裕税案を「支持している」と語った。

<バイデン氏、議会の合意なしに外遊出発か>

バイデン氏はローマで開催される20カ国・地域(G20)首脳会議やグラスゴーで開かれる国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)に出席するため、28日に米国を発つ。

CNNとNBCニュースが27日夜に報じたところによると、バイデン氏は、28日午前に行われる米下院民主党の党員集会に出席するため、出発を数時間遅らせる見通し。自身の政策について進歩派議員の支持を得たい考えとみられる。

下院民主党幹部のジェフェリーズ議員はペロシ下院議長と会談後、記者団に「枠組みついて24時間から36時間以内に合意する公算が大きい」と述べ、バイデン氏の出発には間に合わない可能性を示唆した。

他の議員などからも財源などの根本的な問題が残っているとの声が聞かれた。サンダース氏は歳入については明確になっていないとし「歳入に関する合理的な選択肢は全て損なわれたようだ」と語った。

ホワイトハウスは歳出法案について28日までに議会の支持を得ることはなお「現実的」との考えを示したが、バイデン氏が最終合意がないまま欧州に向かう可能性を認めた。

サキ氏は記者団に「大統領はもちろん合意を携えて外遊したいと考えている」としながらも、各国の首脳が注目しているのはバイデン氏のインフラや気候に関する「コミットメント」であり、議会の状況ではないと指摘した。