【金沢景敏】伝説のトップセールスが描く、「アスリートの生涯価値」を最大化するビジョン

2021/11/1
「NewsPicks NewSchool」では、2021年11月から「超一流アスリート×伝説のトップセールス」を開講します。
プロジェクトリーダーを務めるのは、柔道男子60kg級でオリンピック3連覇を達成した柔道家の野村忠宏氏と、プルデンシャル生命保険で圧倒的な営業成績を上げた「伝説の営業マン」金沢景敏氏です。
開講に先立ち、金沢氏のストーリーをお届けします。

「営業しない」営業術

理論、情熱、行動のすべてがひとつとなり、わずか1年で“保険営業・日本一”という快挙が生まれたのだろう。
金沢景敏はTBSを退職してプルデンシャル生命保険の営業マンになると、いきなり1年目で国内営業社員約3200人の頂点(個人保険部門)に立った。
未だに塗り替えられていない歴代最高額のボーナスを手にしてもアクセルを緩めず、3年目には日本の生命保険募集人登録者、約120万人の中で毎年60人前後しか認定されない「Top of the Table」に到達した。
保険業界では「伝説の営業マン」として知られており、今年2月に出版された著書『「あなたから買いたい」と言われる 超★営業思考』(ダイヤモンド社)は発行部数3万部のヒット作となっている。
金沢の営業は細かなルールとルーティンから成り立っており、その働き方はアスリートを連想させる。実際、京都大学時代にはアメリカンフットボール部に所属して日本一を目指していた。
日本を代表するトップアスリートたちとの交流も深く、今回、「超一流アスリート×伝説のトップセールス 〜圧倒的な結果を出す共通の思考法〜」のプロジェクトを共に主催する野村忠宏も親しく交流しているアスリートのひとりだ。
いったい日本一になった営業術とはどんなものだろう? 結論から言えば「営業しない」の一言につきる。金沢はあるときから「まったく保険を売ろうとしない」スタイルを貫くようになった。
金沢は著書でこう綴っている。
「活きてくるのが、営業マンが日頃培っている、さまざまなお客様との『人間関係』です。お客様の『望み』を叶え、『課題』を解決できる人を紹介してあげればいいのです。つまり、『人と人とをつないでいくこと』こそが、営業マンができる最大の『サービス』なのです」
金沢 景敏/AthReebo(アスリーボ)株式会社 代表取締
役京都大学工学部卒業後、TBSに入社しスポーツ番組のディレクターや編成などを担当。2012年よりプルデンシャル生命保険に転職。入社1年目にして、プルデンシャル生命保険の国内営業社員約3200人中の1位になったのみならず、日本の生命保険募集人登録者のトップ0.01%しか認定されない「Top of the Table(TOT)」に3年目で到達。最終的には、TOT基準の4倍の成績をあげ、個人の営業マンとして伝説的な実績を残した。人生トータルでアスリートの生涯価値を最大化し、新たな価値と収益を創出するAthReebo(アスリーボ)株式会社を2020年に起業。著書に『超★営業思考』(ダイヤモンド社)。

『共通点』のあるメンバーを集める

営業マンとしていくら保険を売りたいといっても、いきなり商品の説明からしたら引かれてしまうだろう。まずは信頼関係を築くことが必要だ。
では、どうすればいいか? 金沢は「保険マンの最大の武器は、自分の足で稼いだネットワーク」と考え、人と人をつなぐことに活路を見出した。
たとえば高校野球の大ファンだった女性税理士に、野球選手を紹介。すると関係が深まり、のちに女性税理士の弟が経営する会社の大口契約を任された。
そうやって人と人をつなぐことの完成形として行き着いたのが、金沢流の「少人数の食事会」である。「この人とこの人を会わせたらおもしろいことが起きそう」というメンバーを集め、会費制で食事会を開催するのだ。
「経営者などのアッパー層といかにコネクションをつくるか? 営業マンにとって重要な課題ですが、試行錯誤の末、僕は少人数の会食をメインに据えるようになりました。夜に連日のように会食をセッティングし、さまざまな方々と親交を深めるスタイルへ変えたんです。
会食をセッティングするうえでポイントは、『共通点』のあるメンバーを集めること。『二代目社長だけの会』『出身地が同じ人だけの会』『ゴルフが好きな人だけの会』など、共通点のある人々が集まるとすぐに打ち解けられます」
場所にもこだわった。これだと思った名店を見つけたら通い詰め、優先的に予約を取れるような関係をオーナーと築くのだ。忙しい経営者や著名人でも、予約の取れない名店となると興味を持ってもらいやすく、スペシャルな会を設定しやすくなった。
食事会では保険の話は一切しないが、参加者は金沢が「営業マン」であることを認識している。参加者が保険の必要が生じたときに金沢に連絡するという、双方にとって理想的な関係ができあがった。

最も重要なのは『母数』

しかし、初めから完成形が見えていたわけではない。当初は失敗の連続だった。「売りたい」という思いが前面に出過ぎ、TBS時代の後輩に追い込むように売りつけてしまったときには、クーリングオフを申し入れられてしまう。
金沢は打ちのめされた。
「『売り上げを上げなければ、生きていけない』という考えに囚われて、自分がされたら嫌なことばかりやっていた。お客様を『道具』として利用しようとしていた。この件がきっかけで、『もう売ろうとするのはやめよう』と決心したんです」
金沢はとにかく数で勝負することにした。
「営業活動で最も重要なのは『母数』です。毎日、毎週、毎月、どれだけ多くのお客様に会って、営業活動を行っているか。その『母数』を最大化することこそが、営業で成功するための『絶対条件』です」
働きぶりは鬼気迫るものがあった。朝から夜までとにかく人に会うアポイントを入れ、夜10時ごろに会社に戻って事務作業を行う。終わるのは深夜2時頃。寝袋を持ち込んで会社の床で眠りにつき、翌朝6時頃に起床する。週末以外、この生活を3年間続けた。
ただし、ガムシャラに働くからといって、効率を疎かにしたわけではない。金沢は効率を上げるために「結果を出している営業マン」のやり方を徹底的にマネした。
「先人が築いた『型』を無視して、自己流で身につけるのはあまりにも非効率。最初はマニュアル通りに練習するのが、最速で上達する方法です。僕も会社の営業スクリプトを何も考えないでそらんじられるように、徹底して覚えました。
見た目も、結果を出している営業マンに共通するスタイルを取り入れました。紺のスーツに白シャツ、黒革ベルト、黒革靴。時計は黒革ベルトに白のフェース。髪型は横を刈り上げる。清潔感と信頼感を与える効果があります」
守破離の「守」をしっかり行って基礎を身につけたうえで、金沢は次の段階に進み、自分の色を加えていった。
「一目で金沢だとわかるように、ネクタイや名刺入れなど小物をすべてピンク色で統一しました。『なんでピンクなの?』と話のネタにもなるんですよ。
商品の説明では、営業スクリプトは良くできているんですが、理屈で語ってもわかりづらいため、相手の目の前で円グラフや棒グラフを手で描くようにしました。やっぱり絵の方が何倍もわかりやすい。
また、相手が深い話をしやすいように、自分から先に過去の挫折や転職の理由を打ち明けるようにしました」
自ら率先して人をつなげることで自然と契約が生まれ、気がつけば年収は数億円を越えていた。一般的な保険マンであれば、数年間続けて資産を形成し、セミリタイアするという絵を描いてもおかしくないだろう。

アスリートの生涯価値を最大化したい

だが、金沢には人生をかけて挑戦したいことがあった。
昨年10月、プルデンシャル生命保険を退職し、アスリートの生涯価値を最大化すべく『AthReebo株式会社』を起業。今回のNewsSchoolのプロジェクトも、その事業の一環だ。
「僕自身が京大アメフト部で日本一になれなかっただけに、アスリートへの憧れやリスペクトがすごくあるんです。でもTBSに入って取材でいろんなアスリートの現場に行くと、引退後にほとんど道がないという厳しい現実を目の当たりにしました。
憧れの人たちが、なぜ引退後にこんなにも苦労するのか。ならば自分が解決しようと思い、アスリートの価値から新たな事業を生み出す会社を起業しました。
アスリートはスポーツしかできないと言う人がいるんですけど、いや違うよと。子供の頃から競技に打ち込んで得たものは、他の分野にも生かせるはず。アスリートが引退後に活躍できれば、スポーツの価値が高まるし、社会に新たなエネルギーを生み出せる。子供たちもさらに大きな夢を見ることができる。
従来のテレビ出演、講演、イベントとは違う形でアスリートの価値を生み出せれば、新たな産業を創れるんじゃないかと考えています。
僭越ながら、僕は営業で突き抜けた結果を出してきました。それを野村忠宏さんの思考と掛け合わせし、何か変わりたいと思う人や、「自分はこんなもんじゃない」という想いを持ち、もがいている方たちの行動変容を手助けしたい。本気で自分を変えて結果を出したい人たちとお会いするのを、心から楽しみにしています」
(取材、構成:木崎伸也、写真:鈴木大喜)
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