[香港 22日 ロイター] - 中国不動産開発大手の中国恒大集団は、9月23日に期限を迎えていたドル建て債利払いの資金を今月21日に受託者の口座に送金した。関係筋が22日、ロイターに明らかにした。翌23日が30日間の利払い猶予期間の期限で、土壇場でデフォルトを回避することになる。

21日にドル建て債の利払いとして8350万ドルをシティバンクの受託者口座に送金したという。これにより、全ての社債保有者が猶予期間が終了する23日までに利払いを受けられることになる。利払い資金の送金については中国政府系の証券時報が先に報じていた。

一部社債保有者の担当弁護士は「(恒大は)短期的なデフォルトを回避したようで、流動性を何とか確保したことは若干の安心材料だ」とした上で、「ただ債務の再編は必要だ。今回の利払いは、恒大が厳しい再編手続きを前に利害関係者に責任感のようなものを示したとも考えられる」と述べた。

恒大は、ロイターのコメント要請に応じていない。シティはコメントを拒否した。

恒大を巡っては21日、支払いを見送っていた2億6000万ドル相当の社債の償還期限延長で保有者側と合意したと金融情報サービスのREDDが伝えていた。

中国当局者からはここ数日、債権者の利益は保護されるといった不安緩和を狙った発言が相次いでいたが、利払い実行のニュースは市場参加者には驚きだった。

<29日も利払い実施か>

高騰国際資産管理の運用担当者は、デフォルトを予想する人が多かったため、ポジティブサプライズだったと述べ、今回の利払いを受けて次回以降も実行されるとの見方を示した。

恒大は9月23日と29日、10月11日が期日だった計2億8000万ドル弱のドル建て債利払いを見送っていた。

22日の取引で恒大のドル債は急伸。デュレーション・ファイナンスのデータによると、2022年償還債と23年償還債は10%以上上昇した。

株価は一時7.8%急伸。同社株は2週間余りの取引停止を経て前日に再開されたばかりだった。恒大のニュースを受け、香港のハンセン本土不動産株指数は4%超急騰。本土市場でもCSI300不動産指数が6.5%の大幅高となった。

恒大にとって次の重要局面は、9月29日に実行しなかったドル債利払いの猶予期間が切れる10月29日。

クイディティー・アドバイザーズ(香港)のアナリスト、トラビス・ランディー氏は「6日後の利払いを実施しない方針なら今回支払う意味がない」と述べ、29日が期日の利払いも行われると予想した。

ただ恒大のキャッシュフローの厳しさを踏まえると、どこまで続けられるかは分からないと付け加えた。

中国万科企業の郁亮会長は22日のフォーラムで、恒大の流動性危機の緩和に協力するかとの質問に対し、不動産開発会社は自社の安全を確保する必要があると述べた。

「(不動産)業界に冬が到来したことを誰もが感じている。無事に乗り切れるかまだ分からない」と語った。

恒大が破綻すれば同社が280以上の都市で手掛けている1300件を超える不動産プロジェクトや、不動産セクター全体への影響に疑問が生じるとアナリストは指摘している。

クイディティーのランディー氏は「停滞している不動産計画に対する銀行融資の状況はほとんど明らかになっていないが、プロジェクトの事前販売は大きく落ち込んでいることが分かっている。恒大が短期的に本土事業からキャッシュを得ることは難しいだろう」と語った。